陽だまりの中で。

「あ、おいゴロー・・・」
英理の所から預かっている猫は、少し空いたドアの隙間から、蘭の部屋に進入した。
ゴローを連れて出ようと、コナンはそっとドアを開けて、蘭の部屋に入る。

「え・・・っ・・・」

その光景に、コナンは足を止めた。

編みかけのセーターと毛糸が散乱した中で、蘭が幸せそうな微笑みを浮かべながらうたた寝しているのだ。

高鳴る動悸とは裏腹に、視線は蘭に釘付けになっていた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ」

あまりにも無防備なその姿は、シャツのボタンがいくつか外れて、白い素肌が顔を覗かせている―・・・。

姿は子どもでも、中身は健全な男子高校生・・・動揺しないはずがなかった。

「・・・・・・・・・くっそお!勿体ね―――っ!!」

新一の姿だったら、願ってもない事なのだが・・・今のこの身をこれほど呪った事も無いだろう・・・。

「ん・・・・・・・・・し・・・・んい・・・・ち・・・・・・・・」

天使の寝顔で自分の名を呼ばれ、コナン・・・新一は我に返った。

「・・・・・・何考えてんだ・・・!」
コツンと自分の頭を軽く握りこぶしで叩く。

雑念を払って蘭の笑顔と、周囲の毛糸玉に視線を移す。

「セーター・・・かな、この様子だと・・・編みながら疲れて眠っちまったのか・・・?」

秋空の様な青い毛糸から、そのセーターが小五郎への物ではない事が分かる。編み込んだ模様を見れば・・・女物でもない事も。
何より寝言で呟いた名前・・・答は明白だった。

「う・・・ん・・・」
寝返りを打った蘭の頬に、ひとすじの髪がはらりとかかる。
コナンは幸せな溜息を吐きながら、その髪をそっと払った。

「さんきゅ・・・蘭・・・」

「ん・・・・・・しんい・・・」

コナンの声に、新一を想ったのだろう。
蘭の寝顔が更に嬉しそうな笑顔になった。

初めて、今自分がコナンの姿でいられた事に感謝していた。

穏やかな蘭の表情を見られた事に、心から感謝していた。

このままずっと眺めていたい―・・・

コナンの中にも、確かに幸せな感情が満ちていた。

そんな二人の間を、ゴローがそっと通り抜ける。

「ん?」

コナンの目の前で、ゴローは蘭の頬を舐めまわした。

まあ、ここまでは猫のする事だから、とコナンはひきつりながらも笑顔で様子を見ていた。

ところが、名前の元となった主よろしく、ゴローはボタンの外れた蘭の胸元に鼻先を突っ込んだのである。

「・・・・・・・・・・・っっああああああああぁあ!!!!」

コナンの声にならない絶叫が部屋中に響いた。蘭は全く起きる様子も無かったが、ゴローは驚いて飛びのいた。

「こ・・・このヤロー・・・おれだってまだそんなマネした事ねーのに!!!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・殺気立ちながら猫に妬いても仕方ないのだが・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コナンの迫力勝ちで、ゴローはびくっとして部屋の外へと出ていった。
その様子を見届けて、コナンは部屋のドアを閉めた。

「とにかく、このままだと風邪ひいちまう・・・なんか掛ける物・・・」

コナンはそっとベッドからシーツを引っ張り降ろし、蘭の身体に掛けた。

蘭は相変わらず目を覚ます様子も無く、すうすうとかわいい寝息を立てている。

何度もその側で横たわる機会はあったが、今だに傍らで雑念を払いつつ静かに眠るようなマネは出来ない寝息だ。

「・・・・く・・・・・・・・・きて・・・・・」
途切れた言葉だったが、コナンにはちゃんと聞こえていた・・・伝わっていた。

そっと手をかけると、コナンは眼鏡を外した。

あの日から、蘭の目の前では外せなかった仮面を―・・・。

ふっと優しい笑みを浮かべ、新一はそっと蘭の耳元で甘く囁いた。
肉声で・・・なるべく低く、今の声を蘭の求める声に近づけて―・・・

「・・・・・・・・必ず帰るよ・・・一番大切な人の所へ・・・だから、ちゃんと待っててくれよな?」

蘭の表情が変化していくのを見届けて、コナンは再び眼鏡を掛け直した。

心の中にも、窓から入って来た甘い金木犀の香りが漂っているような錯覚を覚えながら―・・・。

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カレンダーを元にお話を書いてらっしゃる方がおられるのですが、「一緒にカレンダーでお話書かない?」とお誘いいただいたんですね(^^;)
くぬぎは2000年の奴からだと勘違いして、一気に・・・(で、こんなんです(^^;))

「くぬぎったら!今度出る奴でだよ〜!!」と大笑いさせてしまいました(笑)

やた、うけた?(違)

でもでもやっぱり大御所の様には行きません(^^;)
あまあまぴんくばーじょんになってしまう辺りが・・・・はうっ!(撃沈)