レンズ

大型カメラのレンズは包括角から
スーパーワイドアングル・ワイドアングル・
コンパクトタイプ・テレタイプに分かれる。
包括角は夫々100度、70度、60度、20度程度である。
(例外もあるが)
この包括角は焦点距離によって決まるのではなく
レンズ構成や絞り値などによって変わってくる。
普通f22程度の角度をカタログスペックとしている
ものの、絞りが開放だと周辺部が流れて角度は狭くなり
逆に絞り込むと円の輪郭がハッキリして包括角は広がる。

このことは広角レンズで失敗することを示唆している。
開放で構図を決め、ピントを合わせるのだが、
広角レンズは画角が広く暗いので周辺が良く見えず
イメージサークルから外れたか見難いのだ。
後でフィルムの端に黒いけられが入っている失敗を。

イメージサークルは実用上の画像範囲を、その円の直径でしめす。
当然、焦点距離が長いほうがイメージサークルは大きい。
フィルムの対角線より大きければ良いわけで、
アオリの無い35mmでは43mmあればよいことになる。
4x5では150mm以上必要で、イメージサークルの
範囲内でアオリの制約が生ずるわけである。

レンズ選びは楽しみにすれば救われる。
好きではないが、世の中に標準レンズという呼び方がある。
フィルムの対角線長を言うようだが、さて。
4x5では150mm、6x9で100mmである。
一番素直に撮れるような気がするが、まあ、一本目は
ここからでよかろう。
カメラによってはレンズを本体に付けたまま、折りたためる
機種がある。この場合は前玉の大きくないレンズの制約が
あり、よく選ばないといけない。

レンズのメーカーは国産では
ニッコール(ニコン)
フジノン(フジフィルム)
コンゴー(山ア光学研究所)
トプコール(駒村商会)
ウィスタール(武蔵野光機)
輸入品では
シナロン(ジナー社)
シロナー・ロナー・イマゴン・グランダゴン(ローデンシュトック)
ジンマー・スーパーアングロン・クスナー・テレアートン(シュナイダー)
と言うところ、夫々のレンズにはアポとかスーパーとかの冠が
ついている型もある。

特殊なものにソフトフォーカスレンズがある。
昔からイマゴンとかタゴールとかポートレート用に有名なものがあった。
マクロと称する近接撮影用もあるが、ヘリコイドが付いているわけではなく
1:1で最も収差を取り除いたという意味である。
アポとはアポクロマートである。
フジノンにCMというのがあるが、これはコマーシャルで商業写真用を
売り物にしたものか。

大型カメラのレンズはワイド系はオルソメタタイプ、
コンパクトタイプではテッサータイプ、それから
テレフォトタイプが主流である。
前郡レンズにシヤッター、絞りを含め前玉と呼ぶ。後郡レンズは
後玉とよぶ。
後玉を外してレンズボードに装着する。
時代物には前玉を外して焦点距離を伸ばすレンズがあった。
前玉はずしなんて言っていたが、今では時代物になってしまった。

後玉を取り替えて焦点距離を伸ばすタイプのテレフォトタイプレンズがある。
これなら徳用だが、フィールドで頻繁に使うには埃が
入らないような配慮がいる。

極端に短い焦点距離のワイドレンズは
凹みボードに沈めてセットする。
カメラの最短繰出量の手前に無限が
きてしまうからである。
その場合は各レバーの継ぎ足しをしないと
操作しにくい。

レンズのフィルターリングは68mmに統一しているメーカーもあるが
まちまちの場合がおおい。
フィルターはゼラチンの100mm角を使う場合が多いからだが、
フィールドで使う者にとってフィルターサイズの統一はありがたい。

レンズの味の違いは、ワイド系に顕著である。
一眼レフのワイド系レンズは非対象型のレトロフォーカスタイプで
被写体のフォーカスは球状になる。
それに対し、大型のワイド系レンズは対称型でこの違いが表現の差に
なっているような気がする。
大型カメラのレンズは絞り値が小さいところまである。
35mmではf22が最小だが、f32・f45・f64まで
目盛がふってある。
被写界深度が深い写真は大型カメラの真髄である。

大型カメラのレンズに限ったことではないが、広角レンズでは
パースペクティブディストレーションが起こる。
周辺部で球形のものが潰れていびつになるもので、
画面四方に放射状に向かって伸びる現象である。
風景写真ではあまり気にならないが、集合写真では顔が伸びたり
いびつになるから注意を要す。
4x4で90mmぐらいから起こり始める。
このことは周辺部の光量低下にもつながり、レンズによっては
中央部を段階的に暗くした特殊フィルターを併用しなければ
ならないものもある。
最も、これを逆手にとって昼間でも夜のような感じの
幻想的な雰囲気を映し出す手もある。
実は、スーパーアングロン47mm/f8というレンズが
この現象を端的に表していたので、ようやく手に入れたところ
期待はずれであった。レンズ固体によって差があるのか、
レンズの年式によって周辺光量の改善をはかったのか、
まだ確認はしていない。