NIPPON SERIES 2002
日本シリーズ第3戦(西武ドーム)10月29日(火)
▼今日のMVP

二岡の満塁弾が引き寄せるもの
 今季、花開いた男が、頂上対決で大きな花火を打ち上げた。

 3対1で迎えた4回、西武・先発の張を四球と内野安打で無死一、二塁としてマウンドから降ろし、2番手に上がったシリーズ3連投の三井から江藤が四球を選んで無死満塁とするも2者凡退。「無死満塁は点が入らない」という古いジンクスを思い出すような展開となった。

 ここでバッターボックスには二岡。三井と伊東のバッテリーは、得意のスライダーでやや内角寄りに攻めてくる。カウントは2−2。

 次の球は初めてのストレート。ベルトの手前に入ってくる内角球がはずれた。西武バッテリーにしてみればこれが“決め球”だったのだろう。そしてフルカウント。

 2点差があるこの場面で、西武バッテリーが押し出しを恐れるならボール球はない。そして勝負球はスライダー。そのスライダーが真ん中に入ってきた。「甘いところに来たら思いっきり振ろうと思っていましたよ」という二岡は狙いすましたようにバットを叩きつけ、打球はバックスクリーン左に飛び込む満塁アーチとなった。

 もともと外角低めを右に打つのを得意としていた二岡だが、今年は真ん中から内角寄りの球を引っ張ってスタンドに運ぶシャープなスイングをも身につけた。その結果、自身の得意ゾーンを大きくするとともに、通算で4割0分8厘だった長打率を、今季はリーグ6位の5割2分0厘と飛躍的に伸ばしている。今年、米国で発表されて話題になった「最強打者2番論」ではないが、この二岡が2番打者にいることが相手チームの脅威となっているのだ。

 この日も3安打が出て、シリーズ新記録となる3試合連続の猛打賞と、3日目のこの日が初めてのお立ち台となったことが不思議に思える活躍ぶり。その日を飾った二岡の満塁ホームランは、チームにとって32年ぶり6度目のシリーズ開幕3連勝を決定づけたばかりでなく、球団史上20度目の日本一と、自身のシリーズMVPをも引き寄せようとしている。

読売新聞メディア戦略局編集部 多和田 元