巻頭の「宗教と差別語 ―本願寺派の取り組みから『ぼした』呼称を考える」は、昨年の9月3日に熊本市の国際交流会館で開催しました 「藤崎宮祭礼『ボシタ』呼称を考える会」で、一般社団法人和歌山人権研究所理事でもある浄土真宗本願寺派の僧侶の小笠原正仁さんにご講演いただいたものです。
 「藤崎宮祭礼『ボシタ』呼称を考える会」は、毎年秋の藤崎宮例大祭に合わせて開催してきていますが、 今年は宗教の面から「ボシタ」呼称を考えてみたいということでお願いしました。
 浄土真宗が水平を目指した民衆の宗教であるという思いがある一方、「ところが、江戸時代を通じて、 仏教そのものが、社会支配、民衆支配の一つの手段となってしまって、本来差別を相対化する、もしくは差別を否定する教えであったものが、 差別を正当化し、補完して、あるいは差別を利用したというのが、我々仏教のあり方です。」とおっしゃるように、さまざまな差別的な問題も引き起こしています。
 そうした中で、宗教をどう考えていくのか、差別の問題をどう考えていくのか、藤崎宮祭礼における「ボシタ」呼称と重ね合わせながらご講演いただきました。
 本号は、2016年8月27日(土)〜28日(日)の両日、鹿児島県教職員互助組合会館で開催された「第35回九州地区部落解放史研究集会」の報告の特集となっています。
 報告1「第35回九州地区部落解放史研究集会を通して学んだこと」は、一日目に地元鹿児島から「鹿児島県の部落史」について報告された鹿児島県人権・同和教育研究協議会の川ア祐子さんが、 その報告をもとにまとめられたものです。本研究集会での報告が、「私にとっての部落史学習の始まりとなりました。」と結ばれる川アさんの学びに学びあいたいと思います。
 続いて、地元報告として、真宗大谷派光泉寺住職の佐々木智憲さんが「かくれ念仏と被差別部落」について、特に薩摩の真宗門徒という視点から報告されました。
 佐々木さんが、県下の被差別部落のかくれ念仏についての調査の中で、「一番教えられた」といわれる宮之城の時吉萬次郎については、 二日目の午後のフィールドワークでさらに深め合いました。特に、時吉萬次郎と水俣との関係に興味を惹かれました。 このフィールドワークについては、川アさんが詳細に報告されています。
 報告3は、長崎人権研究所の阿南重幸さんの「牛の皮はこうして運ばれたー琉球・奄美・薩摩・大坂―」でした。 阿南さんは、これまで既に『被差別部民の長崎・学』で、皮流通に関して「南九州を除き」渡辺村皮商人が活躍した海外貿易を含む九州各地と大坂渡辺村との牛馬皮流通の構造を解明されていますが、 これに南九州を加えることで、渡辺村皮商人の活動範囲がさらに広がった報告でした。
 報告4は、福岡人権研究所の堀田秀茂さんの「久留米藩と惣長史頭の関係について」でした。 久留米藩と被差別部落の関係、とりわけ頭役との関係について、W期に分けて報告されました。
 二日目は、姫路大学教育学部教員の和田幸司さんが「近世身分の特質と社会科教育の課題」と題して、記念講演をされました。 本誌に収録しました「中学校歴史学習『近世身分』の授業改善 ―『士農工商』観の転換を中心にー」は、その講演をもとに論考としておまとめいただいたものです。
 貴重なご報告や論考をお寄せいただきました皆様に心より感謝申し上げます。 また、開催県として研究集会やフィールドワークの準備や運営など、全てにわたってご尽力いただきました鹿児島県人権・同和教育研究協議会をはじめ、 各機関・団体や宮之城福祉センターの皆様に厚く御礼を申し上げます。


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