取ろう取ろうは取られのもと

「取ろう取ろうは取られのもと」という格言は、本気で相手の石を取りに行った場合に、自分の石の欠陥に注意を払わなかった結果、自分の石が死んでしまうケースを戒めたものです。

類似の格言に
1.敵を攻める前に己を顧みよ
2.取るよ取るよと脅かすそぶり
3.生きよ生きよは名人芸
などがあります。

「大石死せず」という格言もあります。大石は色々な味があることが多く、なかなか死なないというところからの格言ですが、それと「取ろう取ろうは取られのもと」は関連するものがある様です。
つまり、
大石には味が色々あって、なかなか死なないもので、それを自分の石の弱点も顧みないで取りにいくと、自分の石が死ぬことになる。
だから、本気では取りに行かずに、どうぞ生きてと相手を小さく生かして、攻めの得を取るという手法が最善だということになります。

勿論、取らないと負けという場合には、本気で取りに行くべきです。それは、プロの世界でも起こることです。

大きく攻めよ

<右辺>
黒1は初級者の犯す働きの無い手です。白の一子を取って、黒まずまずと感じるのでしょうが、白2、4、白6、8が先手なので、将来こうなる可能性が高いのです。
この図は
1.黒地11目 使用の石の数=9 勢力の比較は黒が良し
2.白地11目 使用の石の数=8 11目が実現する可能性白高し
ですから、黒が割りに合わない分かれといえると思います。
黒1は「厚みを地にするな」という格言にも反しています。

<左辺>
黒11が「厚みを地にするな」という格言に沿った手です。
白12に対しては、黒13、白14に対しては黒15、17と打って、左辺で生かす方針を取ります。
白は、白18という辛い手(左上の黒地が減ります。兄弟喧嘩です。)を打って生きます。
白21が打てて、上辺が黒の勢力下になれば、大成功です。

封鎖許すべからず、碁は封鎖にあり

<封鎖された場合に発生する制約事項>
囲まれると、その囲みを破らない限り、活きる必要が出来ます。
つまり、相手を封鎖すると、封鎖された方は、囲んでいる石を食い破るか、生きるか、いずれかを実現しなければ、石が死にます。
だから、封鎖する側の石が食い破られないのであれば、封鎖された方は生きる手を打つということになります。つまり、封鎖する手は先手になる可能性が極めて高いのです。 先手で封鎖出来れば、その裏側の模様を活用することが比較的容易に出来ます。


黒1と右上に固執しすぎた手が白2の封鎖を許しました。
多分、黒は白2と打たれても生きがあるのだから、左上でもっと得をしようという考え方だと思いますが、これは大きな考え違いです。
黒は、黒9以下、白を厚くする手を3手も打たないといけないので、右上での得は帳消しになり、7子の置碁のハンディはかなりのところまで減少してしまっています。

黒のマイナスの手は
1.黒9  2.黒13  3.黒15
で全て白の強化をしています。それで黒の地は、黒15の石も取られる可能性が高く、4目以下になるわけです。

尚、smile_aceも意識的に、1度だけ、この封鎖をさせて打ったことがありました。「封鎖許すべからず」の格言を無視していたのです。黒9、13、15のような手を打たせることのデメリットが分かっていなかったのです。4級くらいの時だったのでしょうか?
黒1、3の封鎖は、それ自体、地が増える手ではないので、効果がなかなか認識出来ないものです。

特に、置碁だと、どう打っても黒が有利に見えるものなので、封鎖の効果は分かりにくいものです。

黒1は左上の黒7子もあまり強くないので、黒D10の石と同時に強化出来るという意味がります。黒1で、下辺から動く黒C11だと、黒7子が攻められる状況になる可能性が高くなります。

経験を積んで、つまり、白1を許して左上の黒7子を攻められたり、取られたりして理解していくのも意義があるかも知れませんが、素直に、封鎖の効果を認識出来れば、上達が速いのではないかと思います。

smile_aceはどっちのタイプだったかというと、後者であったように思っています。 封鎖をすると自然と厚みが出来ますので、模様の碁になり、自分の石が死ぬ可能性も少ないと思います。
右上に大きな地を作られました。黒はその代償をどこに求めるかです。

黒1が碁は封鎖にありの格言を実行する一手です。白2に対してはあくまでも、黒3と封鎖を図ります。
この様に封鎖をすると、白は活きなければなりませんが、その生きる手が黒1の石などを強くする手になってしまうので、黒は左下に大きな勢力が出来ます。それが黒の狙いなのです。

仮に白4で、現在は「黒先生き」であっても、将来黒1他の石が強くなった場合に死となる可能性があって、下辺の黒は「見た目以上の厚み」があるということが言えます。

攻めは分断にあり

黒1 上下の白を分断して攻めようとする好手
黒3 右下の白と、白2を分断しようとする好手
黒5 白2と白4を分断しようとする好手

です。この様に碁は地を囲う手より、分断して攻める手の方が、良い手が多いものです。

地を囲おうとすると邪魔をするのは易しいのですが、攻めを続けていると、自然に地が出来るチャンスが出来るものです。攻められていると、死なない様にしないといけないので、地を囲う邪魔をする手が自由に打てないからです。だから、切断をして、攻めを可能にし、攻めながら地を作るのです。

分断からの攻めは、相手の地を減らすのにも利用できます。つまり、相手の地模様があっても、別の石を攻めることによって、その地模様を壊せる着手を打つことが出来れば、模様を荒らすことが出来ます。

広い方から押さえよ

この格言は、星の石への三々の打ち込みに対して押さえる方向を示す格言になっています。

この局面で白1と三々に打って来た場合は、黒2と広い方から押さえるのが良い手です。
黒4の急所(打たないとここに打たれて、黒は二目の頭を叩かれることになる)を打って黒6と良い形になります。

この形では、左下に白石があり、黒3と押さえて黒の勢力を作っても、白J3が出来た黒の勢力を消す働きをすることになるので、黒2とこちらから押さえるのが良い手となります。

下辺の形は、白J3と白9が低く白は不十分ですが、黒は黒10と打ち、のびのびとした良い形です。

カス石は捨てよ

碁石にカス石と書いてあれば、捨てることを考えるかも知れませんが、碁石には何も書いてありません。カス石かどうかは、対局者が判断しなければなりません。

<右辺>
右上と右下は同じ形です。今、白が切ってきました。

問題
右上は2線を這って黒2子を生き、右下は3線からあてて、黒2子を捨てました。黒の判断として、どちらが正しい判断でしょうか?
回答
右下の捨てが正しい。
理由
右上は白石は既に生きています。黒11までで、黒2子が生きても、黒地は4目程度増えるだけ、一方白は3線を押して、厚みを作り、黒3子は盤上にあるだけで、無視されるほどの弱石になってしまいました。
右下は黒2子をカス石と見て、捨てて黒17までと構えました。白14、16で2子を取ったのですが、それで増えた地は白5目程度です。黒が働きました。

<左辺>
左下はどうでしょう。黒が左下の白との攻め合いに勝つ為の最低限、2線を這って白を取りました。
左上は、黒は這わずに捨てて打ちました。
右辺と逆の結論となります。つまり、左下が正しい変化です。

ただし、右辺の結論ははっきりしていますが、左辺は碁形によっては捨てた方が良い場合があるかもしれません。

分からない時は手を抜け

接触戦前の中盤の入り口あたりの局面で、進め方が分からない時は、ひとまず手を抜いて、自分なりに見当がつくところを打つのが良い場合があるものです。
最初に分からない局面でも、周囲の状況が変わったりして、判り易い局面になることも考えられます。

4子局で白1と打たれて、黒はどう打っていいものか分からなかったとのことでした。実戦は黒2から黒ひどい目にあっています。
正解はどこでしょうか?

正解は白1に対しての着手ではない、つまり、手抜きして、黒L3 あたりの様です。

つまり、厚みを地にしようとするのではなく、黒N2のケイマを見せて白のヒラキを制限しながら、ヒラクという手の方が、厚みを地にしようとする黒2より良い手だということです。

兄弟喧嘩は身の破滅

兄弟喧嘩とは財産を取り合いした場合の喧嘩のことを指します。 二人仲良く力をあわせて財産を有効活用すれば、両方とも生きていけるのに、一方が一人立ちを目指すと、親からの財産が十分でないために、一方が死なねばならないということになります。

<右下>
この2つの石がつながっていれば、生きるには十分な面積がありますが、つながっていないために、兄貴の方が白1と面積を広げて来ました。
黒はつながらせないように黒2、弟の方も面積が足りなくなるといけないので、白3と広げました。
黒4と連絡拒否すると、白5とまず兄貴が2眼確保しました。
黒6と弟の方の面積を狭めますと、弟はやむなくコウでの生きを意図し、白7と打ってコウ争いになりました。
コウ争いになると、兄貴の方にコウダテが3つほどあるので、やはり、どっちかが死にそうです。

<左上> 同じ形ですが、今度は、弟が兄貴の迷惑にならないように、白11と小さく生きようとしましたが、兄貴は黒12であっさり死んでしまいました。