定石の手抜き、許すべからず

<右上>
白が星の石にカカって、黒が一間に受けたところで白が手抜きしました。
定石はケイマに飛ぶか三々に入るなどですが、定石外れの手抜きには、黒1、3と厳しく攻めます。

<右下>
黒がコゲイマに受けた場合での手抜きは定石外れではありません。 攻めの体勢が一間より穏やかな形なので白8などと打ちます。

<左下>
白がケイマにすべって黒が三々に受けた形では、白10等と守るのが定石です。
何故ならば、白がすべって、黒が三々に受けた後では、それまであった、白のサバキが無くなっているからです。それまでなら、白は挟まれた時には三々に打ったり、星の石にツケたり、色々なさばきがありました。

<左上>
白が手抜きした場合は断固挟んで、白を攻め、攻めの利得を図ります。
<右上>
黒1に白2とノビた時に、定石は一間トビ(又はコゲイマ)なのですが、黒3と定石外れにハサミを打って来た場合は、黒が打たなかった方面を打って、定石外れを咎めます。
以下、白は黒の封鎖に成功しました。

<右下>
白22から白24の二段バネもあります。
手筋の黒25、27に対しては、後に白28からのキリからのシボリがあります。白38が下辺の星の石に対するプレッシャーになることも考えられます。

<左下>
黒47のカタツギに対しては、白がシチョウが良い場合は白48と押さえ、後に、白52の味を見ることも出来ます。
シチョウが悪い場合は、白48で白50と打ちます。

<左上>
白54のカカリだけでなく、白F17のカカリなども有力です。

模様の接点逃がすべからず

黒1が彼我の模様の接点です。
白の上辺の盛り上がりを防ぎながら、黒模様を盛り上げる手で、盤上この一手です。
黒が左辺のワリウチを打ちました。
白から打つ場合は白2のマゲが良い手です。
左辺のワリウチは模様の接点を逃し、不十分な形勢になりました。

数年前にNHK杯で小林泉美プロ(先番)が武宮正樹プロに挑戦した一局

白は1、3、5と上辺を盛り上げて理想形になりました。
白3、白5が模様の接点です。
某プロが実戦は黒不満だとして、示した変化図です。この変化図だと黒1と打って、白2と受けさせ、黒3とこちらの模様の接点も黒が打つことになります。

smile_aceの意見としては「お恐れながら、この図が黒が良いのなら、白2で左下の模様の接点を打ちそうなものです。」と言いたくなります。

左上の三々が開いているのだから、白F17の石のサバキは大丈夫そうです。
でも、上辺薄くなって良くないという読みが入っているのでしょうね。恐れ入りました。

走りたい方の反対を這え

この格言は三々の石に対してカタツキをする場合のポイントを説明したものです。辺の石が関係しますので、説明順序が順番ではありませんがご容赦の程。

<左下>
黒1に対して、白はどう考えるべきか?
左辺に黒石があり、下辺に白石がある状況なので、下辺の白石を黒1の攻めに使い、左辺の黒石を働きの低い手にしようとすると、白2は自分の石のある方向へ這う(黒石を攻める気持ちだと、這うというよりは押すという感じです)のが正しい方向です。
黒5は打たないかも知れませんが、打ったとすると、
1.黒3子は白K3の石によりハサまれて窮屈です。
2.黒C10の石は白4によりボケた感じになった。

<右上>
黒7と相手の石のある方へ這うと、白10まで白は良い形にまとまった。一方黒は黒9の石と黒R10の石の関係が今ひとつ。但し、黒Q14 と打つことが出来れば、形が良くなります。

<左上>
白に選択を許すカタツキD16は打たずに、黒11と打ったり、

<右下>
固く打ちたい場合は、白14、16と打ちます。

相手の進出、ボウシで止めよ

相手の進出のスピードを止める場合にボウシは大きな効果があります。「芯を止める」という表現を使うこともあります。

黒1がそのボウシです。白にこの地点を占められると立派な形になりますので、それを妨げることがスピードを止め、芯を止めることになります。以下白2なら黒9まで、黒1の石は軽く見ます。
白2でこちらの方へコスンで来た場合には、黒3、5と打って、黒7のモタレ作戦です。

黒1が史上最強の女流棋士丙廼偉ゼイ・ノイ九段がイー・チャンホ九段を倒した一局の「芯を止めた」一手です。

白が右辺で根拠を作った間に中央の白を攻めながら上辺に黒地を作り、優勢となりました。

石音の反対に打て

碁は大きいところから打つものです。相手が打ったところは、盤面全体から見た場合に、次の大きさでないことが多いので、いつも、相手が打った地域の近くに打つのが良いか、それとは違う地域を打つのか考えるべきです。

4子局で、黒の手番です。
この時点で、
1.上辺では黒M17が黒H17を見て大きい
2.下辺で3連星の黒1が大きい
3.左辺では黒D14を生かす黒C10が大きい
4.右辺では、黒R15とコスミつけ重くして、黒Q10とハサムのも大きい
ということですが、黒M17は他の3手に比較して小さい手です。

この様に、相手の打った手が、その手に受けないと、大きなマイナスが生ずる様な先手の手でない限り、別の方面に存在する大きい手を打った方が得なケースの方が多いのです。
これは、布石、中盤、ヨセ、どの局面にも当てはまる格言です。

捨小就大(小を捨て大に就け)

この格言は、誰でも理解出来ます。
しかし、大小の判断はいろいろな要素を勘案しないと正しい判断が難しいので、このことを着手で表現するのは難しい。

大小の判断の要素の一つに、石を取る価値、取られる価値があります。

黒が左上の石を生きる手の大きさは20目程度です。これは大きいでしょうか?
大きいと黒が判断すると、右の様な変化になります。

余談ですが、この形では、白4と白C6の石は白先で打てば繋がっています。
なぜならば、白A12が左上の黒の石に対して利いているので、白B9で連絡しているのです。
余談と書きましたが、こういう事も、左上を生きることの価値の判断の要素の一つになるかもしれません。
黒が左上を生きて、白の地を20目減らすことより、黒1、3が大きいと判断すれば、右の様になります。

捨小就大の説明に使用の図ですから、20目という数字があっても、左上を生きるのは小さいのだろうと推定する人もいると思いますが、事実、右の図の方が黒は打ちやすいでしょう。
上で書かなかった判断要素に、石の強弱ということがあります。白が黒石を取って強くなったか?ということです。
答えは
1.左上の白 取る前も取った後も生きなので、強さは同じ
2.左下の白 黒が生きた段階では白A12が利いていて、
        左上白と左下の白は白先で連絡が出来たが、
        黒が死んだ段階では連絡出来なくなった
        ということなので、弱くなった

左下の白まで弱くなったというのはこの図は良く出来すぎている図です。仮に、この要素が無くても、左上を取りきる手はこの段階では小さい手なのです。
別の格言に「生きている石の近くは小さい」というのがあります。        

入界緩宜(界に入っては、よろしく緩なるべし)

相手の強いところに入る場合は穏やかに入るのが良いという意味です。

黒1と大きな模様が出来ました。ここでは右上に深く打ち込むということも考えられますが、白のシノギの坂田九段は、白2と穏やかに入って先手で生き、白22の模様の接点を占めました。