FISM2003 レポート

FISM2003のパンフ表紙

FISM2003鑑賞ツアーに参加して 依岡 真

2003年7月21日(月)から7月26日(金)にかけてオランダ・ハーグで開催されたFISM2003鑑賞ツアーに参加してきました。柏マジッククラブからの参加は8名(渋谷、金子、藤田、内山、吉田、榎本、依岡(夫婦))でした。
(世界中から3000人参加とのこと。日本からの参加者は200人位?)

さて、大会のレポートですが、持ち帰った大会プログラムを引繰り返して眺めてみても、そこに書かれた演技者の顔と演技内容、つまり「誰が何をどうやったか」の記憶が見事に消え去っているではありませんか!
次から次へと繰り広げられるマジックに「凄い」「凄い」と唯々驚いているばかりで、日々の記録・整理を怠っていたため、記憶が何重にも上塗りされて、混沌としてしまったようです。「せっかく大金を注ぎ込んで参加して来たのに・・・」と後悔しきりです。

そうは言っても、何も書かずに済ますというわけにも行きませんので、私の感じた事をいくつか拾って、以下に記します。極めて断片的なものとなってしまっていること、お許しください。

<ホテルが近くて便利だった>  私達の泊まったベル・エア・ホテルは会場から歩いて2〜3分の所。何か忘れ物をしたり、合間にちょっと一休みしたい、等という時に気軽に戻ってこられる場所でした。朝9時から夜11時過ぎの毎日が一週間続く長丁場においては、このメリットは甚大でした。

<会場が良かった>
 会場のNCC(Netherlands Congress Centre)は2,100席収容の大ホール(Alexander Hall)を中心に30余の部屋、そしてあちこちに休憩ラウンジ、軽食スタンド、バイキングスタイルのレストランが有って、FISMのようなマジックの国際的なイベントを開催する容れ物としては、申し分の無い会場でした。ステージ物のアレクサンダーホールとクロースアップ物のゴッホホールには舞台の左と右上方にプロジェクトスクリーンが設けられて常時舞台の映像(必要に応じてズームアップしたもの)が映し出されおり、遠い席からでも良く見えました。

<音響・照明の重要さを再確認>
さすが世界大会に出場するだけあって、出る人出る人の演技、テクニックは素晴らしいものでした。しかし、今でも目を瞑ると浮かんでくるのは、演技を側面から支え、お客の感動をより大きく増幅する役割を果たしていた音楽(音響)と照明です。これは何もFISMに限ったことではありませんが、今更ながら強く感じた次第です。

<幕間を繋ぐFrank William の存在は大きかった>
メイン会場アレクサンダーホールの下手・幕前で、初日から楽日までぶっ通しで電子ピアノを弾き語り、唄い続けていたFrank William の存在は大きかったと思います。次の出し物の準備が整わず、なかなか幕を開けられない場面が度々でしたが、ひたすら唄い続け、時には即興の歌詞を織り込んで観客を沸かせながら幕間をつないでいました。お陰で観客はイライラする事も無く、むしろ彼の幕間のパフォーマンスを楽しんでいるほどでした。
マジック大会でマジックの力を一切借りずに観客の心をしっかりと掴んだ彼には敬服してしまいました。今大会における彼の存在は実に大きなものだったと思います。

<Pat Perry & Archibald の舞台とボナ植木オリジナル作品との関係について>
7/23(水)のステージコンテストに出場しGeneral部門の1位を獲得したスイスの二人組、Pat Perry & Archibaldの舞台は数多くのショーの中で意表を突いたもので、とても面白かった。マジックづくめで多少疲れが出始めた観客席は、拍手喝采、笑いの渦につつまれました。・・・・唯、私はずっと「これはどこかで見た気がする」と心の中に引っ掛かるものがありました。日本に帰ってきてから、何気無く本棚に目を遣っていて「そうだ、あの舞台はナポレオンズのボナ植木の「横向きマジック」を発展させたものだ!」と気が付いたのです。ボナ植木こと植木康之氏は、この作品で日本クロースアップマジック界の直木賞といわれる厚川昌男(直木賞作家の泡坂妻夫)賞を獲得しています。(詳細は講談社発行のボナ植木著「書斎がいらないマジック整理術」のP.78〜P.81を御参照下さい)。この著でボナ植木氏は「このトリックは世界中で私しか演じていない完全オリジナル作品で、海外でも演じて絶賛を博しています」と記しています。従って、どこかでボナ植木の「横向きマジック」(又はそれを真似したもの)を見たPat Perry & Archibald がこれにヒントを得、発展させてFISM2003 に懸けたのではないかと私は思うのです。もしそれが当たっているとしたら、ボナ植木氏も折角考え出したトリック「横向きマジック」にもう少しこだわって、その発展形を追い続け、世界の場で面白い舞台を発表して欲しかったと思わずにはいられません。

<マーカテンドーのレクチャー(7/26 9:30~10:30AM)>
他の催物とかちあったせいか、日本人の出席は意外と少なく、柏からは私達夫婦だけだったので、状況を簡単にお知らせします。
テーマは「カードマニピュレーション」で、彼がこれまでのステージで見せてきた数々のカードマニピュレーションをやって見せ、夫々についてかなり丁寧にコツを説明していました。彼の繰り広げる高度なカードマニピュレーションには会場から溜息が漏れ、質疑応答も活発なものでした。英語が通じなくて説明に戸惑った場面もありましたが、スローモーションで何度もやって見せて納得してもらう等により、コミュニケーションは十分取れていました。全体として、レクチャーは大好評でした。

<意表を突くマジック、オリジナリティーあるマジックをどう生み出すか?>オリンピックと同じで、日本人が舞台に立つと心臓が高鳴り、手に汗握り、つい「頑張れ!!」と叫びたくなるものです。峯村健二氏がマニピュレーション部門で 3位に入賞と発表された時には、日本人は皆歓声をあげたものです。  これからも日本人が活躍して、願わくばもっと賞を獲得して欲しい。資質ある人がまだまだ居る筈だから。・・・・そのためには、これからどうしたらよいのでしょうか?

世界大会で上位に食い込むためには、一般の観客は勿論、審査員達の意表を突くマジックであり、オリジナリティーを持っていること、その上で完璧に演じるテクニックと演技力が必須でしょう。しかし、それは個々のマジシャンの努力に任せているだけではなかなか得られない気がします。スポーツの世界、いや如何なる勝負の世界でも、勝つための分析と戦略作りには相当な人・物・金をかけています。これからは、マジックの世界でも、優秀なマジシャンを発掘すると同時に、それを支える組織的ブレーンが必要になってくるのではないでしょうか。

<やはり英語の力は有った方が・・・・> 「マジックは世界共通語」「言葉は通じなくても、マジックの不思議は伝わる」等とよくいわれます。私自身、マジックを人に勧める時はよく口にするせりふです。しかし、今回「やはり言葉は重要」であることを身に沁みて感じました。確かに、ステージマジックや手練ものでは何の支障もありませんんが、クロースアップマジック等のように、客とのやりとりやナレーションがキーとなるマジックでは、術者の言っていることが判るか判らないかで、面白さが格段に違ってきます。言葉が判れば術者の求めに応じて舞台に上がってお手伝いも出来ましょう。そして術者からは一人前のお客として扱われます。それが、言葉が判らないとなると、たとえ最前列に陣取っていようと、単に「成り行きを見守る傍観者」であり、術者と観客とのスリリングなやりとりの場からは一歩引っ込んだ感じとなってしまいます。マジックの国際舞台では、東洋人であろうと西洋人であろうと、公用語は英語です。
これからは、お金を積立てるだけでなく、英語の力も積み立てないと、と思いました。
―以上―


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