一口うんちく文学編
- 飯嶋和一
寡作。「汝ふたたび故郷に帰れず」「雷電本紀」「神無き月十番目の夜」「始祖鳥記」「黄金旅風」「出星前夜」いまんとこ以上。売れてる気配なかったのに、「出星前夜」のプッシュぶりにびっくりだ。
- 池上永一
1970年沖縄生まれの沖縄文学。マンガ世代ならではの登場人物の言動は、はちゃめちゃです。「バガージマヌパナス」「風車祭り(カジマヤー)」「夏化粧」「ぼくのキャノン」「シャングリ・ラ」まだ読んでない「テンペスト」
- 池澤夏樹
北海道生まれの沖縄在住。「新世紀へようこそ」などエッセイも多数あるが、9・11やイラク戦争など個人の思想にもかかわるので賛成しかねることもあるわな。小説では「バビロンに行きて歌え」「南の島のティオ」「マシアス・ギリの失脚」「静かな大地」がすきだな。「すばらしい新世界」も面白かった。環境とか自然とかをただ礼賛するだけのブンガクシャとはちょっと違って、本気で未来を考えてる気がした。
- 稲見一良
故人。不良爺。猟をするので銃に詳しい。そのくせ妙にファンタジックだったり感傷的だったり。「ダック・コール」「猟犬探偵」「セントメリーのリボン」「男は旗」
- 上橋菜穂子
児童文学。大学で人類学かなんか研究してるせいか、日常生活の設定が細かい。バルサとタンダの「守り人」シリーズ、「獣の奏者」アニメになってしまった。みてないけど。
- 斉藤惇夫
児童文学者。ガンバの冒険の原作「冒険者たち」、「グリッグの冒険」「ガンバとカワウソの冒険」(これで全部)「カワウソ」は、登場しているのが動物たちだということを忘れます。
- 佐藤亜紀
中世ヨーロッパを舞台にしたものが多い。独特の古めかしい表現をするが、ぽっと出の平野啓一郎のほうが有名になってしまった。この人の方が先だったんだけど。「バルタザールの遍歴」「1809」「天使」エッセイも多数。ホームページ(新大蟻喰の生活と意見)。
- 沢木耕太郎
ノンフィクション作家。大学生のバイブル「深夜特急」以外にボクシングものや、社会的なもの、いろいろある。最近全集が出ている。「彼らの流儀」はノンフィクションのくせに短編小説みたいに面白い。
- 宮部みゆき
超能力物とか、社会派サスペンスとか、時代小説とか、SFファンタジーまで幅広い。「ぼんくら」とかの時代劇+推理ものが面白い。現代物は、生きてるのがいやになるくらいリアルでこわい・・・。
- 中島敦
故人。漢語で育った最後の知識人の一人。有名どころは「名人伝」「山月記」。わたしは「悟浄出世」「悟浄嘆異」がすきだ。生の渦巻きに巻かれよ・・・!
- 火浦功
スチャラカ作家。締め切り破りの帝王。滅多にでない新刊。最近は朝日ノベルスで復刊がじわじわ。やっぱ「ガルディーン」シリーズ、かな。「すたーらいと」シリーズも面白いのに。
- 山本夏彦
故人。辛口コラムニスト。雑誌「室内」の編集兼発行人を永年勤めた。若いころからコラムの内容の基本は変わらない。同じことを繰り返す。「日常茶飯事」は昭和30年代とは思えぬ内容だ。晩年に社内の女性職員達との対話形式で記録した「『室内』40年」「誰か戦前を知らないか」「百年分を一時間で」「男女の仲」は作者の思わぬ一面も垣間見えて面白い。
- ジョン・アーヴィング
アメリカ。「ホテル・ニューハンプシャー」「オウエンに祈りを」「サイダーハウス・ルール」など映画化したものも多数。ファンタジックで現実味のない日常と、リアルで残酷な時の流れがアンバランス。その流れにのらないと理解できないフレーズも多い。「ホテル・・・」の「開いた窓を覗き込んではいけない」というくだりがいたく気に入っている。
- イタロ・カルヴィーノ
イタリア。故人。「まっぷたつの子爵」「木登り男爵」「不在の騎士」三部作が一番面白かった。
- J・M・G・ル・クレジオ
フランス。ファンタジックで感覚的。映画化したのは「モンド」。「海を見たことがなかった少年」という短編集に収録。「砂漠」「オニチャ」「さまよえる星」がすきだ。2008年、ノーベル文学賞とっちゃって、にわかに復刊が相次いだ・・・!
- アゴタ・クリストフ
フランス語で書いてるから一応フランス。悪童三部作「悪童日記」「ふたりの証拠」「第三の嘘」双子は本当にふたりいるのか?
- アーネスト・ヘミングウェイ
アメリカ。故人。長編では未完の「海流のなかの島々」が、短編ではニックシリーズがすきだ。
- ジェームス・ヘリオット
イギリス。グラスゴーの獣医さん。故人。獣医ものの先駆者。
- アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ
フランス。故人。飛行機乗り。「星の王子様」が有名だが、わたしは「南方郵便機」がすきだ。「夜間飛行」「人間の土地」「戦う操縦士」
- ウィリアム・サローヤン
アメリカ。故人。アルメニア移民。短編の名手。子どもが主人公が多い。長編では「ママ・アイラブユー」「パパ・ユーアクレイジー」「我が名はアラム」「人間喜劇(ヒューマン・コメディ)」など。
- J・D・サリンジャー
アメリカ。超偏屈。短編集は「ナインストーリーズ」以外出してはいけない。「ライ麦畑でつかまえて(キャッチャー・イン・ザ・ライ)」の翻訳に解説も付けちゃだめって言ったらしい。短編「バナナフィッシュにうってつけの日」は不思議です。なんでシーモア死んだんだろう。グラース家シリーズは奥が深いです。
- ロバート・ウェストール
イギリス。児童文学。「かかし」「ブラッカムの爆撃機」「弟の戦争」「クリスマスの猫」屈折した少年の気分とかがうまい。
- デイヴィッド・アーモンド
イギリス。児童文学。不思議に静かな語り口で、子どもの孤独を描く。「肩胛骨は翼の名残り」「星を数えて」
- ソーニャ・ハートネット
オーストラリア。児童文学、の割には、小難しいというか暗いんだけど・・・この人が描く子どもも孤独なんだよなあ。「木曜日に生まれた子ども」「銀のロバ」「小鳥たちが見たもの」「サレンダー」
- ジュンパ・ラヒリ
アメリカのベンガル人。どんな人種だろうと、考えることは同じ。「停電の夜に」「その名にちなんで」「見知らぬ場所」
- 「セロ弾きのゴーシュ」宮沢賢治
ネコとカッコウとネズミとタヌキで修行する。こういうのほほんとした話、すきなんです。
- 「蝦夷地別件」船戸与一
アイヌの少年を主人公に、蝦夷地に入り込んできた和人の僧侶や武士、ポルトガル人とを絡めて、人間の愚かさを描く。少年ハルナフリの末路が哀れだ。
- 「月の砂漠をさばさばと」北村薫
お母さんとサキちゃんのふたり暮らしを描く短編集。挿し絵もいい感じ。おっさんが書いたと思える部分も思えない部分も。ミステリー作家のこの作者には異色の作品。さばさばといくのはサバのみそ煮です。
- 「空色勾玉」「薄紅天女」荻原規子
勾玉三部作の最初と最後。「白鳥異伝」は好きでないもんで・・・。日本のファンタジーの先駆け。カラスがいいよなあ。
- 「警視庁草紙」山田風太郎
忍者もので有名な著者だけど、この明治ものが好きだ。歴史上の人物も出てくる。明治時代ってあんまりないよねえ。
- 「川の名前」川端裕人
自分の住むところを表すのに、昔だったら、とこの川のだれだれ、って言うだろう、ってところから来たタイトルがすごい好きだ。内容も、小学生の冒険譚らしくて楽しい。
- 「家守奇談」梨木香歩
さるすべりに懸想された青年。掛け軸の向こうから、死んだ友人が帰ってくる。元祖日本、って感じのファンタジー。
- 「有頂天家族」森見登美彦
この作者、天狗が出てくるので好きなんだけど、この話が一番好きだ。狸ファミリー団結!
- 「一瞬の風になれ」佐藤多佳子
走ることが、とても楽しそうな全3巻。
- 「風が強く吹いている」三浦しをん
駅伝もの。登場人物それぞれが元気に動いていて、楽しい。
- 「アップフェルラント物語」「ラインの虜囚」田中芳樹
少年少女の大冒険。「ラインの虜囚」は、作者も円熟してきて、本って面白いよ!っていう子どもたちへのメッセージが感じ取れます。
- 「街道をゆくシリーズ」司馬遼太郎
人が年をとるということは、その知り得た知識も多くなってゆくということで、この作者はその知識を上手に取り出すことができる人です。一つの景色を見て、明治、昭和、古代、戦国と様々な時代のことを縦横無尽につづっていく。敗戦以来、過去と切り離されたような現代にあって、日本という国の歴史を身近に感じることができる。旅行に行く前にその地方の部分を読んでいくと、見る目が違ってきます。
- 「モモちゃんとアカネちゃんシリーズ」松谷みよ子
全6巻。小学校低学年に前半4冊を読み、大人になってから後半2冊を読んだ。なんかとても複雑。子供向けの割には両親離婚したりおじいちゃんやお父さんが死んだりしてヘビーなのだ。そのくせ、お手伝いをしてくれるのはクマだったり、飼い猫はしゃべったり。大人は頭で考えてしまうからダメだね。あのころ、父親は歩く木(ホントに歩く)、母親は育つ木、二つが一緒に植わってるとふたりとも成長できない、だから別れるんだという説明に素直に納得していた。
- 「大いなる遺産」「クリスマス・カロル」チャールズ・ディケンズ
イギリスの古典。19世紀のイギリスの雰囲気が良く伝わる。どちらも映画化してる。「大いなる・・・」は、遺産相続人に突然指名された青年の物語。「クリスマス・・」は古典中の古典。どちらの主人公も性格悪いんだけど、途中で変わってゆく。身近に大切な人たちがいるんだよ、という話。
- 「ほんものの魔法使」ポール・ギャリコ
有名な作品に、映画化された「ポセイドン・アドベンチャー」というのがあるが、これは180度違うくらい、のほほんとした作品。えせ魔法使いのはびこる世界にやってきた、ホンモノの魔法使い。彼に弟子入りしようとした少女は、彼から、この世の魔法を教わる。野山の牛羊馬豚ヤゴにイモムシ。草からミルクを生み、毛皮を生み、なにもないところから次々増えて、トンボやチョウに変身する。そしてこの人間の頭、目を閉じれは過去も未来も自分のもの。こういうことを素直に不思議だと思っていたいですが、現代は魔法礼賛です。
- 「絵のない絵本」アンデルセン
月が、画家に、見てきたものを語るオムニバス。河にロウソクを流すインドの少女とか玉座で死に絶えた少年とか、タイトルに反して挿し絵をつけたくなるような作品ばかりです。
- 「インド夜想曲」「夢のなかの夢」アントニオ・タブツキ
イタリア文学。「インド・・・」は映画化した。インドの街を、失踪した友人を捜して歩く青年が、出会い、目にする様々な人々と風景。幻想的なインドです。「夢の・・・」はオムニバス。さまざまな人物がみたとする夢が登場。スティーブンスンの夢が一番面白かった。
- 「わたしたちの鳴らす鐘」ロバート・コーミア
アメリカ文学。「チョコレート戦争」が有名だけど、これは宗教がテーマ。11才の女の子が、神って何だと悩む物語。神はいつだって、気付きさえすればいるんだよ、というお話。日本人が理解しにくいのが、こういう宗教もの。カトリックとプロテスタントの違いだけで、天国にいけたりいけなかったり。相手は地獄にいくんだと、お互い子供の頃からそう信じ込んでたりするんだよね。この作品の冒頭に掲げられている詩がいいんです。新年にあたりて(ケネス・パッチョン)
- 「ゲド戦記I-III」アーシュラ・K・ル=グウィン
アメリカ文学。力のある魔法使いゲドは、若気の至りで禁断の魔法を使い闇をこの世に呼び出してしまう。この後、4巻、5巻と外伝も出ているらしいですが。4巻はなんだか余分。ゲド戦記である必要はないじゃん、と思いました。すごい女性崇拝物語でゲドはただのじじいになっています。5巻は、4巻の流れもふまえ、それらしく続いていてまあいっか、という感じ。ゲド戦記というよりかアースシーの書という方が正しいかな。
- 「闇の中で」シェイマス・ディーン
アイルランド。詩人の自伝的小説。なんで小説かって言うと幻想的な描写が多いかららしい。プロテスタントとカトリックが日常的に争っている街。霊感の強い母と、母似の少年は、憎みあい愛し合う。ふだんの生活のなかにケルト的な世界が垣間見える。
- 「少年キム」ラドヤード・キプリング
「ジャングル・ブック」の著者。インドで育ったので、どちらもインドが舞台。天衣無縫の浮浪児キムは白人の落としだね。チベットから聖河を求めてやってきたラマの弟子になり聖河探求の旅に出るが、闇戦争に巻き込まれ、スパイ養成をうける羽目に。3年後、闇戦争に決着をつけ、無自覚のうちに、ラマが聖河を見つける手助けをする。インドいくならガイドブック代わりに持っていってみたいけど、インドの北西部は現在危険地帯。
- 「クラバート」オトフリート・プロイスラー
ドイツだかチェコだかの古い民話を下敷きにした物語。水車小屋のカラスたちは、12人の魔法使い。孤児の少年クラバートも迷い込み、親方の元で働くことに。中世ヨーロッパのうすぐらーい雰囲気が怖いけどいい感じ。
- 「アンジェラの灰」フランク・マコート
アメリカ。自伝。アイルランドで育った少年時代を回想する。映画化もした。続編(アンジェラの祈り)も出た。すさまじく貧乏な少年時代。父は飲んだくれ、弟妹達は次々死に、湿気と臭気とにあふれた家で暮らし、こぼれた石炭を拾って金にする。それでも、父母の愛を感じながら少年達は育ってゆく。
- 「ふたりのアーサー」ケビン・クロスリー=ホランド
イギリス。詩的な語り口がいい。12世紀の世紀末に生きるアーサー少年が毎日の生活をつづる。少年がマーリンにもらった黒曜石に映し出される伝説のアーサー王の人生と、少年の生活が微妙にリンクしていく。
- 「彼方なる歌に耳を澄ませよ」アリステア・マクラウド
カナダ。短編の名手。「灰色の輝ける贈り物」「冬の犬」もいいけど、この長編、赤毛の系譜だとか、冬の凍った湖での悲劇とか、大事に読みたいお話。滅びるしかない、という部分がとても寂しいけれど。
- 「プリデイン物語シリーズ」ロイド・G・アリグザンダー
異世界プリデインを舞台に、騎士見習いの少年タランがひとくせふたくせある仲間とともに様々な旅をするファンタジー。これ読んで、大人にならんとなんにもできないと思いました。全5巻。
- 「ニール・ケアリーシリーズ」ドン・ウィンズロウ
元浮浪児の探偵ニール。母はヤク中、父は知らない。「父さん」グレアムに出会い、探偵の道へ。活字中毒で勉強したいのに周りはそうはさせてくれない。ちょっともの悲しい雰囲気のミステリー。だったはずが、最終刊は女に囲まれ、そうでもないんだなあ。「ストリートキッズ」「仏陀の鏡への道」「高く孤独な道を行け」「ウォータースライドをのぼれ」「砂漠で溺れるわけにはいかない」全5巻。
- 「海の勇士ボライソーシリーズ」アリグザンダー・ケント
アメリカ独立とかフランス革命とかそういう時代背景。海の男ホーンブロワーが水夫成り上がりの船長なのに対し、ボライソーは生まれながらの船長。いいとこ出の坊ちゃんだけど、カサに着たりせず、みなを対等に扱う。高所恐怖症。でも顔には出さないよ。最新刊ではすでにボライソーは海戦で死んじゃってるけど甥っ子があとを継いで物語は続いてる。既刊28冊。
- 「ドリトル先生シリーズ」ヒュー・ロフティング
ご存じ、動物と話せるお医者さん、ドリトル先生。英国紳士です。助手の少年の他、イヌ、フクロウ、ブタ、謎の生き物オシツオサレツ(頭が二つでおしりでくっついてる)などさまざまな家族達と旅をしたりする。月まで行っちゃうぞ。ブタのガブガブがすきなんです。バカすぎ。「ガブガブの書」なんて本も出ています。作者は、ネコはお嫌いらしい。肉食だから。月には作者理想のネコがいたんだけど、どういう性質なのか、未完なのでわからないのが残念。全13巻。
- 「グリーン・ノウシリーズ」ボストン夫人
少年トリーが遊びに来たおばあちゃんの古い館には、800年前の幽霊の子どもたちがすんでいた。古き良きイギリス。わたしは4巻の「お客さま」がすきです。なぜか、庭に、ゴリラ。全5巻、別巻1冊。
- 「シーラスシリーズ」セシル・ボドカー
デンマーク。サーカスから家出してきたシーラスは、馬と笛の使い手。街で様々な人に出会い、赤ん坊を拾ったことから古い山を開拓して村を作ってしまう。世話係などはみな街から盗んでくるし、やることは想像もつかない。まっすぐなシーラスが起こす騒動の数々。どんどん続いて、とうとうパパに。既刊14冊。
ver1.1(2009.6.20)