入院中


1週間の入院中、看護士さんや助産士さんには育児の基本的な事を教えていただいた。母乳の出が良くなるマッサージ、母乳の与え方、おむつ交換の方法、入浴の方法などである。この病院では、赤ちゃんが生まれて2日目から母親と、赤ちゃんが同じ部屋で過ごすそうだ。少しでも早く赤ちゃんに慣れる為なのだろう。私はその前に、病院の環境に慣れなくては身動きがとれない。しかし、そんな事を言っている時間はなかった。とりあえずトイレや洗面所、授乳室に近い部屋が空いていたのでそこで過ごす事になった。
朝6時半から、夜10時までは子どもとだいたい一緒に過ごしていた。しかし、面会の人が来た時や皆で集まって、いろんな講習を受ける時などは別の部屋であずかってもらえたので、正直言って少しは楽ができた。
最初は、どう抱っこしてよいのやら本当に何もかも初めて体験する事ばかりで、戸惑う事だらけの毎日。よく考えてみれば、私にはまだおいやめいもいなければ、友達の子どももたまにしか接していない。ますます不安になるばかり。お腹の中にいた時は、無事生まれてきてくれる事だけを願っていたのだけれど、実際生まれてからの方がこれからの事をあれこれと考えてしまって、病院ではゆっくり休む事が出来なかったように思う。母乳も、もっと出るものかと思っていたのだけど、想像していたほどたくさん出なかった。赤ちゃんは頑張って吸おうとしているのに、体重はあんまり増えていなかった。看護士さんにミルクの作り方を教わったが、哺乳瓶の目盛りすら見えにくい。赤ちゃんは哺乳量が足りないのか、昼間でもあんまり眠ってくれずよく泣いていた。
主人は、毎日仕事が終わると病院に来てくれていた。「そんなに毎日来なくても大丈夫よ。」と言うと、「お前に会いに来とるんじゃない。子どもに会いに来とるんじゃ!」と憎まれ口をたたいていた。夜6時から9時の間、赤ちゃんのパパに限って病室で直接面会が出来るのだ。もちろん、抱っこする事だって出来る。主人が来ている時は、だいたい眠っている時が多かったように思う。ある日、子どもの血液型が自分と同じO型とわかった主人は、「大きくなったらバイク買ってあげようか?」などとわけのわからない事を言って嬉しそうだった。その時私は、ふと主人にこんな事を聞いていた。「この子は、私達の間に生まれてきて幸せなのかなぁ?」すると主人は、子どもの寝顔をマジマジと見つめながらこうつぶやいた。「それは、こいつがこれから決める事や。」
子どもの心臓の再検査も無事終わり、全く問題なく退院する事が出来た。
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