小山酒造・丸真正宗
酒粕と美容と健康
このコーナーでは、日本酒を造る時にできる「酒粕」の薬効と、
あまり知られていない利用の仕方をご紹介いたします。

酒粕の効能について
酒は昔から「百薬の長」と呼ばれています。その日本酒の薬効成分の多くは、麹、あるいは発酵過程で出来てきます。
つまり麹がそのまま残っている酒粕にもおくの薬効が期待できるというわけです。
消費者のニーズが多様化・高級化した今日、酒粕は、その栄養と美味しさにプラス、それ自体が機能を持って十分に効果を発揮している食品なのです。
1)現代病と酒粕について
糖尿病患者の食事は、糖質を減らして、タンパク質を吸収するのが基本です。
酒粕の中には糖の吸収を抑える物質や、タンパク質の分解吸収を促進する機能性物質が含まれている為、糖尿病患者にとって酒粕は、願ったりかなったりの食品なのです。
また、酒粕の中からは血圧の上昇を抑えるのに有効な物質が6種類も発見されており、様々な研究の結果、市販の高血圧の薬と同じくらい効くことが立証されています。
高齢化社会を迎え、よく耳にする病気に骨粗しょう症があります。
骨の量は10代後半をピークに、40歳を過ぎると年齢とともに減少していきます。これは、骨の吸収が新しい骨の生産より早くなるためです。このバランスが更に崩れると、骨の中がスカスカになります。この状態が骨粗しょう症です。
しかし、骨がもろくなるのを防ぐのに有効な成分が日本酒の麹から3種類発見されました。もちろんこれは酒粕からも見つかっています。つまり酒粕を日常的に食べ続けることで、骨粗しょう症の予防・進行の阻止が出来るのです。更に酒粕は食品ですから他の骨粗しょう症の薬と違い、副作用の危険性も全くありません。
また脳梗塞や心筋梗塞、動脈硬化など、血液が固まったり、血管が堅くなったりする病気にも酒粕は有効だと言われています。
なぜなら酒粕には血液の固まりを溶かす酵素の合成を促進させる物質が含まれており、また悪玉コレステロール値を下げる働きもあるのです。
この様に酒粕は現代病に対し、とても有効な食品と言えます。病気になってからではなく、予防の意味でも酒粕はとても有効なのです。

2)民間療法について
蔵の人々は、身近にある酒粕を、昔から何かにつけて活用してきました。心を込めて造った日本酒の副産物であり、色々と役に立つことも経験から知っていたので、捨ててしまうことが出来なかったからです。
主な使い方は、食べ物の保存、野菜などの漬物、料理に加える、等です。
しかしもちろん料理として使うだけではなく、民間療法としても様々な使い方をしてきた様です。ここではその様々な民間療法を幾つか紹介します。

(A)ヤケドの塗り薬
ヤケドしたところをよく冷やした後、板粕の表面をよくあぶって殺菌し、それをよく冷ました後、傷口の表面に貼る。(ヤケドによる熱を早くとることが出来、酒粕の成分により、治りも早い)

(B)喉が痛いとき
ガーゼに酒粕を延ばして置き、それをガーゼで包み、喉にしばらく乗せておく。(喉の痛みがすーっと消える)

(C)ひび・あかぎれに
ひびの場合は、酒粕を水でどろどろに練り溶かし、患部に塗る。しばらくして洗い流す。これを何日か続けることにより、ひびが治るだけでなく、手もつるつるになる。
あかぎれの場合は、柔らかめの酒粕を患部に塗って、バンソウコウで止めておく。(酒粕は、皮膚関係には万能薬のように使える)

(D)捻挫や腰痛の湿布に
酒粕をガーゼで包んで患部に貼る。(腫れがひき、痛みも和らぐ。)

3)美容と酒粕について
近頃、街はガン黒ちゃんを尻目に、空前の美白ブームでもあります。
そんな中、酒粕に含まれるアルブチンいりの美白化粧品をよく見かけます。どうやら酒粕にはシミ・ソバカスを薄くする効果が有るようです。
また美白効果だけではなく、保湿保温効果やアトピー等にも効くといわれています。

果たしてその科学的根拠はどこにあるのでしょうか。
シミ・ソバカスは皮膚の色素沈着で起こるものです。
その原因はドーパクロムという物質で、この物質がメラニン色素に変化することによって、シミ・ソバカスが出来たり日焼けをしたりするわけです。

それではこのドーパクロムはどの様にしてできるのでしょうか。
これはチロシナーゼという酵素がアミノ酸の一種に作用してできます。
ところがここにチロシナーゼの働きを阻害する酵素を加えると、ドーパクロムは生成されないことが分かっています。そしてこのチロシナーゼの働きを阻害する物質というのが、最近よく話題になっている遊離のリノール酸やアルブチン等です。
遊離のリノール酸は日本酒の原料である米の中に含まれるものですが、当然日本酒を搾った後の酒粕にも酵母と共に大量に含まれています。この酒粕のエキスを使った実験で、酒粕がドーパクロムの生成を著しく阻害するという結果が発表されています。

また、最近密かにブームとなっている日本酒風呂。これは皮膚を保湿・保温することで美しい肌になるからですが、やはり酒粕にも同じ効果があります。
酒粕の成分を調べてみると、タンパク質、繊維質を含む炭水化物、ビタミン類、カルシウム、リン、鉄、ナトリウム、カリウム等の無機質、更にマグネシウム、亜鉛、銅など、他にも数え切れない程様々なものが含まれており、加えて酵母からの核酸類も含んでいました。
これらの成分の中に保湿・保温の効果をもっているものがあるわけです。
これは冷え性の人にもかなり有効です。
またこれらの成分はアトピー性皮膚炎にも効果があることが分かっています。
つまり酒粕風呂は、保温・保湿・美白等、様々な美容効果と共に、肌の体質改善効果も期待できるというわけです。

4)酒粕を使った料理について
ここでは酒粕を使ったメニューをご紹介します。

(A)味噌風味粕汁
味噌汁を作ってそこに板粕(5人分で50〜100g)を溶きのばしてひと煮立ちさせる。(毎日酒粕を食べるのに最適な一品。具はお好みで。)

(B)甘酒
鍋に酒粕を溶きのばし、好みで砂糖等を加える。(酒粕を使った最もポピュラーな一品。子供も飲みやすいのでおやつ等にしても。)
体の内側からも外側からも取り込むことの出来る酒粕。正に美容と健康の万能選手といっても過言ではありません。毎日の生活の中で自然に酒粕を取り込み、美しく健康的な体作りを目指しましょう。