カセットテープ録音

今、なぜ、カセット?

 オープンテープから始まった録音メディアは、カセットテープの出現により数十年に渡ってその王様として君臨してきましたが、世の中デジタル時代となり、DATやMD、さらにはCD-Rにその地位を明け渡してしまいました。録音メディアの売り場では、MDが一番の売り場面積をとり、数種類のカセットテープがかろうじて置かれている状況です。しかも、最近のテープはデザインが子供だましのようなものが多いので、困ったものです。まともな大人が使うには恥ずかしいようなデザインです。 
 しかし、多少お年を召した方はまだMDとは何ぞや、という状況。また、弊社ににCD制作の依頼のために持ち込まれる素材としては、カセットテープに録音されたものもまだまだ多いのであります。
 ところが、持ち込まれたカセットも、録音レベルは低いし、ドルビーは?と尋ねても、「それって、何ですか」という返答。
 そこで、過去のものとなろうとしているカセットテープではありますが、もう一度おさらいの意味でこのページを作った次第です。カセットを侮ってはいけません。下手なMDへの録音よりも、録音レベルをきちんと調整したカセットの録音は侮れないものがありますよ。特に、今ほとんどのお店で見ることのないメタルテープなど結構いいもんです。 


カセットテープの特徴

 まずはカセットテープの特徴から見てゆきましょう。

1.モノラルとステレオのコンパチビリティ、世界のカセット

 カセットテープはステレオ録音した場合右CH(チャンネル)と左CHが隣り合ったトラック構成になっています。したがってモノラルのラジカセでも再生できるし、ステレオのデッキでも再生できます。カセットがかかる装置であれは゛、どんな装置でも聞くことが出来るということです。つまり、モノラル録音をしたテープをステレオのデッキにかけても両CH同じ音しか出ませんが、きちんと再生できるし、逆にステレオ録音のテープをモノラルのラジカセで聞いても、両CHがミックスはされますが、きちんと聞こえます。
 さらに、もうひとつ言えば、カセットテープは全世界ほとんど共通のメディアなのです。中国だろうとアメリカだろうとどこでもつかえます。あなたの家にも1台や2台はカセットが再生できる機械があるはずです。世界中に普及しているVHSのテープ。テープは同じでもヨーロッパで録画したビデオは、日本のビデオデッキでは基本的に再生出来ないのです。カセットテープはすごい!

2.小型でハーフ入り

 このお陰で、録音もしくは再生中のどんなときでも取り出せる。オープンテープは一度どちらかに巻き取ってしまわないと、デッキからテープを外し持ち歩く事が出来なかったのです。(これは革命的に便利だったのです。) そして、レコードがCDに、LDがDVDにそれぞれ体勢が変わってしまったのもそのサイズによるように、カセットもそれなりに小さいのです。この便利さとポータビリティが爆発的に普及する原動力となったのです。多少乱暴に扱っても大丈夫だし。

カセットテープの規格

 カセットテープはある一定の速さで巻き取られて順次録音されてゆきます。その速さは1秒間に4.76cmとなっています。速さが狂ったデッキで録音し、同じデッキで再生するぶんには問題がありませんが(問題はなくはないのですが分からないでしょう)、他のデッキにかけたときには演奏時間も違えばピッチも違ってきます。自分のデッキでばかり録再をしていれば、気が付かないこともよくあります。たまには友達にも聞いてもらいましょう。「音程が変だよ」とか、「違う音楽みたいだ」などといわれたら、どちらかのデッキを疑うべきです。時には両方ともおかしいなどということもあるかもしれませんが。
 また、テープの幅は1/8インチです。これは知っていても知らなくてもあまり問題はありません。


カセットテープ録音のポイント

 他の録音デッキと同様、録音ボタンを押して録音するわけですが、ポイントが2つあります。

1.何といっても録音レベル
  
 − どんな録音機でも録音レベルの決定に一番神経を使うべし −

 カセットデッキのメーターは下図のようになっています。デジタル系のデッキのメーターは0dBが最高値ですが、カセットデッキのようなアナログ系デッキのメーターは0dB以上+8dBとか+10dBまでメモリがふってあります。デジタルの場合、0dBを越えるとあきらかに音がつぶれてしまいます。しかしカセットデッキの場合、テープによって異なりますが、+2dBから+6dB位までは歪まないのです(詳しくは録音の仕方のところで述べています)

実は (こだわりの方へ)
カセットテープに録音するとき、ある音を0dBになるように録音レベルを調節したとします。しかしながら、どのテープでも再生時に0dBになるとは限らないのです。ほとんどのテープ、特にノーマルタイプのテープの場合は0dBより小さくなります。これはテープの種類(メーカーやタイプ)によって再生時の出力レベルが違うからです。多少小さくてもアンプのボリュームをちょっと上げればすむじゃないかと言えそうですが、ちょっと微妙な問題が発生します。
 次の、ドルビーNRの項をご覧いただければ、その意味はわかると思います。

2.ドルビーNR(ノイズリダクション)について

 ドルビーNRシステムとは、ドルビー研究所というところが開発したテープのヒスノイズ(シャーというテープ特有の雑音)を低減する回路です。A、B、C、Sの四つのタイプがあります(後述)。重要な事は、どのタイプも、録音するときにその回路をONしたら、再生のときにもONにしなければならないということです。
 ではどんな仕掛けでノイズを減らすのでしょう。−−−テープヒスは高域成分が多いので、録音するときに高域成分をやや強めて録音し、再生時には逆にそのぶんだけ弱めて再生します。そうすることによって、本来の信号(音声)は元の大きさに戻り、含まれていた雑音は小さくなってしまいます。これがドルビーNRの理論です。
 また、ドルビーNRの回路は、録音される音声があるレベルより低いときにのみ働きます。あるレベルとは、メーターの図をもう一度見ていただくと、ドルビーマーク()が記してありますが、そのレベルより低い音に対して働くのです。それよりも大きな音に対してはドルビーNRは働かないのです。大きな音に対してなぜ働かないかというと、音声が大きいのでヒスノイズはマスキングされて聞こえなくなるので必要がないからです。

 ここで、先ほどの微妙な問題が発生します。録音時より再生時のレベルが低いと、録音時にドルビーがかかっていない部分に、再生時にはかかってしまうということが起こるのです。即ち、その微妙なレベルの間は音質が変わってしまうということです。ある程度高級なデッキにはそれを補正できる回路がついています。こだわりの方はこの「録音キャリブレーション」の付いたデッキをお買いになる事をお奨めします。

そして、
 ドルビーNRは、ロックのような常に大きな音で鳴り捲っている音楽には、ほとんど働かないでしょう。でも、曲間には必ず無音の部分があります。ここではドルビーNRがちゃんと働いているのです。音楽のないところで働いても「無用の用」的ですが、曲が終わったとたん「シャー」というのも面白くないですから、それなりに意味はあると思います。


 

 ドルビー(A)は、業務用なので普通カセットデッキには搭載されていません。ドルビー(B)は、歴史も古く一般的です。一般的にドルビーNRと言えばこのBタイプをさしています。ドルビー(C)はBタイプよりも低域からノイズ低減を行い、高域に関してもBタイプより強力です。ドルビー(S)はCタイプよりさらに低域からノイズ低減を行い全体の効果も一番強力です。また、Bタイプ、Cタイプには飽和防止回路などもついていて、ドルビーをかけることによる音質劣化を防いでいます。

参考:ドルビーHX PROシステムとは
録音時の高域特性を改善するために開発されたのが、このシステムです。上記ドルビーNRと同様、デッキにOn、Offのスイッチがありますが、これは録音時にのみ働くため、この回路のない他のデッキで再生しても、効果はあります。

ドルビーをかけると音が悪くなるいという方がいらっしゃいます。「音がこもる。」という言い分がほとんどです。最近のドルビー回路はIC化されていて、そのICの良し悪しが音質に大きく影響します。確かに低価格のデッキはちょっとこもったような感じになりますが、高音質をうたっているデッキはそんなにひどいものではありません。確かに複雑な回路なので何らかの音質変化はあります。でも、楽曲にもよりますが、シャーという音に埋もれたバイオリンのピアニシモはつらいものがあります。

3.カセットテープの種類

 カセットテープには3種類あります。ノーマルタイプ(TYPET)、ハイポジ(TYPEU)、メタルテープ(TYPE W)の3種類です。(メタルといってもテープ自体が金属ではありません。)
 
基本的に後者のほうが音が良いのですが、カセットデッキにセットしたときにこのテープタイプの切り替えを合わせないといけません。が、最近のデッキは自動で切り替えてくれるものが多いのであまり心配は要らないと思います。
 TYPETは公演や会議、語学といった音質は二の次といった用途に。音楽を録音するなら、少なくともTYPEUのテープをお使いください。クラシックならメタル(TYPE W)ですね。クラシックはダイナミックレンジが非常に大きいので、録音レベルが少しでも上げられるメタルを使って、且つ、ドルビーNRをかけて録音したほうがよいと思います。そうしないと、ピアニシモや余韻、雰囲気が「シャー」というノイズに埋もれてしまいます。
 いずれにしても、目的に合ったテープを使用することです。

4.メンテナンス

 もちろんカセットデッキに限った事ではありませんが、デッキの場合メンテナンスがかなりものを言います。
 デッキのメンテナンスは3つあります。第1に、ヘッド及びキャプスタン、ピンチローラーのクリーニングを時々する事。市販のクリーニングキットで拭くだけです。これを怠ると、まず初期には音がこもってしまいます。高音の録音レベルが下がってしまいます。多少回数が多くてもそう問題はありません。ただ、クリーニング液をつけすぎない事と、液がよく乾いてから使用することです。
 2番目はヘッドの消磁です。長い間使っていると、ヘッドが磁気を帯びてきて、ボソボソ言い出します。消磁器という物がありますので、これで消磁します。数千円しますが、作業はあっという間です。情けないくらい瞬間の作業です。
 3番目はアンプなども同様ですが、接続端子の掃除です。専用のクリーニングキットもありますが、乾いた布でピン端子を拭くだけでも違います。もちろんコード側もです。
 大事な機械です。メンテナンスを怠ったために大切な録音を失敗したという声は意外とよく聞きます。大切なな録音の前には必ずメンテをしておきましょう。




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