パソコンとの出会い


たけるが1歳10ヶ月の頃だった。ある朝、久しぶりの友人から電話がかかってきた。生活訓練で同期だったYさんだった。彼女は、以前からボランティアで視覚障害者にパソコンを教えている方だ。Yさんと話すやいなや、「パソコンしたいんよー!!」とそう叫んでいた私だった。
思えば、視力障害センターで勉強していた頃はあまり他の事をする余裕がなかったけれど、今はある意味自由なのだ。たけるにはまだまだ手がかかるけれど、赤ちゃんの頃に比べればほんの少しだけ時間的余裕もある。ずっと以前から何か趣味をもちたいと思っていたし、インターネットで育児に関する色々な事を自分で調べたいと思っていた。本屋さんには、最新の育児情報が満載の雑誌や詳しく書かれた本が沢山並んでいるけれど、それらがスラスラ読めるんだったらとっくに読んで勉強している。少しはCD図書でも聞いて勉強したものの、情報が古かったり自分の欲しい情報が手に入らなかったりして、ちょっと困っていたのだった。本当は子どもを妊娠している時から、始めれば良かったけれど何かを始めるには「きっかけ」が必要。この電話を機に、以前から考えていたパソコンを始める事に決め、数週間後には購入していた。
視覚障害者の為の音声ソフトにより、文字を入力すれば全て音声で読み上げてくれるし、誰かからメールがきても受信すればちゃんと音声で聞く事が出来る。生活訓練の時に少し習ってはいたのだけど、キーポジションすら忘れていた。Yさんに色々と教えてもらいながらのスタートだった。メールすらした事がなかった私が、インターネットにもチャレンジしているなんてちょっと信じられない気もするけど、視覚に障害のある人にとってパソコンは必需品のように思えるほど便利な物だと思った。
月に一度のパソコン勉強会も開いて頂いて、色々な疑問や質問を解決出来るようにもなった。同じように視覚に障害をもった仲間たちと、交流をもてる貴重な時間でもある。
たけるは、パソコンの邪魔をしてくるんだろうなぁと思っていたら、案の定だった。最初の頃は、たけるが眠ってから夜遅くに主人と二人で「ああでもない、こうでもない!」といった感じでコソコソ練習していたのだけど、睡魔に襲われ1週間くらいでギブアップ。たけるが機嫌のいい時をねらって、練習するようにした。何とか一人でメールの送信や受信が出来るようになったものの時々、「音声が出なくなったんよー!」とYさんに泣きつく事もあった。機械に弱い私にとって、特にパソコンは詳しい人に教えてもらわないと何にも出来ないんだなぁと情けなく思う毎日だった。それに、少し熱中してくるとたけるはそれが気に入らないらしく、たちまち不機嫌になりパソコンのキーをバンバン叩きにやってくる始末。「あぁ、もっと落ち着いて練習したいのに!」という気持ちと「しばらくほっといてごめんね!」という気持ちとで不安定な気分に陥る事もあった。やっぱり子どもにはまだまだ手がかかる。少し手がかからなくなってから、始めた方が良かったのかなぁと思ったりしたものの、それじゃあいつまで経っても始められないと思った。今では、子どもがお昼寝している時にだけやっている事が多い。
インターネットで色々調べられるのはいいけれど、まだまだコツがつかめず思ったようには自由に使いこなせていないのが現実だが、慣れが必要との事。使いこなせれば、もっと楽しいんだろうなぁと思う。
パソコンを始めて、半年ちょい経った頃「ホームページを作ってみない?」とYさん。そんなすごい事、私に出来るのかと不安になったがホームページを作る事で、色々なパソコン操作の勉強にもなるという事なのでチャレンジしてみる事にした。特にたいした話は無いんだけれど、大切な育児日記が書けるのは本当に嬉しい事でもある。
今現在、3歳になった息子のもっと小さかった頃の事を思い出しながら、限られた時間の中で少しづつ、本当に少しづつ書いていっている。たけるが大きくなって、読んでくれるのを楽しみに。ウーン、楽しいと思うのは親だけなのかも知れないけど。
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