★オランダの有力サイト『DPRP』のレビュー
多くの作品を手掛けているフランスのプログレッシブ・レーベルMuseaは、長年優れた古典CDのリリースや再発を行なってきた。
ここ数年はその何でもありのポリシーで、やや運任せでリリースをしていくようなところもあったものの、
最近では、しばしば日本のポセイドン・レーベルと共同で、日本のジャズ・フュージョンの豊かなフィールドの発掘を手掛け始めている。
ここでSix North、KBB、大文字のリリースは全て成功を納めている。
この共同リリースシリーズの最新作はMorsofのHeap。このバンド名は「モーニング娘。」(どうやら日本のポップ・バンドらしい)と
「ソフトマシーン」(わざわざ紹介する必要もないでしょう)を融合させたもの。
この深くジャジーな作品にはポップなところは全くみられず、ありがたいことに、モーソフは主な音楽的インスピレーションを後者のバンドから
得ているようだ。
伝説のカンタベリー・ジャズミュージシャンのファンなら誰でも、このアルバムに満足する点がいくつもあるだろう。
サキソフォンが音楽の中心になり、電子ピアノとギターの素晴らしいソロ演奏がそこここに織り込まれている。
ジャケットカバーを見て誤解しないように。
確かにアニメのサウンドトラックか、ヘヴィーメタル・グループのアルバムのように見えるけれども、実際、そんなことは全くない。
オープニングは短くきしるサキソフォンがリードするホンカーのお祭りのよう。
十分に明るい曲ではあるけれど、この曲のストップ・スタートする感じにちょっといらだちを感じた。
多分、この曲を聴く心の準備をしておかなきゃいけないんだと思う。
Underdog's Bluesはもっと良い。オープニング・セクションは電子ピアノと(わずかにキーキー鳴る)サキソフォンが肩を並べて4分間心地よく流れ、
メロディアスで、ソフトマシーンに良く似たヴァイブスを作り上げ、それがジャズ/ブルース風の見事なエレキギターソロにつながっている。
このCDの中心はHeap Suite。この曲は、短いオープニング・ファンファーレの後に、
素晴らしいウォーキングベースラインと活き活きとしたドラミングで始まり、これが長いサキソフォン演奏のバッキングにつながる。
5分くらい経過したところで、曲は突然パーカッションのガラガラいう音、ランダムなピアノの音によるインプロヴィゼイションパートに入る。
このパートには好き嫌いがあるだろう。
個人的にはこの曲の流れからすると、これもOKだけど、CD一枚全部がこんな感じだとご遠慮願うといった感じか。
どちらかというとフリーフォームのファン向け。
曲の最後にもう一度、短くオープニングテーマが演奏される。
この曲の風変わりさは、いきつくところまでいってる。
個人的に一番好きな曲は、ストンピングなパーカッショングルーヴのあるAfro Zone。
リズムセクションがシリンダーを全開にし、ピリッとしたワウギターが入り込んでサキソフォーンソロをサポートする。
トローンボーンソロもそれに刺激を与えている。
DADAはこのアルバムの最後を飾るのにふさわしい、強力な楽曲。パワフルなリフで始まり、
福島幹夫のメロディアスでありながら強烈なサックスソロが流れる。
このグループは福島の発案によるものなので、彼が音を支配するのは自然とも思えるが、彼はそこを一歩脇に下がって
他のプレイヤーが活躍する場を作っている。
アンサンブル全体が、様々なソロプレイヤーの演奏を通すタイトなバックグラウンドとなって、
この曲をサックスフリークとソフトマシーンファンのための快作に作り上げている。
とても実験的な曲ではあるが、冒険的になり過ぎてフリージャズのランダムなキーキー音になることもなく、ジャズ寄りの
プログレファンには聴きごたえのある作品。
評価: 10点中7点
Dave Sissons