棋力開発

 10 消しは背景を考えて
   A 背景が変われば消し方も変わる
相手の地模様を破る打ち込みではなくて、相手の地模様を制限する「消し」についても、相手の地模様に近づくので、危険が伴います。従って、その時期、背景を十分吟味する必要があります。

<右辺>
白1と打って、黒が受けた時に、白3と打ち込むのが白の理想の手順です。白19まで、黒は白の言いなりで、大変不満です。
黒がこの図を回避する方法としては
1.黒16の守りで上辺を先着する。
  黒は黒16とQ14の両方を打たれない様にします。
2.黒2で黒17と打って、白1に対して黒O10と攻める。
等が考えられます。

<左辺>
白35を先に打たずに、直接白21の三々に打つと、白35と打った時に、黒36の逆襲があります。
ここに、右辺の手順の妙があるのですが、黒34までとなった場合は白F10等より浅く消すのが妥当な対策です。
似たような配置ですが、黒1に対して、白の工夫です。

白2、4を打ちます。黒が三々に入って来た場合、左辺の黒も根拠が完全ではないので、白18のボウシの様な手で、カラミに持っていくことが可能です。
黒5と打って来た場合は、白6を利かして、白8と守る手もあります。追い出しの攻めです。
 10 消しは背景を考えて
   B 自分の模様にも働く消し
相手の配置によって消し方が変わるだけでなく、自石の配置によっても、消し方が違ってきます。
特に、消しの手が自己の模様の拡大に働くこともあります。これは打ち込みの結果相手の根拠を奪うことになった場合に、その打ち込みが攻めに働くのと似ています。
そんな打ち込み、消しを逃してはいけません。

<右辺>
この配置では白1は黒の模様を消してはいますが、自己の模様も消しており、最善ではありません。

<左辺>
白7のボウシがこの配置では最善です。黒8は最善とは言えませんが、この場合には黒地を限定し、白模様を拡大しています。
ボウシが悪い手になる配置例です。

<右辺>
白1のボウシに対して、普通にケイマに受けるのが良い手です。これは白1と打っても、下辺に黒K4があるため、右下の白模様が大きくならない為です。逆に右上の黒模様は良い形になっています。

<左辺>
白3はカタツキで左辺の模様を制限し、白7と打って、下辺の黒模様も制限することが出来ました。
白1、八方にらみの消しです。

1.黒N10と受ければ、白K12と打って白地がまとまります。
2.黒2なら白3となり、下辺の黒を白5と攻めやすくなります。

この形は黒2以下の2子も切断される味があり、白5も黒M5で切断される味があり、難しい戦いになります。


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 11 「前へ」の精神を大切にしよう
   A 未開拓地への先行は有利
アキ隅への先着が重要視されますが、未開拓地への先着する利は大変大きいものです。
部分的な着手でも、相手より一歩でも先に出ようとする姿勢が全局的な有利をもたらします。

<右上>
黒1のカケにいつまでも3線を這っていると白がどんどん悪くなります。

<右下>
白10ではこの様に早く前にでることが必要で、定石になっています。

<左下>
白12に対して黒13と打たれた場合は、白14、16、18と先行します。黒は4線といえども、後をついていくのは不利なので、黒19と先行を図ります。
2間の薄みは白20で間に合わせ、白22のハサミで得を図ります。
頭を抑えられる不利を回避するために、一間トビの打ち合いがよく打たれます。これは、「提灯ちょうちん行列」と呼ばれます。
黒1で上辺を広げながら、白を攻めます。
白は白2で自石を補強しながら、白R7の打ち込みを狙います。


白5、または白7を許すと、左辺の模様が大きくなる可能性が高く、白R7の打ち込みも狙われるので、黒5、7はなかなか譲れません。


黒4、または黒6を許す(白はシンを止められることになる)と白が攻められて、中央が黒が厚くなり、黒H3が狙われます。

ということで、提灯行列が出来る訳です。
 11 ああ
   B 相手の「前へ」は未然に防ぐ
相手の前への工夫を外し、自分が前へ打てる工夫を例示します。

<右辺>
黒1、3と打つことによって、白7に対し手抜きが可能になりました。

<左辺>
黒9に対する白10が相手の前へを防いで、自分が前へ出る工夫です。
白10は白D17が無いと、一間トビをノゾかれて、手抜きをしたことになりますので、考えられない手ですが、白D17の存在がそれを可能にします。
白1に対して黒2と模様の張り合いになれば、黒の模様が大きく、黒満足です。
白7の前へには、黒8と打ちます。
白の対策は、白1です。
白1は、白を強化して、左辺の打ち込みを狙った手です。
黒が、それを防いで、黒2と打てば、白3とシマって、白も十分です。


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 12 反発するには二段バネ
   A 二段ハネアゲは勢力奪回
二段バネには
1.ハネアゲ
  下から上へと勢力を奪回する手法
2.ハネオサエ
  上から下へと進出を阻止する手法
の2種類があります。どちらも、相手の意図への反発です。

<右辺>
黒8、黒10がハネアゲです。黒4と一歩先に進出した手が、ハネアゲを可能にしました。
白は白11と切って、黒10をシチョウにと白13と打ちましたが、黒14と押して、右辺が大きくなって来ました。

<左辺>
白は白15から白19を利かしますが、黒28までとなり、やはり、左辺が大きくなりました。

白は下辺を働かせる展開に出来なければ劣勢となります。
白1のオシに黒6とノビていると、白2と打たれ左辺の大模様が出来ます。黒2、黒4はそれへの反発です。
白は黒H8のキリが先手となっては、収拾がつかなくなりますので、しろ7とノビますが、黒8とオシ、黒10と抱えます。
白11の守りが省けないので、黒12、14と先着します。
 12 反発するには二段バネ
   B 二段ハネオサエは進出阻止
上から下へのハネオサエは辺への進出を防ぐ手法です。

頭を叩かれた側の留意点としては
1.相手に調子を与えない
2.辛抱して自石を強くし、相手の弱点を狙うことです。

<右上>
黒1は良い手ですが、白2に対して黒3が弱気な手で、白を右上隅に封鎖出来ません。

<右下>
黒9に対して、白10なら黒11です。
白12が冷静な手で、まず白を安定させ、白P7のキリを狙います。
黒15をカケツギすればキリの狙いはありませんが、ノゾキが利きます。

<左下>
白18が一見得のようですが、黒19に手抜きが出来ません。
手抜きは、黒21があります。

<左上>
白22と守る手もあります。黒23なら、白24です。
白1、3で黒の進出を阻止します。
黒4は黒P9、黒Q8の切りを残す為の手筋です。

黒4で黒Q8と切って、黒7とアテ、白4のノビに、黒8と押さえるのは、白5のアテを利かされた後、白Q7と切られて、黒の破錠。

白5の切りは、白S6があり、右辺を大事にした手です。


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 13 つながる厚さ、裂かれる薄さ
   A 連絡は無形の財産
裂かれ形という言葉は局部的な意味で使うことが多いのですが、相手の石を分断することは広い意味で相手を裂かれ形にすることです。
局部的に裂かれた石はそれぞれが非常に弱い石となると同様に、分断された石は、それぞれが弱い石となる可能性が高いものです。

<右辺>
白1、3、5は上下が連絡した好形で、この形は許したくないものです。

<左辺>
黒6の様に、上下の石を裂いていく手が良い手です。
黒1と打って攻める手は、白2により、黒が分断され、白自身を補強する手が、上下の黒を攻める手になって、黒は苦しい状態です。
下辺の黒模様も、黒が攻められている間に小さなものになっていくでしょう。
黒1は地としては小さい手ですが、上下の石がワタったのが大きく、白6にも黒は右辺を守る必要がなく、黒7と打てます。この黒7自体が、白を攻める手になっており、白8と守ることになります。

黒7は左上の白の模様を制限しつつ、下辺の模様を盛り上げる手で、黒打ちやすい局面です。
 13 つながる厚さ、裂かれる薄さ
   B 分断すれば戦いの主導権を握れる
分断すれば攻めることが出来る、ということは、連絡すれば、攻められなくてすむ場合があるということです。

<右辺>
白1と裾空きを嫌って、押さえ、黒2の分断を許してしまいました。白3で封鎖を狙っても、白石が弱いので、殆ど効果はありません。攻められる石を増やしたマイナスが残っただけです。

<左辺>
左下の裾空きは気にせず、白7と連絡をしました。弱い2つの石が連絡して、強い1つの石に生まれ変わったということになります。
右辺と同じ様に封鎖すれば、中央に新たな白の勢力圏が生まれました。
白1の消しに対して、黒2と打ったので、白3と分断しました。 黒は分断された結果、右上の黒を攻められることになりました。 攻められて、上辺の白地を増やすことになることでしょう。

分断が効果のある局面
 分断により攻める石が出来る時

分断が効果が無い局面
 分断しても、両方の石を攻められない時
 ダメを切ったと言います。


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 14 愚形回避か、目的優先か
   A 接近戦では形より読み
愚形は石の効率が悪いので、打たないようにするのが基本です。しかし、愚形でも、読みによって成果があるのを確認できるのであれば、愚形を回避する必要はありません。

<右上>
黒1と打たれた場合、白石は動きません。それは白2以下の脱出を選択すると黒13まで、黒は上辺、右辺に地模様が出来、白はただ逃げるだけで何のメリットもないからです。この後も攻められてお荷物になるだけなのです。

<右下>
白14、16は空き三角の愚形です。この場合は例え愚形でも、黒の間を裂いて出ることに意義があり、右辺、下辺の黒を攻めることが出来る局面なら、この様に打つのが良い手になります。

<左下>
形を意識してこの様に打った結果はどうでしょうか。
白18、22の石は切断されているので、必ずしも、白が戦い易いとは言えない状況です。
白1のツケに対して黒2が愚形の強手です。

黒4の切断に、白5と切ってきますが、黒8で白2子の取りと黒2以下の4子の逃げ出しを見合いにし、黒有利になります。

つまり、白11で白の生きは確保されますが、全局的に黒は厚くなって、有利な戦いが出来るようになったからです。
 14 愚形回避か、目的優先か
   B 気が付きにくい愚形の功罪
黒1は白の間を裂いていく厳しい手です。
白は黒を愚形にしようと、白2、4と打ちましたが、黒は愚形を避けないで白を分断しました。結果は黒9、11、13で右下の黒を強くし、左上に打ち込んで黒優勢となりました。

愚形でも、切断することにより相手の石を弱体化させ、自石を強くした成果です。
白2に対して、形を崩さない様に黒3、5と打つと、黒は右下で地を持って生きますが、白が厚くなって、白10で黒4子が攻められる展開になり、白優勢です。

形を優先するか、目的を優先するかは一概には言えないので、その都度判断していかないといけないのが、難しいところです。


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 15 守りの形を知っておきたい
   A 後で強く打つ為の守り
悪形回避は休みの手ではなくて、大切な手です。一手かけて守るのは、相手からの攻めを回避するだけでなく、自石に不安がなくなれば、他の戦いでも強く戦えるのです。 ここでは、効率の良い守り方を取り上げます。

<右上>
黒1と打てば、一手で黒の根拠が出来、黒3の圧迫や、上辺の白を攻めることも可能になります。 白1と打たれると、先手で根拠を奪われることになるので、黒1は決して逃してはいけないところです。

<右下>
黒5は守りではありますが、気が利かない手で、白は手抜き可能です。

<左下>
黒7と2段バネが手筋です。黒はこのまま手抜きが可能です。 また、場合によっては、黒C7の切りも白にとって脅威となります。

<左上>
黒11が守りの形です。 白16には黒手抜きが可能だし、白手抜きは黒16が大きい手になります。 尚、黒11が無いと、白14のノゾキから白C15と打たれ、先手1眼の状態になってしまいます。
この局面で白1以下白5まで、右辺で後手を引くと、黒6から厳しく攻められて、中央が厚くなり、下辺の白模様が弱体化して、黒からの打ち込みも容易となります。
この局面での最善手は左上の白の形を整える白1です。

白1により、白C11の打ち込み、下辺の打ち込みが生まれてきました。
右辺の白は白S9、白P12等があって、攻められる石ではありません。
 15 守りの形を知っておきたい
   B 一撃して守りの形を選択する手順
相手の受けを見て、着手を決めるという手法はいろいろなケースによく使われます。

守りの形を決める場合にも、次の様な場合には特に有効な手法です。
1.守った後に狙っても、相手にかわされてしまう
2.相手の受け方によっては守りが不要になってしまう


<右上>
単純に押して、白5と打つのは普通の着想です。

<左上>
単に白5とうつのもあります。白14が利かなくなる様な手(ここでは黒6)に対しては、白7と打ちます。

<右下>
白9と打って黒10と受けたら白11、13と押します。右上の形と比較して、白有利になりました。

<左下>
白15に対して黒16とマゲてくることも考えられます。この場合は白17、白19と打ちます。黒は黒20と打ちますので、少し、白は左辺で損をしたことになりますが、白は下辺へのヒラキが省略出来たことに満足します。
左辺の白は黒D9の出切りがあるので、このまま中央へ逃げることが出来ません。かといって、直接ここをつながっていると、黒G11に先着され、攻められている間に、右上に黒模様ができる可能性があります。

そこで、白1とツケてみます。白1の石があると、黒の出切りはシチョウで取られますので、ありません。また、このツケを放置すると、左辺の黒地が減り、白に根拠が出来ます。

黒2の受けに対しては白3とアテコミます。黒4とシチョウに取れば、黒D9の出切りはありませんので、白5とトビます。

白1、3により、白は一歩早く脱出が可能になりました。


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 16 「利かし」と「味消し」は紙一重
   A 一方を利かせば他方の利かしが消える
キカシ(利かし)は

1.殆どの場合、「外側から先手で内側に受けさせる手」を意味します。
2.利かした後は、軽い石なので、利かした石を取りに来たら、捨てても良いのです。
3.キカシが1種類でない場合には、一方を利かしたら、他の利かしを放棄したことになります。

利かし方が不適切な場合は味消しと言います。味消しにならないように、時期、方法の選択が難しいのです。
<右上>
黒1が定石です。これに対して、白は
1.手抜き
2.白2と打つ
3.白3と打つ
の3種類の手があります。

<右上>
白2は右上隅に黒を限定しようという手です。黒5で白は手を抜きます。
もし、黒7と切って来たら、白8から14まで利かして、また手を抜きます。
黒5までで、黒地は約15目です。上辺への影響力も保持しており、黒が1子多い状態では、双方良い加減の分かれということで定石になっています。

また、白14までの黒地は約30目です。つまり黒7のキリによる地の増加は約15目となります。ここでも、黒石が1子多いので、15目の黒地増加は黒が得をしたことにはなりません。黒7で増えた地は活きている石の周りなので、その価値はヨセ15目と同じことになります。ヨセの初期段階で15目のヨセはめずらしいことではありません。つまり、黒7は殆どの場合良い手とは言えないことになります。

<右下>
白16のハネダシは白24で生きを図れば生きますが、生きる手は20目強となります。この場合、黒23で上下の黒はつながっており、強い石になっていますので、右下を白が活きても、後手生きなので、これもワセと同じ価値となります。放置していてもコウになるので、ここを生きる(黒からは殺す)ての優先順位は中盤の段階では、かなり低いことになります。

<左下>
この定石の成立手順は白32から黒37です。
この局面で、下辺の白、黒が弱い石なので、先着した方が有利ですが、白先でどう打つか。

白1と弱い石から持っていくことが考えられます。
黒6までは白が一種の利かしを打ったと考えられます。
白1から打つことも考えられます。黒6で、今度は黒が作戦を考える番です。

左図と上図、現段階ではどちらが良いか結論は出ません。 上図は下辺の白が厚く、左図は左辺の白模様が大きくなっています。

利かしは利かし自体に価値があるのではなく、利かした石の後の打ち方が大切だということです。後の打ち方が悪ければ、利かし自体の手も悪手になります。
 16 「利かし」と「味消し」は紙一重
   B 利かしすぎては反動が怖い
利かしの特色
1.先手なので、主導権を握っている気がして気分が良い手
2.相手を固める手で、相手を強くする為、自石の弱点を衝かれると対応が難しい。
3.利かしの最善の時期は、周辺の戦いで働きそうな時です。
但し、時期を失すると手を抜かれ利かしが悪手になります。
4.当たりなどの厳しい利かしは手を抜かれることは少ないので、働きそうな時期の直前でも利くことが多い。

<右上>
黒1のハサミに白2と飛ぶご存知の定石です。
白6を手抜きすると黒N16のノゾキから黒N17の押さえが厳しいので、手抜きは出来ません。

<右下>
定石後の黒からの利かしは黒7から黒9のツケです。白12の段階で、黒13の利かしと黒Q7の利かしがあり、いずれかを選択します。
時期があまり早すぎると、黒N6、黒S3の価値が小さくなりますので、配慮が必要です。

<左下>
黒15での三々受けに代えて、黒15から17と打つことも考えられます。この場合、白は黒が打たなかった白18を打ちます。
この結果は黒は下辺で得をしていますが、左下は白が得をしました。
黒19で黒C4なら白は白19とハネツギを打ちます。

<左上>
黒25でトビもあります。この形は白が完全に活き形で、
1.黒B17も価値が小さく
2.左辺の黒の形も白C10、白E13などがあり、薄い
ので、黒良いとは言えません。
白1の出に黒2と反発しました。黒4、6と気持ちの良いアテを打てましたが、白3に石が来たので、白9の切り以下白11のツケコシから下辺を破られることになりました。

もし、黒2と白3の交換が無ければ、黒14では黒15が成立し、何事も無かったのです。
尚、黒にはO7のツギからの攻めは、白O5の利きがあって消えています。


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 17 捨石か取られ石か
   A 取られを防ぐフリカワリ
石を取られても、代償を得れば、不利にはなりません。

代償を得る方法は
1.フリカワリをする
2.コウで粘る
3.シメツケる
等、色々の代償があります。
うっかり取られてしまうケースでは、代償は取りにくいので、なるべく早く状況判断をして、代償を取る方法を捜すことです。

<右上>
白1に対して、白の意図通りに進めば、コウにするのがせい一杯で、白13のソバコウがあって、このフリカワリは白有利となります。
白1の段階で、白15まで読めれば(ここまで正確に読めなくても、白5までで、黒辛そうな感じが分かれば)、黒2で別の手を捜すことになります。

<左下>
白17に対して、黒18がフリカワリを選択したことになります。
白19で左辺を受けていては黒19と押さえられて白不利になるので、勢い白21までの見事なフリカワリになりました。
この局面は黒O5のキリ、黒J8のハネダシなど白は薄い形をしています。そこで、白1と様子を見ました。 白1の様子見の利かしに対して、黒は黒2を利かして、少しでも白1に対する受けを緩和しようとしました。
これが発端で、大フリカワリとなり、以下黒10まで、黒は左辺で大きな利を得ましたが、白11と利かし、白13と黒を攻める展開になりました。

白は、下辺の黒2子を取ることにより、攻められる立場から、いっぺんに攻める立場になったのですから、下辺の黒2子は黒にとって、捨石ではなく、取られた石ということになります。
白1に対して、黒はどう受ければ良かったのか。

黒2以下黒8までで、何事もありませんでした。
白3で白F7と打てば、黒7でこれも何事もありません。
 17 捨石か取られ石か
   B 利きが多ければ捨石になる
「捨石」という技法があります。

<右上>
二間高バサミ定石に梶原武雄九段考案の捨石定石です。
白は上辺、右辺の両方を打ち、場合によっては白P14と封鎖することも出来ます。
黒の実利は15目程度。黒が1子多く、約15目の地は白の外勢で十分引き合います。
白16、18のツキダシと白20のアテが利いて白不満はありません。

<左下>
尚、白23を打たないで白22は、黒23が成立します。白3子をシチョウで取られては、白22のツキダシが成立しません。
取らせる石が大きくても、それ以上の利を得られるなら、立派な捨石です。

白1と打って黒8まで、取らせました。黒はこの白を取ることになって、下辺に16目の黒地が出来ました。白は白K5 と切る味があり、この近辺で戦いが起こると、これらの味が働くかもしれません。

左辺の黒に眼形を得ようとする手を白が打った結果、白25のツケで、中央から上辺に白地が見込める状況になりました。


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 18 見合いは手筋の基本
   A 本当に見合いかどうか
見合いは序盤、中盤、終盤のどの時点でも使えて、
一番の好点を打って、2番と3番の好点のどちらかを打とうとする手法です。
しかし、本当に、見合いかどうかの確認が必要な場合があります。

<右上>
白1は白3と白R16を見合いにしています。
黒2は黒3と黒4を見合いにしています。
黒4で、一段落です。

<右下>
黒6は黒N3と黒Q5が見合いのつもりで打たれました。但し、白7と黒Q5を防がれた時に、黒N3の切りで良いかヨミが必要です。

<左下>
白9は白F3のキリと白11を見合いにした手です。
この場合には、本当に白11が成立するのかのヨミの裏づけが必要です。

<左上>
上辺の配置では、白13は成立しにくいと言えます。この場合は白の苦しい戦いになってしまいます。
黒1は黒2と黒3を見合いにしました。

結局黒3は打てたのですが白2を打たれた損だけが残った様です。これは見合いの起点の誤りと言えるようです。
見合いの起点を黒1としたら同でしょうか。
この場合は白2と守り、黒3と攻めることが出来ます。

もし、白2で白3と守った場合は、黒3で一子を切り取り、白O5なら、黒L2から黒N1、または黒O1の置きで眼形がありません。
 18 見合いは手筋の基本
   B 質が異なる見合いが多い
全ての着手は見合いの要素を持っていますが、質が異なる見合いの場合は、見合いと感じにくいので意識しないこととなります。

同質同量の見合いはめったに無く、考えにくいけれども、常に2つの目的を持つ様に心がけることは出来るでしょう。

<右上>
白1  上辺にヒラク手、三々に入る手が見合い。
黒2  白をハサム手、隅を地にする手が見合い。
白3  上辺にヒラク手、三々に入る手が見合い。


<左下>
この段階で、黒が手を抜くことがあります。
それは、黒C4と黒C9が見合いという認識があるからです。
<右辺>
黒1  黒3と黒S7を見合いにしています。
白2  右下の隅への狙いと、白4の模様形成を見合い。
黒3  隅の狙いを消す。
白4  模様形成
黒5  白の攻めを回避


<左辺>
黒9と守った場合の白の狙いを示します。
白10のツケが良い手で、白16で手になっています。
黒13で黒14と打てば白C18で無条件生きです。

中央の模様拡大と、隅の手と、見合いの内容は全く異なります。しかし、それでも、見合いの感覚で打てるし、その大きさが全局的に同じくらいなら、見合いとなります。


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 19 石の急所を覚えよう
   A 急所の一撃は攻めの起点
攻めの急所は守りの急所とほぼ一致します。
相手が守る前に、相手が打ちたいところに一撃をすることを「形を崩す」と言います。
相手は守りのポイントを打てなくなるのですから、形が崩れ、眼形が乏しくなります。そういう形は攻めの目標になります。

<右上>
黒1と2目の頭を叩きます。白2に対して黒3とこれも急所で、白は、また4と後退します。

<右下>
白の形の急所は黒5で、白8と形を崩し、黒9と整形します。

<左下>
黒11、13と攻めます。白12のヘボコスミの形に満足して、黒15と整形します。

<左上>
白16と黒17の愚形を強います。その後シチョウ有利であれば、白18のハネダシが厳しい手となります。
黒1は中央の弱い石を放置し、相手の地を減らそうとした手です。これに対して、白2と白石の「耳」と呼ばれる急所に打ちました。
黒は、尚も、相手の地を減らしながら守ろうとしたため、白2、6の石が打たれ、白12となり
1.取られている右上の2子の活用しながら、
2.右辺の地模様化
3.中央の黒の攻め
を見て、白優勢になりました。白の手厚い、ゆっくりとした攻めが参考になります。
 19 石の急所を覚えよう
   B 急所に来たら戦わない
守る機会がなくて、急所を打たれた時は、戦いは苦しいものになると予想されるので、戦いを回避する道を探します。 フリカワリ、捨石を狙います。

<右上>
黒1には、白2と打てば良い場合が多々あるはずです。
黒1自体、一路低いL17が最善ということもありますので、黒も黒1の時点で検討が必要でしょう。

<右下>
白P6と打つ前に黒3と打たれました。この場合は白4、6のサバキを考えます。白3子を捨てることを検討に入れれば、色々な対策が浮かんでくる筈です。

<左下>
白8のキリを打たれた場合は黒9が有力な対策です。
黒2子を捨てても、中央が厚くなれば、損にはなりません。

<左上>
黒15に対しては、強い石にくっついている2子を捨てれば、簡単にサバケます。
尚、黒15では黒20がより厳しい攻めでした。
白1が黒の急所に迫った、厳しい手です。
黒3子を助けようとすれば、全体が攻められて苦しい戦いになります。
黒4と捨てて打ちます。白は白5と打って黒を取りますが、黒10、12を利かして、黒14と打てば黒十分な成果です。