右の棋譜はある県の囲碁選手権戦の地区予選の棋譜です。新聞に掲載されていましたが、非常に印象に残った横山孝一七段の解説で記憶に残ってました。 黒81に対する、白82が問題にされていました。悪手とされる白82はどこへ打たれた? では、白82はどこへ打つべきだったか? この問いに対する答えが、標記格言にあるのです。 以下は横山七段のこの手に対する評価の抜粋です。 この碁の白の失着はまれなもの。予選の碁では始めてで異例と言っても過言ではない気がする。白の犯した過ちは単なるミスではなくて、考え方の根源にかかわる問題である。碁会所で打つ人の碁で、先は海のものとも、山のものとも分からぬような局面で、露骨な眼取りを急ぐ人が少なくない。レベルが低いからだと聞き流しても、この碁で見ようとは思ってもみなかった。この、意外としか言いようのない一着が自らを自滅に追いやった。 つまり、 「D7の白1は手の価値としては3目の手だから、この時期に打っていたら、一手パスになる、だから全局的に手が遅れて、負けたのだ」ということです。格言との関連でいうと、白1< 黒2により、眼作りより中央志向をわざわざ相手に実現させてしまったのです。 では、白1はどこが、正着か? 新聞にはそこまで載ってませんでした。 推定するに、 1.O13 遠く、左辺の黒を睨みながら、白の右辺を豊かにする手 2.L15 同様に、左辺の黒を睨みながら、中央を豊かにする手 こんな実質のある手を打っておいて、黒がひびって、D7などへ打ったら、白はもう一手、連打して、右辺や中央をより豊かにする。つまり、この時期に黒がD7の3目の手を打ってくれるのは白としては有難い。 |
<眼作り専心の黒の棋譜例> 白を攻めるという発想に乏しい。なかなか強くなれないタイプです。 |
<中央志向の黒の棋譜例> 中央への一間飛びが素晴らしい。黒13をK8などに打たず、白を攻める意欲十分 |
「眼作りより中央志向」という格言とほぼ同じ内容を意味しているのがこの格言です。中央に向かって一間に飛ぶ手に悪手がないと言っている訳です。 下の棋譜での黒1から、黒5黒7と中央に向かって一間に飛びました。この段階で、黒はK8とM12を見合いにしています。 |