本体


本体
大型カメラには木を使ったものと金属製がある。
当然木製は軽く、金属製は操作性が良いと言える。
また、形の上で折りたたみ式とモノレール式がある。
これも、当然ながら持ち歩きに便利に作られたものと
スタジオを主に考えられた結果である。
とはいうものの、土門拳はモノレールを寺の屋根まで
持ち上げているのだから、
どのタイプを選ぶかは、その使い道によって
決めるべきであろう。
木製の折りたたみ式にはレンズ部とピントグラス部の
両方をフォールデットするものが多く、
金属製のフィールドタイプはレンズ部を縮めて
レール部を折りたたむものが多い。
金属製の方がセッティングが幾分早いとおもう。

当然高い買い物だから、その性能が気になるところである。
惑わせるのは、蛇腹の繰出し量とか、アオリなどの機能に対する
可動量である。
特殊なことをしなければ風景写真の場合、それほど多くの可動量は
いらないものである。
これらのアオリ量はカメラ本体だけでなく、イメージサークルの大きい
レンズと合わせて発揮されるものであるから。
これらの量は、当然ながらフィールドタイプでは大きさの制約上、
押さえられている。
ここでは、むしろカタログスペックによる量の多さにとらわれず、
しっかり固定できるかを一番に見たほうが良い。
中には締め付けてもレンズボードがぐらぐらしている機種もあり、
買う前に良く見たほうがいい。

アオリの方法はシフト、フォールライズに付いては、フロントでやっても
バックでやっても結果は同じである。
スイングはほとんど支点はセンター軸だから問題ない。
カメラによって差があるのは、ティルトの支点方式である。
ティルトには前ティルトなら、レンズ軸とベース軸がある。
バックではセンター軸と焦点軸とベース軸がある。
構造上の問題から発生するものだが、使い方には慣れが必要。
ティルト軸がレンズ面やフィルム面(焦点面)にあれば
あおっても構図や焦点のずれはおこらないが、ベース軸や
フイルム面から外れたセンター軸だと構図や焦点を
合わせなおさなければならない。
これはティルトだけのときのはなしだが、スイング軸をずらせて
いる場合のティルトは、ヨーが発生する。
この場合はベースにティルト支点があったほうがやりやすい。

蛇腹は最近は合成樹脂に変わっているが、大抵は薄くそいだ皮の裏に
絹を張ったものである。
それを折っているから、山折りの角はすれて穴が開きやすい。
この蛇腹は取り外しできるようになったものと、工場メンテナンスのものがある。
どちらでも良いのだが、中古の場合はいっぱいに伸ばして
明るいところに向けて調べたほうがいい。
また、雨に濡れた時は伸ばして乾かさないと、くっついてしまうことがある。

蛇腹の長さが長いほど長焦点レンズが使えることになる。その代わり
折りたたみの長さが嵩んでフランジバックの短いワイドレンズが使えなくなる。
きつく折りたたんだ状態ではシフトやライズができないのだ。
蛇腹が交換できるタイプでは折りたたまない袋蛇腹が用意されている。

木製の場合問題となるのは、繰出し部でラックアンドピニオン部は金属だから
どうってことは無いように思うけれど、摺動部が木製だと湿気を含んで
動きが重くなったり、接って繰出せないトラブルを聞くことがある。

本体を選ぶ時、広角は何ミリまで使えるか、ロングは何ミリまで使えるのか
調べておく必要がある。
ワイド系では凹みボードというのがあり、ロングでは逆に延長チューブが使える。
その上でレンズのフランジバックを計算しておくとよい。
フランジバックがあっていても、ぎりぎりでは無限大はでたものの
ボディにぶつかって、前あげもシフトも出来ないなんてことかある。

レンズのフランジバックはレンズのスペック表に載っている。
本体もカメラのスペック表に載っているのだが、
レンズボードの厚み(もし変換レンズボードを使っていればその厚み分)
又は凹みボードによるマイナス分、フィルムバック部分の加算分を
全て足し込まなければならない。
テクニカルフィールドカメラではレンズボードを支える部分を鳥居というが、
強いバネでレールに食いつくようになっている。
とはいえ、バネの食いつきだけで平行を出すのは難しく、カメラによって
左右のレールにストッパーを儲けている機種がある。
このストッパーは折角付いているのだからきちんと使うようにしたい。
意外と使っていない人が多い。

最後に使い方の領域だが、折りたたむ時には全ての可動部を元の状態
戻さないとカメラを壊してしまう。くれぐれもご注意を。
買ったばかりのカメラのレールをひん曲げた御仁がいますよ。