寅次郎の独り言
川が流れております。
岸辺の草花を洗いながら
たゆまず流れ続ける川をながめますと、
なにやら私の心まで洗い流される気がして参ります。
そうしていつか思いおこされるのは
私のガキの頃のことでございます。
私は川のほとりで生まれ、川で遊び、
川を眺めながら育ったのでございます。
祭りから祭りへのしがない旅の道すがら、
きれいな川の流れに出会いますと
柄にもなくもの悲しい気分になって
川を眺めてしまうのはそのせいかもしれません。
今頃、故郷に残した私の肉親たち・・・
たった一人の妹さくら、その夫の博、息子の満男
おいちゃん、おばちゃんたちは
どうしているのでございましょうか。
そうです。
私の故郷と申しますのは、東京は葛飾柴又、
江戸川のほとりでございます。

見知らぬ土地旅する間にゃを
それは人には言えねえ苦労があるのよ
例えば、夜汽車の中、
いくらも乗っちゃあいねえその客も
みんな寝ちまって、
なぜか俺ひとりいつまでたっても眠れねえ
真っ暗な窓ガラスに
ホッペタくっつけてじっと外を眺めているとよ
遠くに灯かりがポツンポツン・・・
あー、あんな所にも人が暮らしているんだなあ・・・
汽笛がポーツ、ポーッ・・・ピーッ、
そんな時よ、そんな時、
なんだかわけもなく悲しくなって、
涙がポロポロと出たりするものよ。
そうゆうことってあるだろう、
おいちゃん。