「北海道大学櫻井義秀教授への質問   ルポライター米本和広
−−−『「カルト」を今問い直す』について−−−」

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櫻井北大教授への質問状とその回答を掲載するにあたって

2006年5月30日
ルポライター米本和広

◆私が『現代』(2004年11月号)で書いたルポ<書かれざる『宗教監禁』の恐怖と悲劇>について、北海道大学の櫻井義秀教授(宗教社会学)が『「カルト」を問い直す』(中公新書ラクレ)で批判的に述べている。
 ルポが論評されるのは大いに歓迎する。とりわけ批判的な論評であれば自己の向上につながるという意味でなおさら大歓迎だ。
 しかし、同書で書かれた内容は事実誤認が多いばかりか、恣意的な曲解が目立つし、PTSD(心的外傷後ストレス障害)への無知ぶりにいたっては目を覆うばかりである。

◆私の記事はいたってシンプルである。
 @統一教会信者を白昼堂々と拉致し、マンションの一室に監禁し、監禁下で説得を行っている。
 Aこの「拉致監禁」にはキリスト教会(プロテスタント系)の牧師が密接に関わっている。
 B監禁下での説得に応じて脱会したものの、その後、PTSDに苦しみ、社会復帰ができない人がいる。
 これらのことを、当事者などの証言によって具体的にできるだけリアルに描写しまとめただけである。そうはいっても、内容は衝撃的なものである。読者にとってはにわかには信じ難い話だといっていい。それゆえ、当事者も牧師もすべて実名で書いた。

◆櫻井氏が批判的に論じる場合、ルポの骨格をなす上記の3点について事実かどうかを検証するのが前提条件になるはずだ。だが、実名で書かれているからといっても、櫻井氏が私やルポに登場する当事者(連絡先)を知らなければ、事実を確かめることはできない。そのため、一口に検証といってもきわめて困難な作業になる。
 ところが、櫻井氏は私や当事者をよくご存じなのである。私はある2人の知り合いの3人でカルト学習会を2年間にわたって開いてきたことがあるが、櫻井氏は何回かそこに参加し、ときに研究発表をしたこともある。また、南山大学での社会と宗教をめぐるシンポジウムでは3日間にわたって席を同じくし、話したこともあった。
 一方、当事者とは、著書で明かしているように、櫻井氏は直接会っており、ルポで書かれた内容のことを訴えられている。
 それにもかかわらず、事実について検証することなく、とりわけPTSDにいたっては精神医学の勉強をすることなく、よく理解できない独自のPTSD論(論にはなっていない。強いていえばイメージ)をもとに、独特のレトリックで、2人の当事者のPTSDは拉致監禁が原因ではないような印象を読者に植えつけようとしている。

◆そこで、私は櫻井教授に手紙を書き、質問した。
 以下にアップされているのが、私と櫻井教授との問答である。
 櫻井教授の"誠実な回答書"を読んでいただき、賢明な読者の判断を仰ぎたい。

・「櫻井氏への質問-2006年3月2日」

・「櫻井氏からの回答-2006年3月23日」

・「櫻井氏への再質問-2006年4月30日」

・「櫻井氏からの再回答-2006年5月12日」

 私はホームページをもっておらず、そのため、ルポに登場してもらった拉致監禁の被害者である宿谷麻子さんと高須美佐さんにお願いし、2人のホームページに掲載していただくことになった。  お二人のご好意に感謝する次第です。

 なお、二度目の質問に対する櫻井氏の回答については、大いなる疑義があるが、三たび質問しても認識が深まるようなことはないと思われる。それゆえ、最後に項を改め、2度目の回答へのコメントを含め総括的な感想を述べておく。

・「櫻井氏とのやりとりを終えて-2006年5月30日


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