「碁」でグングン育つ!子供の脳と心


囲碁が最近の若い日本人に欠けている能力のアップに大きな貢献をするということについて、日本棋院院生としての経験、及び慶応ビジネススクールでの経営手法研究から得た著者が下記の著作をしました。 以下に要約を記します。
内容は、親に対するものではありますが、碁をやりたい方に取っても大変有意義な情報が入っています。是非参考にして下さい。

紹介図書  「碁」でグングン育つ!子供の脳と心
          著 者:武川 善太
          推薦者:与謝野 薫(元文部・通産大臣)
          出版社:PHP研究所 2003年3月 第1版発行


  子供たちの間の囲碁ブーム

「ヒカルの碁」により子供の間で囲碁ブームとなっています。このブームは「人気キャラクターのぬいぐるみ」的な要素が高い。しかしながら、以下の大きな教育的な効用を生かすため、単なるブームで終わらせてはいけない。

  碁と「集中力」「考える癖」

碁は子供の未来に大きくプラスになるものを提供する。

碁を打つことにより、
  1.集中力が増す
  2.考える癖がつく
という効果があり、このことは学校の成績を良くするという結果をもたらします。
著者はこのことの例示として、
大リーグのイチロー選手が碁で集中力を養った可能性が高いこと、
石倉昇(現プロ九段)さんの高校時代の経験として、碁を続けた7名の内6名が東大合格したことを挙げています。

  盤上のビジネススクール

ビジネススクールの目的
   思考訓練であって、知識習得ではない。
囲碁とは
   自分と他者行動をシュミレーションするゲーム

ビジネスにおけるデシジョンツリー(意思決定の木)と囲碁の読みとの類似性から、囲碁は手軽なビジネス思考訓練になる。

注.smile_aceは学校卒業時と数年前の再就職時(採用面接他)、企業の採用担当と情報交換をしたことがありますが、いずれも、趣味の囲碁という部分が採用決定要因の一つになっていることを認識しています。

  日本の国際競争力の低下

ビジネスマンの思考能力の低下による国際競争力の低下

日本進出をやめたある西洋人の見た日本
   日本人は自分の意見を持っていない
   自分の頭で考えない
You are a big ego! の ego は自分の意見を持った信念のある人という意味で、日本語のエゴとは大変ニュアンスの違う意味に使われています。
日本人には big ego と呼ばれるに値する人が少ないと言っている訳です。

  優良企業の人事評価基準

  A社
行動力
  先の変化を読み対応を行動に移す力
思考力
  (1)企画立案能力   状況分析と対策立案力
  (2)概念的思考力   別々の考えを繋ぎ合せ新しいアイディアを出す力
自己管理能力
  反対意見、不確実な状況、ストレス状況においても、多くの手を持ち、
  状況に応じて使い分ける能力
行動力、思考力は無論のこと、碁は自分の感情をコントロールする自己制御能力の訓練にも役立ちます。

  B社
戦略思考力
  (1)市場を洞察して、大きな流れを見出すうえに、自ら流れを作り出す為の
    課題と斬新なビジョンを創出し、実現に向けた戦略を打ち出す。
    (洞察力、課題創出力)
  (2)事業環境を分析し、事業機会の可能性を検討・整理した上で新たな
    課題を形成し、実用性の高い戦略を企画する。
    (分析力・課題形成力)
  (3)顧客の論理で思考し、課題に対する革新的な解決策を策定する。     (革新力・課題解決力)
碁は手を読む洞察力、戦況を冷静に見る分析力、相手の論理で考える力を駆使するゲームなので、上記の戦略思考力は碁の思考に近いと考えられる。

  C社(タイのCP-セブンイレブン)
リーダーの採用基準に碁の戦いぶりを入れた。
結果は高学歴でも、リーダーとしての不適格者を見つけることが出来た。


  フォン・ノイマンのゲーム理論

ゲーム理論

  自分と他者の利害が対立していて、かつ、自分の利益が自分の行動だけで
  はなく他者の行動にも影響される状況下で、自分にとって最適な行動を求める。
  そして、利害対立の原型が碁等の室内ゲームにある。
ゲーム理論が、政治、経済、ビジネス、日常生活に応用出来ると同様に、
碁で養われた能力は、政治、経済、ビジネス、日常生活に応用出来る。



   

  ノーベル賞受賞者と歴代総理大臣と囲碁

日本人のノーベル平和賞受賞者  9名    内囲碁愛好者 4名
戦後歴代総理大臣         27名    内囲碁愛好者 16名

  碁は人間力を高めるゲーム=著者の仮説

社会に必要な能力は知識、理解、応用、分析、統合、判断という6種類です。これらを総合して人間力と呼びます。この人間力において、日本の教育でカバーしているのは知識、理解のみ。現代日本の教育システム=知識編重教育ということになります。
そして、著者は残る応用、分析、統合、判断という能力の開発は碁によることが出来るという仮説を立てています。



   


  脳を育む

自己制御等、自分と他者の行動をシュミレーションする能力は脳の前頭連合野という部分が司ります。そして、碁を打つ時に脳波を測定すると、前頭連合野と右脳、左脳が働いています。
このことから、著者の仮説
「碁は人間の本質的かつ根源的な能力に深く関係している」
が生まれました。

自己制御能力
  感情的にならず、今、取ろうとしている行動が将来どういう結果をもたらす
  のかを冷静に考える能力。つまり感情をコントロールする能力。

前頭連合野
  人間らしさを司る。
    戦時に前頭葉ロボトミー手術が行われ、この手術を行うと人間らしさ
    (積極性、希望、夢、個性、主体性)を失うことが確認されている。
    従って、前頭連合野は感情コントロール、将来への計画性(構想力、
    創造力に繋がる)、積極性、主体性などを司っていることが分かっている。

前頭連合野の発達状況について
    人はチンパンジーの6倍。
    現在の日本人の子供の前頭連合野の発達状況は下記のいずれにも劣って
    いる。
      20年前の日本の子供
      現在の中国の子供
    原因は室内遊び、テレビ視聴時間、ゲーム遊び時間など、前頭連合野
    を比較的使わないことに時間を裂いていることにある。

右脳 コンピュータの苦手分野
  音楽、絵画(空間認識)等の芸術分野を司る。
  20歳がピークで以下年齢と共に能力はダウンしていく。
  囲碁と将棋を比較した場合活用度合が高いのは囲碁。

左脳 コンピュータの得意分野
  言語、計算分野を司る。
  80歳まで伸びる可能性があると言われている。
  囲碁と将棋を比較した場合活用度合が高いのは将棋。

囲碁・将棋のコンピュータの得意分野と理由
囲碁での必要度将棋での必要度コンピュータの得手不得手
右脳の働き苦手
左脳の働き得意
コンピュータの強さ囲碁アマ4〜5級将棋アマ4〜5段




   

  実際の教育現場での囲碁の採用状況

大阪府教育委員会が府立高校で1999年度から正課としており、下記のような名称、目標を掲げています。 大東文化大学経済学部が2001年度から総合教育特殊講義として開講されました。 他に東京大学農学部などいくつかの大学では、教員が担当する教科の中で教えられています。 注.smile_aceは昭和40年代に昭和薬科大学で教えられていたことを覚えています。