序中盤における手の大きさ

     出入り計算で表すと相場は何目か?
今まで、漠然と序中盤における手の大きさは後手ヨセに換算すると25目程度だと思っていました。このことと、互先におけるコミが5.5目、或は6.5目との関連が、明確には、理解出来ていませんでしたが、やっと分かりました。
きっかけは、誠文堂新光社発行「目数小事典」(49ページ)です。
くやしい。なんで、気がつかなかったのだろう、脳味噌が硬直化してます。王銘エン九段の1手の価値の話が理解出来ていれば、簡単なことなのに・・・。

そこには下記の様な内容が書かれていました。そのまま表現すると、この本独自の言葉の説明をしないといけないので、王銘エン九段の言葉に置き換えて書き直してみます。
初手の隅や辺に打つ(星、小目等)手の価値について
  出入り計算による価値=26目
  1手の価値       =13目

これに、6.5目のコミを加えて考えると次の様になります。
  1.序盤(中盤でも似たようなものだと思ってますが)での手の価値は出入り計算の価値で表現すると26目です。
  2.出入り計算の価値で表現して26目ということは、1手の価値で言うと13目となります。
  3.そして、互先におけるコミはこの13目の50%になります。
    50%の理由は1手目を黒が打った直後は黒だけが13目の手を打ったことになりますが、
    2手目に白が打つとそれぞれ13目の手を打ったことになり、同等なわけで、平均を取って6.5目とする訳です。
逆に言えば、コミ6.5目が妥当だとすれば、序盤での1手は出入り計算上26目ということになります。

ここから、初中級者へのアドバイスです。
序中盤で、石の強さに影響のない、いわゆるヨセの価値しか無い手を打つに当たっては、出入り計算の評価で20目(25目より小さいという意味)程度の手は必ずしも大きい手ではない。
ということになります。

序中盤の定石後の手の大きさ  具体例

具体例1  小目に対する一間高ガカリ定石

<左上>
黒1の小目に対して、白2と一間にカカリ、黒がケイマに挟んで、白4とコスムの少し古い定石があります。以下、白8のノビを打って、場合によの、白10、12と利かせるのが定石となっています。

ここで、
<右下>
黒15(一般的には悪手)と切って来た時に、
1.白はどうするか?
2.その白の手で黒15の手の大きさは何目か?
というと、
  1.白は利かした黒石を白16とアテて、捨てます。
  2.黒15と切ることにより、黒地がどれだけ増えるかというと、
   黒15〜黒23により、黒地が13目増えています。
   つまり、後手13目、1手の価値としては6.5目になっており、
   中盤の段階では決して、大きい手とは言えません。
   大きく見えるのは、もともと15目程度あったからで、黒15
   により増加した地は13目程度なのです。
   従って、先手を得た白が1手の価値6.5目以上の手を打てば、
   白有利ということです。つまり、1手の価値が6.5目以上の手
   が無くなった段階で黒15を切ったり、白15のツギを打ったり
   するのが妥当な着手ということになります。


<左下 定石の補足説明>
左上の白10は保留して、白24とハネダシを打つことも出来ます。 この場合は無条件ではなく、コウ生きですが、白がコウに勝てば、7目の地が出来、黒地が殆ど無くなります。黒地減が仮に20目とすれば、コウの価値は27目です。1手の価値としては9目ですから、ここを序盤でコウ生きを目指すのは良い手とは言えないことになり、中盤以降に手を着けるのが妥当です。

変化を1手ずつ追いたい場合は |< で戻してください。
具体例2  星から三々への打ち込み防止のサガリ

右上の黒1と左下の白2との差が  後手24目(1手の価値12目)です。 従って、中盤の初期に黒1や白2を打っても、まずまずの手と言えます。 但し、 1.黒1については、黒1が表門だとすれば、白R12と裏門からの進入が容易な局面では、後手24目までの価値がないということになりますので、黒1の着手時期については、難しいところがあります。 2.白2については、いつも黒がこの様な受けをするとは限らず、一般的には、黒3で、黒4と打って、下辺の白2子との連絡を拒否することが多いので、むやみに三々に入ると全局的に薄くなることがあるので注意が必要です。
具体例3  ツケノビ定石

<左上>
定石手順を示します。
手順中、黒10で、黒12を先にすると、後の黒10に手抜きされる可能性が出てきます。

右上の黒14と右下の白19で出入り22目です。

黒14や白19が地だけの問題であれば、序盤で打つと全局的に遅れることになる可能性が高いので、中盤の後半、又は大ヨセの最初の段階で打つのが良いタイミングです。

尚、白の先手を防ぐために、黒30から打つのが手筋です。
具体例4  星の石へのコゲイマガカリから、ケイマスベリ後の定石形

黒1と白2の差は 出入り17目(1手の価値8.5目) です。
これらの手は、根拠に関連している場合は、中盤で打つ可能性が高いのですが、お互いに、根拠がある場合は、大ヨセになってから打つのが妥当です。

想定図により考える

仮に、この想定図で、あなたが白番だと、どこに打ちますか?

左下は白6子と黒6子の攻め合いで、相手の石を取る手の価値は出入り計算で24目です。わかり易くするために、1手で相手の6子を取れる形にしてあります。また、6子の石を取った場合、取らない場合いずれの場合でも左下の石はそれぞれ完全に生きている為、取る手は純粋にヨセの手になっています。
出入り計算で24目とは、黒が白の6子を後手で取った場合は12目の黒地が 出来、白が取った場合は12目の白地が出来るので、黒が左下を先着した場合と、白が先着した場合で24目の差が出来ますが、この場合、それぞれ6子を取る手を、「出入り計算で24目の手」であると言います。

白の正しい手は白1等、左下の黒を取る手ではなく隅の石にカカル手や辺に展開する手です。
つまり、例図の3手で説明しますと、
白1 26目の価値の手
黒2 24目の手
白3 26目の価値の手
ということになります。
smile_aceの感覚的としては、この段階で相手の6子を取る手を打ちたいとは全く思いません。

尚、実戦では、序中盤で相手の石を取ることは、地だけの問題ではなく、石の強弱が関連してきますので、少数の石を取る手が、ヨセとしては小さくても、価値の高い手である可能性が高いのです。