今日は兄の誕生日でもなければ僕の誕生日でもない。けれど、記念すべき特別な日だ。何故ならば、これまで僕を苦しめてきた忌々しい鼻眼鏡にようやく打ち勝ち、4週間近くも続いた禁欲生活に別れを告げる日だからだ。
思えば『マンネリ』だとか『倦怠期』だとか。そんなものは僕と兄の間においては心配する必要などなかったというのに、僕とした事が柄にもなく不安になっていたらしい。お陰で貴重な兄との愛の時間をみすみす無駄にしてしまった。ああ勿体ない事だ。
僕は組み敷いた兄の身体から最後の布を取り去ると、思わず両手を組み天を仰いだ。
母さん、こんな時ばかりあなたを思い出す僕をお許しください・・・・。けれど僕はいつでもこの瞬間、この美しい人を世に生み出したというあなたの偉業を讃えずにはいられないのです。美しい金の髪にガラの悪い目つき、殺人的な暴言を吐く癖に僕のスイッチを入れてくれちゃったりなんかするキュートな唇、男にしておくのが勿体無いような可愛いピンクの乳首に細い腰もう堪んないんですけどこの人食べちゃってもいいですか!?いただきます!!!!
「・・・・・・アル・・・・・・もうお前の食前の祈りを無理に止めはしねェから、せめて黙ってやってくんねぇ?」
酔いが回って力の入らない身体を投げ出したまま僕の好きにされている兄は、投げやりな口調でそう言った。もう抵抗する気力も無いらしい。
「兄さんがあまりに魅力的で綺麗だから、つい我を忘れて声に出しちゃったよ」
「・・・・お前のその言動がことごとく理解できねぇ・・・・・・これがジェネレーションギャップというものなのか・・・・」
「一つしか違わないのに何言ってるの。本当に酔っ払っちゃってるんだね、兄さん」
「酔ってるが理性はまだ辛うじて残ってるぞ。記憶中枢もバッチリだかんな。ヘタな事しやがったらタダじゃおかねぇぞ?」
呂律の怪しい口調でそう釘を刺してくる兄だったが、上気した頬と潤んだ瞳の掠れ声でそんな事を言ってもハッキリいって逆効果だ。
「心配しないで。ヘタな事なんてしないよ?僕のテクニックを知ってるでしょう」
「ア・・・・ア・・・・・ウアア・・・ッ、その声、使うなぁ・・・・・!」
僕の声に面白いように反応する様子が嬉しくなって、お喋りはここまでと、喘ぐ唇を唇で塞いだ。
さあ、これから4週間分の愛を思う存分恋人に注ぎ込むのだ !
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延々と体中を余すところなく舐め尽され揺すり上げられながら、その行為の間中、うすぼんやりとした意識の俺の頭に幾度となく浮かんでは消えていた言葉。
絶 倫。
「も・・・・・もう、無理だ・・・・って・・・!!死ぬ・・・・マジで・・・・ッあ・・・・あああっ」
突き上げられる度、押し出されるように上がる声を噛み殺す事も出来ない俺が縋るようにかき毟るシーツは、ふたりから幾度となく放たれたもので汚れ、きっと目も当てられない程悲惨な有様に違いない。
弟という皮を被ったケダモノの凶器はひとたび俺を貫いたが最後、今までただの一度も抜かれることなく熱心に励み続けている。さんざん中で出しやがってコノ野郎、あとで覚えてろ!などと息巻くのは胸の中だけで、実際俺に出来る事といえば・・・・・・・・何もない。せいぜいプライドをかなぐり捨てて、憐れっぽい声でもう勘弁してくれと懇願するのが関の山だ。
耳を塞ぎたくなるような卑猥な音達が、アルコールに爛れ薄れている筈の羞恥心をこれでもかと刺激してくる。強制的に与えられる激烈な快感に身を焼かれながら息も絶え絶えに制止の言葉を紡ぐのに、この行為が中断される気配はとんとなかった。弟は俺の両足を目いっぱい広げてがっつんがっつん腰を打ちつけてくる。ケツの穴どころか体中のあちこちがぶっ壊れちまいそうだ。
「ヤメロって、言って・・・・・・・・・・ふ、ん、ンン・・・・ひあ・・・・・っ」
「兄さん・・・・・・・・僕を止めたいの?それとも、誘ってるの?」
そんな空っとぼけた戯言さえエロボイス全開で言いやがるこの残酷な男は、本当にあの可愛かった俺の弟マイエンジェルスウィートあるほんすなんだろうか・・・・・・・。母さん、あなたの腕に抱かれスイヨスイヨと可愛い寝息を立てていた天使は今や道を踏み外し、まるで悪魔のようです。
大体余裕無さ気な表情を浮かべながら好き放題突っ込みまくる癖して、唇や指先の動きは酷く優しいから余計に始末が悪いのだ。加えてたたみ掛けるような「アイシテル」の連続攻撃に、悔しい事に俺の胸は幸福感で満たされてしまう。ありえねえ。
「にいさん・・・・・綺麗・・・カワイイ・・・・・・・・・素敵だよ・・・・アイシテルよ」
「ヒヤ・・・・ッヤメ・・・・・・・ク・・・・・うあああ」
弟よ、お前何でそんな乳首好きなんだよ?という位執拗に乳首に吸いつくわ甘噛みするわ舌先で転がすわで、これまた死にそうな程の快感を引き出されるから嫌になる。子供も産まねェ男に乳首はいらねえだろ?何の為にあるんだこの忌々しい乳首!?着脱可能なものなら、外して乳首好きの弟に貼りつけてやりたいと本気で思った俺だ。そしたら朝な夕な好きな時に好きなだけ自分の4つの乳首を弄くってひとりで悶え喜ぶがいい、この変態め!
心の中でありとあらゆる弟への罵詈雑言を吐きながら、巧みな性技にまたしても絶頂間近にまで追い込まれた俺は、もはや瀕死だ。悲鳴を上げ続けた所為でヒリヒリする喉から無意識に出るのが結局弟の名だなんて、俺もまったく救いようがない。
「ア・・・ル・・・・アルッ・・・・!ん・・・アアアアアッ!!」
「ごめ・・・・・も・・・・っかい、出る・・・・・ッ」
弟の掠れた声が俺の耳朶を熱く濡らし、それにゾクリと背筋を強張らせた瞬間、信じられない事に中のジュニアがさらに体積を増した。ウソだろオイ!?いくらなんでも、それはデカイにも程があるだろう。医療錬金術のスペシャリストだからって、兄ちゃんのケツを壊して良いとでも思っているのかアルフォンス ッ!
「に、さん・・・・アイシテル・・・・・・ッ」
「・・・・・ッ!?うあっ・・・・・アアアア !!」
それまで膝裏を支えていた両手で俺の腰を強引に引きよせ、これ以上ない程の奥に弟の熱を感じさせられた瞬間、ドクリとほとばしる生々しい感覚に俺は堪らず意識を手放した。
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「ゴメンね・・・・・・・・また、やってしまった・・・・・なんて事だ・・・」
行為の根底に愛があれば強姦とは言えない・・・・・・・・・なんて、言えない。
意識のない兄の身体を壊れもののように運びこんだバスルーム。意識がある時には激しい抵抗に遭いまともにさせてもらえない行為の残滓を掻き出す処理を丁寧にして、湯を張ったバスタブで力尽きた恋人の身体を洗い清めるのは、今度が初めてのことではない。
長いこと兄に触れていなかったからといって、いくらなんでもコレはない。最初の一杯だけは、ささやかな報復としてレシピよりも多めのウォッカを入れたソルティ・ドッグ。でも2杯目からは、アルコールに弱い兄の為に実は微量しか入れていなかったのに・・・・・・・・・・それでも、駄目だったらしい。尋常でない色香を振りまき、最後の最後で見事に起爆装置のスイッチを入れてくれた恋人を、まるで貪り喰うように抱いてしまった。本当は、ほんの少し酔った恋人を誘って、優しくゆったりと抱き合うつもりだったのだ。それが結局、こんな強姦紛いな行為をやらかした。途中に訴える制止の言葉さえまるで誘っているかのようで、何度達しても冷める事を知らない熱に追い立てられるまま、いったい何度恋人の中に熱を放ったのだろう。
「ごめん、ごめんね。兄さん・・・・・・・大丈夫かな・・・・・辛かったよね、本当にごめん」
意識のない恋人に何度も何度も呟く謝罪が、バスルームにたちこめる湯気に吸い込まれては空しく消えていく。
自分もバスタブに入ると、洗い終えた兄の身体を腕の中に抱きながら、しっとり濡れた金髪の後ろ頭に頬擦りをした。
愛しているのに、優しいだけではいられない自分が遣る瀬無い。幸せだけを与えてあげたいのに、時に襲ってくる衝動に逆らえず、思いのままに激しい感情を兄にぶつけてしまうのだ。その時の僕は、自分を抑える術を持たない。それが、怖い。いつか自分がこの人を壊してしまうのではないか・・・・・・と。
「愛してて・・・・・・ごめんね・・・・・・」
「・・・・・・・・・ヘンな事言ってんな?アル」
ひとりごとに掠れた声が応えてくる。目を醒ました兄が腕の中で身じろぎして、僕の鎖骨に頬を摺り寄せてきた。
「ん〜〜・・・・・気持ち良いな・・・俺、このバスオイルの匂い好きだ」
「ユーカリのオイルだよ。兄さん、声嗄れちゃってるから・・・・・・ごめんね」
居た堪れない気持ちで謝罪の言葉をむけると、腕の中の兄は大きく肩を揺すって明るい笑い声を上げた。
「何だよ、その叱られた犬みたいな情けない声は?ったく仕方ねぇなあ、お前の可愛さに免じて今回もお咎め無しにしてやるけどよ、連続で中出しは勘弁してくれよな。兄ちゃんが下痢ピーになったら可哀想だろ?」
「うん。ごめんなさい・・・・・・」
再度謝る僕に、またしても可笑しそうに笑った兄は、何だかとても幸せそうに見えた。
「なんだよアル、不思議そうな顔して?」
「だって、酷い事したのに・・・・・なんで怒らないのかな、と思って」
兄は所在無さ気にしていた僕の両手首を持ち、その手のひらをぱんと合わせて遊びながらウ〜ンと唸ったあと、こんな事を云った。
「そりゃあよ、最中は目茶苦茶ヤリやがってこん畜生とか思わないでもねぇけど・・・・・・でも、お前が俺にする事だろ?だったら結局その行動の原動力は全部愛じゃね?だったら、幸せだなぁと思いこそすれ、怒る理由なんてねえよな・・・・・ってコト」
ああ・・・・・・この人は天使かもしれない・・・・!!!
「今のセリフに胸を撃ち抜かれた・・・・・・!兄さんお願い、僕と結婚して・・・!!!」
「ブハ〜〜〜ッ!お前、最近辛味の利いたギャグかますようになったなぁ!ワハハハハ!!」
反射的に言ったとはいえ本気のセリフを笑い飛ばされた僕は、傷ついた心をコッソリ隠しながら出来る限りの優しさでもって笑い続ける恋人の身体を抱き寄せた。のだけれど・・・・・・・・・・・・・。
「でも、それじゃあお前の気が済まねぇだろうから、兄ちゃんはココロを鬼にしてお前に制裁を加えることにする。これからヤル時は俺、必ず鼻眼鏡を装着するからヨロシク!」
「・・・・・・・・・死刑の方がマシだ・・・・・・・」
「わははははははは!一件落着!!」
という訳で、僕達の性生活の前途には、未だ暗雲が立ち込めているのだった。
御粗末でスイマセン・・・・・・・・・・・・・。