南の島の穏やかな時間

朝から必死で飛んでいる方々には申し訳ないが、ちょっとテンションが高すぎたので、休憩をかねて昼食をとる。本当は気分転換
であり静養に来てるはずであったが、さすがに結構くたびれている模様。考えてみると、まともに体が休んでいた日ってこの数ヶ月
ほとんどなかったな。飯を食べたらますます眠くなりにけり。
こういうときは昼寝に限る。人様はあまりやってこないらしいが、R/W35エンド近くの道端に止まって少し仮眠する。
静かです…すごく静かです。ただ、周回する機体のエンジン音が近づいては遠ざかる、のんびりとした午後。この瞬間だけでも
忘れたくなる。いろんな出来事…消えてなくなる訳じゃあないけれど…

まあ気にしても仕方がない。そう、気にしても仕方がない。
ということで、まずはR/W35エンド周辺から撮影。多少とも歩かねばならないが、こういう風景を撮るのはそれほど難しくない。
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滑走路のすぐ外側はジャングル、とまではいかないが藪になっていて、とても近づけない。唯一寄れる場所にゲートがあるのだが、
昼を過ぎると光の向きがよろしくない。道がないので、ぐるっと廻り込んで何カットか撮ったが、陽も翳ってきて、ん〜〜〜厳しい。
まっすぐに続くアップダウン道(下地島は平らな島だから大したことは無い。)を、赤茶げたサトウキビ畑に囲まれて進むと、飛
行機が降りてくる。なかなか見られない風景だと思うのだが、うまく画角に纏めるのは難しい。ずっと遠くから超望遠で圧縮する
といいかと思ったが、苦労の割りに案外だった。
仕方が無いので普通に撮ったカット。イメージには程遠いし、アプローチが低い。

その昔、地震の津波で運ばれてきたという帯岩のほうに回り込んでみた。帯岩の裏側はそれほどスペースの無いまま、いきなり海な
ので、飛行機を絡めるのは難しい。帯岩は信仰の対象なので鳥居があるし、登るわけにもいかない。初めて来た場所だったので、参拝
させていただく。ただし出雲式。

こういう潅木が多いので、それを絡めて絵に出来るかどうかですね。下はゴロゴロの岩なのでこれを上手く処理したいのですが、
下草に隠れて見えへんな。苦労の割りに報われてない。
駄目だ、つまらん。こんな写真を撮りにきたわけじゃないやん…、とぼやきたくなる。こういうタイミングに限って4機も飛んでいる。

仕方がないので、少々強引ながら藪漕ぎしてみることにした。今をさること3年前、まだ植林したばかりでフェンス際まで行けた
場所。昨春にやってきた時には、もはや道の位置すらわからないほど若草が生い茂ってしまい、とても侵入する勇気なし。しかし
今回もそれでは、来た意味が無いかなと思ったのである。幸い道沿いから見た感じでは、50m位藪漕ぎすれば何とかなりそうである。
そして有難いことにこの島にはハブが居ない。(そら普通藪漕ぎセエへんよ、ハブ居ったら)ドカドカガラガラと重戦車の気持ちで
すね。90式でもレオパルドでも結構ですが、地雷処理ドラムよろしく脚立を正面に、全速前進する。この下草、種が一杯付いてまし
てね、種まみれですわ。これをそのまま持って帰ったら、変な帰化植物を山陰に増やしかねない感じである。ジャンボが飛び回ってた
当時は低い低い松の木だったはずだが、これも背丈以上に成長しているので、脚立に乗って視界を確保。実はこちら側もすぐ横で
フェンス工事をやっているので、これが画面に入らないような位置を選んでみた。しかし、滑走路挟んで反対側から見たらかなり
目立っていると思われる。森の中にぽこっとワシ、みたいな。

大体こんな感じで撮れます。顔を挙げたところでは、バックにターミナルが入ってちょっとうるさくなるので、思いっきり流す。
雲が増えて陽が翳ることもあるが、今日が最終日のJTAは延々と飛び続ける。休憩していたドルフィンとJALの737-800も動き出して
一気ににぎやかさを増してくる。
ローテーションが遅れるといい感じに南の島っぽくなります。あと5mくらい高台から撮れれば、海も綺麗なんだが(絶対無理)。

下地島の訓練は2名体制でスタートするので、途中でシートチェンジがあります。一旦フルストップをリクエストして、タキシー
ウェイに出ると、シートを交代。ちょうどその儀式が目の前なのですね。伊良部島の段々畑(というのかどうか、知らないが)がバ
ックに入るのでお気に入り。欲を言えば、天気さえもう少しまともならねえ。
さらにどこからともなく、航空局(JCAB)のガルフストリームが飛来して周回を始める。

空港でのフライトチェックを意識してか、ローアプローチのまま通過するなど一風変わったフライトを見せてくれた。

撮影ポイント講座みたいだな…。
まじめな話、何度も下地に来たとして、いろいろなところで撮らなきゃつまらない。以前も書きましたが、素晴らしく吸い込
まれそうな青空でないと、画面が締まらない。少しでも日が翳ると、機体も海も美しくない。波が静かでないと、空をきれい
に反射しない。しかも穏やかな南風でないと、R/W17を使ってくれない。
定番の抜けるような空をバックに、おなかを真っ青に染めて降りてくる飛行機って、そりゃあ滅多に撮れないんですよね。
まあ一ヶ月に数日くらいでしょ、確立的には。さらにお目当ての飛行機が訓練に入ってくれるか、その日飛ぶのか、ぶっちゃけ
その時下地島に行けるのかという問題もある。ハズレ率高いのですよ。最初は、海からアプローチしてさえくれればOKかもしれ
ないけれど、一度でもあの紺碧の空、ではないな…水彩絵具というより不透明なアクリル絵具が近いかもしれない…
「色塗ったでしょ、コレ」
と言いたくなるような青空と海を見てしまうとだ、もう馬鹿らしくて曇りの日にあの構図の写真撮る気にならないのだ。

下手すりゃ滞在中ずっと曇天ということもある訳で、いろんなとこから撮ってみるってのは、下地島を楽しむには重要。
今日なんかは、北風が強烈で、日も翳ることが多かったけれど、それなりにいろんなカットが撮れたと思う。