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今利さんの裁判の和解に対する感想


・「和解調書の事実と意義」

 今利さんの起こした裁判で和解が成立したことは、とても画期的なことだと思います。これらの事柄には、とても意義があります。今後の拉致監禁の問題に対して、人権を重視し、拉致監禁を行ってはならないと最高裁が判断を示したからです。

1. これまで、統一協会は社会的に「宗教団体」と見なされていませんでした。この為、統一協会に属する信者は、両親や牧師によって、統一協会からの救出と言う大義名分のもと、実質上「拉致監禁」による被害を被り、非人間的扱いをされてきました。
 しかし「相手方の信仰の自由や価値観を尊重し、これに干渉しない。」という調書の一文によって、統一協会は「宗教団体」として捉えられました。またこの和解調書の文面により、統一協会信者は信仰の自由を尊重されるべき、一個の人権のある人間として認められたわけです。言葉を換えて言えば、これまで両親や牧師側が、統一協会信者を尊厳ある人間としての扱いをしてこなかったのは間違いだった、と判断したわけです。そして、そのことを今利さんの両親や親戚は認め、署名・捺印したのです。
 私が思うに、統一協会が「宗教団体」であることを認めず、社会的に批判の多い統一協会員だからと言う理由で、その信者を「拉致監禁」することは、その信者の人権を奪う犯罪です。このことが、今回の和解調書によって正しく認識されたことになります。

2. 「二度と…拘束するようなことはしない」と相手方に説示したことも、意義深いことです。この調書にあるとおり、牧師の主張する「親子の話し合い」とは、実は「問題の行為」なのであり、具体的には今利さんたちが主張してきたように「拉致監禁」であることを、最高裁が認めたわけです。このように、宗教的人権侵害に対してアメリカやヨーロッパ諸国より遥かに遅れた、日本国家の最高裁判事が認めたことは、とても画期的であると思います。

3. 「二度と…干渉をしない」という言葉を裁判所が説示したことは、これまで今利さんの信仰の自由や価値観に両親や牧師たちが干渉してきた、という裏づけとなります。「拉致監禁」という言葉は調書には盛り込まれませんでした。しかし「二度と…干渉をしない」という書面によって、両親は今利さんに対し、今後「拉致監禁」行為を行えなくなりました。
 これは、今利さんが訴えてきた「拉致監禁をしないでくれ」という訴えが認められたとも言えるものだと思います。

4. 高塚さんの三女が利害関係人として最高裁で初めて加わったことにも意義があります。
 黒鳥牧師は、講演録で両親が三女と数年も連絡が取れないなどと、親の悲しみを強調して書いています。この裁判で牧師と今利さんの両親は、口裏を合わせて、拉致監禁などはなく、親子の話し合いをしていたと主張しました。その為に統一協会の現役信者である高塚さんの三女は「自分も親子の話し合いという名の監禁下での説得のために拉致されるかもしれない」と新たな拉致監禁の被害者になる事への不安と恐怖を持ったのです。
 両親や親族は高塚さんの三女に対しても、信仰の自由は尊重すると和解しました。高塚さんの三女は調書に住所もきちんと書いています。これにより、高塚さんの三女は、信仰の自由と、人間としての尊厳が守られる事になり、今まで心にわだかまっていた、とてつもない不安や恐怖から、解き放たれることになります。今回の和解調書は、個人の尊厳を守る意味を含ませた事で、高塚さん三女の不安の解放に繋がりました。これは、とても大きな成果だと思います。
 拉致監禁の恐怖があるからこそ、統一協会員が両親と連絡を取らなくなり、家にも帰らなくなるのです。拉致監禁が無くなれば、統一協会員も両親のもとに安心して帰れます。統一協会員が家に帰れない、両親と連絡を取らないという原因は、統一協会の教えにあるからではなく、拉致監禁にあるのです。


・「牧師の問題点」

1. 今利さん親子が和解したにも拘らず、牧師側は今回の和解を蹴りました。今利さんは、統一協会から救い出すと言う大義名分の下に、拉致監禁という被害を受けました。この事によって、今利さんは人間としての尊厳を踏みにじられ、心に大きな傷を受けました。牧師として、今利さんの心の傷、心の叫び、を聞こうとしないのは何故でしょうか。私は疑問に思います。今利さんが心の内で、「人権侵害は嫌だ、拉致監禁は嫌だ」と叫んでいるにも拘らず、牧師側は耳を傾けようとしません。人権を侵された者の心の叫びを聞く事が牧師としての役割ではないでしょうか。これは、牧師として許されざるべき行為であり、牧師としての役割に背く行為ではないでしょうか。
 このことを、私は2006年3月6日付で牧師の黒鳥栄氏に質問しました。しかし、今日に至るまで誠実で内容のある回答は返ってきません。

2. 牧師側は、統一協会が社会的に批判の多いことを理由に、統一協会からの救出を「正義の御旗」にしています。牧師側は、自らの行為を「正義」のように主張しますが、「救出と言う名の拉致監禁」が、「問題の行為」であると今回、裁判所から通達を受けたのです。従って、例え脱会説得を試みるのが「社会的正義」に見えても、「拉致監禁下での説得」が「正義」である事とは別物なのです。その『違い』を、牧師側は理解すべきではないでしょうか。

3. ところで、黒鳥氏など牧師側は最高裁の和解勧告を拒否したことから、今利さんの上告の牧師の部分は棄却となり、東京高裁の判決が確定しました。つまり、牧師側の勝訴が確定したわけです。これにより、牧師側は大喜びしています。
 しかし、今利さんの両親や親族は「親子の話し合いではなく問題行為」であったことを認めています。実際、黒鳥氏が法廷で証言した調書には多くの嘘があります。それにも拘わらず、牧師だけが法廷で嘘をつきまくったことを忘れ(両親が和解にサインしたのは地裁、高裁で嘘の証言をしていたことを認めたことを意味する)、棄却判決に喜んでいます。黒鳥牧師の精神は、神云々という以前に、人間としての精神が貧困だと思います。
 神は、牧師が自分の身を守るために嘘をつくことをどう見ているのだろうか、と思います。


・「今利さんの家庭の修復へ」

 これから円満な親子関係及び親族関係を築くことができるように互いに努力することが、調書に盛り込まれております。調書では被害・加害の立場については明言を避けていますが、今後、今利さんの両親自らが、加害者であったという確かな認識を持たない限り、本当の親子関係の修復は難しいと感じます。今利さんの両親が、拉致監禁に対して反省のない態度で、今利さんの顔色を伺っているだけでは、本来の親子関係を作り上げることは、監禁時の「親子ごっこ」の再現です。
 そのような姿勢を両親がとり続けるのであれば、今利さんの傷は、永遠に癒えません。それどころか、今利さんにとっては拉致監禁時の体験の反復にもなり、更に苦痛を与える事でしょう。真の親子の修復をする為には、両親が黒鳥氏によって言われ続けている「拉致監禁の罪を認めないで、仲良し親子ごっこをするように」という矛盾した指示から離れることです。そして、両親自らが犯した、今利さんに対する人権蹂躙の罪を認めるべきかと思います。

 私の両親は、黒鳥牧師から離れ、私の言葉のみに耳を傾けてくれました。両親は、私の心の叫びを聞いて、自ら行った行動が、「保護説得」ではなく「拉致監禁」であり、それが「犯罪」であることを認めてくれたのです。そして両親は泣きながら私に謝罪してくれました。そのことによって、被害者である私は、安心して両親と暮らすことができるようになりました。今では、親子が共に苦しみを分かち合い、拉致監禁は悪いことだと話し合いができるほど、理解し合える関係が成り立っています。

 この様に、(今利さんは今回の調書では被害者としては認定されませんでしたが) 実質上被害を受けたと訴える今利さんの心の叫びを、両親が「加害者」として聞くことが重要になってくるでしょう。加害者が被害者の心の叫びを、自分の痛みとして感じる事ができるようになって初めて、被害者の心の傷は癒えていきます。もし両親にも加害者としての痛みがあるとしたら、被害者の心の叫びを理解してから初めて、その苦痛をお互いに理解しあうべきだと考えます。加害者が加害者の痛みを先に訴えるのは 理不尽であり、被害者の心をさらに傷つけるからです。

 今利さんの両親には、黒鳥氏の矛盾した指示を受けながら、今利さんとの対応を決めるのでなく、今利さんの心の叫びだけを聞くようになって欲しいと思います。


・「拉致監禁家族の問題点」

 拉致監禁によって、明らかにその親子は被害・加害の関係になります。従ってその親子関係に憎しみや怒りが生まれても不思議ではありません。拉致監禁によって、親子の関係が断絶するのです。決して、統一協会の教えによって、断絶しているわけではありません。それは、統一協会の教えにある氏族メシア論 によって明らかです。

 現在日本の報道では、北朝鮮国家による日本人拉致の問題が取り上げられています。拉致被害者となった横田めぐみさんを始め多くの方々が、無情にも幼い頃に見ず知らずの北朝鮮国家の人間によって拉致されました。その事実を知った横田めぐみさんらの両親達は、必死になって北朝鮮から被害者の救出の活動をしています。
 しかし、両親に拉致監禁された被害者はどうでしょう。その様に両親によって拉致された被害者は、警察からも法からも国からも親族からも、どこからの救出も望めないのです。両親に拉致監禁された被害者は、その監禁現場で一生涯続くと思われるような絶望感を感じるのです。その様な環境におかれた被害者は、まさに絶望の淵に立たされ、一筋の希望の光すら見いだせません。そして、被害者には、人間としての尊厳を親によって奪われた怒りが生まれます。これは人間として、ごく自然な心情の発露です。拉致監禁は、親が子の、人間として尊厳ある精神を破壊し、お互いの関係を断絶させる行為なのです。


・「拉致監禁家族の再生のために」

 また私は、今まで拉致監禁された経験のある人々全てに対しても、本当の親子関係を作り上げて欲しいと願うものです。それには上記のように、拉致監禁した者が加害者としての罪を認め、これを謝罪し、被害者の傷を、自らの身をもって知ることにより、親子ごっこではない、親子関係の修復をするべきだと思います。監禁された者が監禁した者と向き合うことは苦痛なことなのです。自分を監禁した加害者に対し、被害者が被害感情を持つことはごく当たり前です。被害者は加害者に対し、拉致監禁の被害を訴えていきましょう。

 拉致監禁の被害を明らかにするために、心療内科・精神科などで「拉致監禁のPTSD」の診断を受けることも重要です。拉致監禁時を想起させるものに対する不安や恐怖、眠れない、感情の起伏がない、動悸がするなど、PTSDの症状があるか、まずは自分で確認してみましょう。(PTSDのチェックページにリンク)そして、医師による診断で、明らかに拉致監禁のPTSDの症状があれば、それは拉致監禁の被害を受けたことの証明になります。そして、医師に診断書を書いてもらい、医師から両親に、自分に「拉致監禁のPTSD」があることを説明してもらうといいでしょう。これにより、その病を引き起こした原因が加害者にあり、親子が被害・加害の関係になっていることが更に明確になります。現在、精神の病は普通の病と同じく、珍しいことではありません。精神の病は誰でもがなりうる、ごく一般的な病なのです。恐れずに精神科・心療内科の門を叩きましょう。

 統一協会では「怨讐を愛せよ」と言う言葉があります。監禁された者は怨讐を愛するからこそ痛みを訴えるべきだと思います。それが家族の関係修復に向けての第一歩だと思います。声を発し続ける事によって、被害者の心の痛みが、加害者にもいずれ判る時が来るかもしれません。しかし、両親は最後まで判らないかもしれません。でも自分の心の痛みを素直に示す事が、子として両親に対しての、誠実なる対応であり、怨讐を愛する事になると思います。


 今まで声に出せなかった拉致監禁被害者の全ての皆さんが、今利さんのように声を発して、本来の親子関係を取り戻すことが出来ることを、切に願うものです。


・「世界日報の感想」

 世界日報の記事は統一信者をひいきするような偏った意見ではなく、本質的に人権侵害をテーマにし、また客観的な立場から書かれた記事であって、内容も和解調書の的を付いていると感じました。



以下に今利さんの和解調書を添付します。

裁判官認印

和  解  調  書

(被上告人兼相手方理絵の父、同理絵の母、同理絵の妹(次女)、同親族A、同親族B、同知人関係和解)

事件の表示       平成16年(オ)第1871号

              平成16年(受)第2052号

期    日       平成18年3月23日午後1時30分

場    所       最高裁判所第三小法廷和解室

受命裁判官       上  田  豊  三

裁判所書記官     田  邉  善  晴

出頭した当事者等   上告人兼申立人      今  利  理  絵

              同              今  利  智  也

              利害関係人        理絵の妹(三女)

              上告人兼申立人及び利害関係人代理人

                              弁護士A

              同               弁護士B

              被上告人兼相手方    理絵の父

              同               理絵の母

              同               理絵の妹(次女)

              被上告人兼相手方    親族A

              同               親族B

手 続 の 要 領 等

当事者及び利害関係人間に次のとおり和解成立

当事者の表示、請求の表示及び和解条項は、別紙記載のとおり

裁判所書記官  田 邉 善 晴


(別紙)

第1  当事者の表示

  神奈川県・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

              上告人兼申立人         今  利  理  絵

  同所

              上告人兼申立人         今  利  智  也

              上記両名訴訟代理人弁護士  弁護士A

                                  弁護士B

                                  弁護士C

  新潟県・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

              被上告人兼相手方        理絵の父

  同所

              被上告人兼相手方        理絵の母

  同所

              被上告人兼相手方        理絵の妹(次女)

  新潟県・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

              被上告人兼相手方         親族A

  同所

              被上告人兼相手方         親族B

  埼玉県・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

              被上告人兼相手方         理絵の父の知人

              上記6名訴訟代理人弁護士    弁護士D

                                    弁護士E

                                   弁護士F

  福岡市・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

              利害関係人              理絵の妹(三女)

              同訴訟代理人弁護士        弁護士G

                                   弁護士H

第2  請求の表示

    請求の趣旨及び原因は東京高等裁判所平成16年(ネ)第1534号事件に

   ついて、同裁判所が平成16年8月31日に言い渡した判決(その不可訂正し

   て引用する横浜地方裁判所平成11年(ワ)第14号事件の判決を含む。)の

   「事実及び理由」中、被上告人兼相手方理絵の父、同理絵の母、同理絵の妹(次女)、

   同親族A、同親族B、同知人関係記載のとおりであるから、これを引

   用する。

第3  和解条項

   1  上告人兼申立人今利理絵及び同今利智也(以下「上告人兼申立人ら」とい

    う。)並びに利害関係人理絵の妹と被上告人兼相手方理絵の父、同理絵の母、

    同理絵の妹(次女)、同親族A及び同親族B(以下「被上告人兼相手方ら」

    という。)は、互いに、相手方の信仰の自由や価値観を尊重し、これに干渉し

    ないことを約束する。

   2  上告人兼申立人ら及び利害関係人理絵の妹(三女)と被上告人兼相手方らは、

    円満な親子関係及び親族関係を築くことができるように互いに努力する。

   3  上告人兼申立人らは、被上告人兼相手方らに対するその余の請求及び

    被上告人兼相手方知人に対する請求を放棄する。

   4  上告人兼申立人ら及び被上告人兼相手方らは、上告人兼申立人らと被上告

    人兼相手方らの間には、本件に関し、本和解条項に定めるもののほか、何ら

    の債権債務が存在しないことを相互に確認する。

   5  訴訟の総費用及び和解費用は、各自の負担とする。

    これは正本である。

     平成18年3月23日

       最高裁判所第三小法廷

         裁判所書記官 田 邉 善 晴

 


以下に世界日報の記事を添付します。

世界日報 平成18年(2006年)3月26日(日曜日)

「信仰の自由」尊重を
  拉致監禁訴訟で和解成立
    最高裁  一・二審判決に疑義

 統一教会信者夫妻が平成九年一月に起きた拉致監禁・脱会強要事件によって被害を受けたと主張し、日本基督教団牧師と親族ら八人を被告として損害賠償と同種行為の差止を求めた訴訟は二十三日、最高裁第三小法廷(上田豊三裁判長)で二人の原告と利害関係人、五人の被告の間で法廷内和解が成立した。

 和解は「相手方の信仰の自由や価値観を尊重し、これに干渉しないことを約束」する条項を含むなど、同種事件の解決では画期的な内容となった。一審、二審は原告の信者夫妻の請求をことごとく退けたが、最高裁は信教の自由尊重の観点から原審判決を問題視した上で和解を勧告。これを受けて今回の和解となった。
 訴えていたのは神奈川県藤沢市在住の今利智也、理絵夫妻。訴状によると、理絵さんは、平成九年一月、川崎市高津区のファミリーレストランで夕食後、駐車場に出たところを親族らによって拉致され、横浜市内のアパートなど三カ所に約五カ月間にわたって監禁され、日本基督教団の清水与志雄、黒鳥栄の両牧師らから脱会を強要された。拉致は平成七年十月にも行われ、二度目であったという。
 また、夫の智也さんは二度目の拉致事件の際、理絵さんを助けようとして被告らから転倒させられるなどして全治一週間の負傷をした。このため、今利夫妻は、平成十一年一月、両牧師と親族ら八人に損害賠償と同種行為の差し止めを求める民事訴訟を横浜地裁に起こした。
 一審の横浜地裁、二審の東京高裁は、ともに今利夫妻の請求、控訴を棄却。理絵さんについては、「損害賠償をもって償わなければならないほどの違法性を帯びた逮捕、監禁」「脱会強要」には当たらないとした。智也さんについては、自分で転倒し負傷したものと認定した。
 この判決を不服として今利夫妻は平成十六年十月、最高裁に上告。最高裁は高裁判決が確定することを問題視し、約一年間にわたり審理し、双方に裁判上の和解を勧告した。その後約半年間にわたる和解交渉が行われ、今回の和解に至った。
 原告代理人の話 最高裁判所が和解の席で直々に「二度と・・・・・・自由を拘束するようなことはしないように」と相手方に説示したことは、大変意義深い。最高裁において、信仰の自由を軽視した下級審判決に疑問を呈し、今回、和解に至る異例の努力をされたものと理解している。
 本件は、今日もなお横行している同種活動に対する大きな警鐘になるものと思う。また、本件では、傷付いた親子関係の回復に向けた建設的な内容も含まれる。今後、当事者には、相互理解を深めながら幸せな親子関係を築いていただきたいと願っている。

「信仰の自由に対する干渉」
    和解で裁判長が説示
 最高裁

[解説]

 今回の和解のポイントは、和解条項の第一項に原告の今利夫妻と利害関係人(理絵さんの末の妹)、被告らが「相手方の信仰と自由や価値観を尊重し、これに干渉しないことを約束する」とあるように「信仰の自由」尊重とその不干渉の約束にある。条項中「互いに」との文言は、被告らの強い意向で入ったが、その意義は被告らが今利夫妻の「信仰の自由や価値観を尊重し、これに干渉しないこと」を約束したことにある。
 和解交渉の過程で同法廷の担当調査官は「干渉しないことを約束する」との文言に「(両親側において)今回問題となったような行為を二度と行わないことを約束する」との趣旨が含まれることを書面で両当事者に伝えた。和解の席上でも、上田裁判長がこの点を確認した上で、被告らに対して「二度と上告人らの自由を拘束するようなことはしないように」との説示を行っている。
 これまで、一部キリスト教牧師らの指導で統一教会信者の親族らが行ってきた、信者の身体拘束を手段とする脱会説得行為について、その違法性を認めた判決はあった。しかし、これが「信仰の自由の侵害」であることを明確に判示した判決はなかった。
 この点、今回の最高裁での法廷内和解は、その手続過程で、こうした行為が「信仰の自由に対する干渉」であるとの最高裁見解を明確にしたもので、その意義は極めて大きい。
 最高裁が原審判決の見直しを行うのは、一万件に一件の割合と言われる。その上、最高裁で和解が成立することは、さらに珍しいと専門家は指摘する。
 最高裁は、拉致・監禁による拘束下の脱会強要(拉致による強制脱会)行為の違法性を認めなかった原審判断に対し、信教の自由の観点から極めて重大な疑義をもったものと言える。


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