My Favorites
私のお気に入りの、大村雅朗氏関連の曲やアルバムを思いつくままに。なお、紹介順には何の意味もありません。
<作品INDEX>   松田聖子SINGLE  ◆ 「時間の国のアリス」  吉川晃司ALBUM  ◆ 「LA VIE EN ROSE 」
  松田聖子SINGLE  ◆ 「Pinapple」   大沢誉志幸SINGLE  ◆ 「そして僕は途方に暮れる」
  南佳孝SINGLE  ◆ 「スタンダード・ナンバー」   山口百恵SINGLE  ◆ 「謝肉祭」
  郷ひろみ12 INCH SINGLE  ◆ 「Cool/ロング・バージョン)」   豊島たづみSINGLE  ◆ 「とまどいトワイライト」
  辛島美登里SINGLE  ◆ 「くちづけは永遠に終わらない」   薬師丸ひろ子ALBUM(タイトル)曲  ◆ 「PRIMAVERA」
  くま井ゆう子ALBUM  ◆ 「まばたき」 & 「ガール」   アニメ映画サントラ「ペンギンズ・メモリー幸福物語」より松田聖子「Musical Life」
  奥井亜紀ALBUM 「You're the only melody」より「春水面(はるみなも)   渡辺美里SINGLE  ◆ 「My Revolution」
  沢田研二SINGLE  ◆ 「晴れのちBLUE BOY」
松田聖子 シングル「時間の国のアリス84/05/10
時間の国のアリス  作詞:松本隆 作曲:呉田軽穂(松任谷由実) 編曲:大村雅朗
 Producer&Director:若松宗雄/AD:佐藤洋文、杉村昌子/Engineer:鈴木智雄/AE:斉田あとむ、津久間孝成 

 Drums:島村英二 /EBass:高水健司/E.Guitar:松原正樹/Keyboards:山田秀俊/Computer Programmer:松武秀樹
 Strings:加藤紘楽グループ/Chorus:比山 清・木戸泰弘・山川恵津子
(04/8に、サイトMR&Oさんへ書かせて頂いたレビューです)

編曲とは、メロディに施すイコライザーのようなものかもしれません。そのスライダーを下げすぎればメロディは活きてきません。上げ過ぎれば耳障りになります。そんな微妙なスライダーのバランスが編曲職人のセンスなのだと私は思います。この曲のデモを受け取った大村さんは、そのスライダーを意識して"フラット"状態に設定されたのではないでしょうか?

それは、メロディの邪魔になるような音が普段以上に排除されていると感じるからです。イントロやエンディングに全く別のメロディを持ってくる手法も普通に見られますが、この曲には、編曲者自身による強いメロディが見当たりません。目立つのは、強いて言えば、印象的なストリングスとシンセ・パーカッション位でしょうか。ギターは印象的ですが、これは全体のノリを維持する、軽くスキップしたくなるような、ミュート・リズム系がメインです。リードでさえも、言わば全体のノリを強調ためのリフだけのような印象です。全体的にこのリズムで押し通しています。

これはユーミンという、稀有なメロディ・メーカーの楽曲の良さが際立っていたからかもしれません。そのためか、必要以上に楽器でコード感を強める処理も感じられません。「如何にメロディを魅力的に聞かせるか」に徹した編曲だと思います。だからユーミンの曲と言えども、気負いを感じさせない、もちろんギミックも排除した作風になったのだと思いました。

この曲は、ファンタジーな内容でふと錯覚しそうですが、意外にも音的には黒人系の軽いファンク系のノリを感じます。それは、親指のスナップと弦の震えが感じられるようなベース音がポイント。その結果、この曲は、詞:白人文化、音:黒人文化、歌:アジア(のミューズ)が三位一体化した楽曲と言えると思います(笑)。

アジアと言えば、聖子さんの詞の世界は、モチーフは欧米風が多いですが、「心象風景」は決して欧米ではないと思います。この曲では的確な例ではなく分かりづらいですが、でも一言「鳶色」が出た段階で、既に「和」の心象風景と言えます。何故なら、この色、英語では単なる"Dark Brown"でしかないですから。欧米には、こんな繊細な色の認識はありません。「浅葱(あさぎ)色」とか日本語の色表現の多彩さは驚かされます。色一つの表現でさえそうですが、松本さんの描く詞の世界は、心の動きに至っては、日本文学の「和」の要素をしばしば感じています。

私はある時、松本さんによって描かれる聖子さんの女性像は、欧米風でありながら、実はどこまでも「繊細な和の女性」なんだなぁふと気づき、とても驚いた事がありました。この世界は、「日本の財産」、だと思いました(いや「世界遺産」かもしれません(笑))。

吉川晃司 アルバム「LA VIE EN ROSE 」 (MD32-5002)〜1984年      TOPへ戻る 
LA VIE EN ROSE
 Producer:木崎賢治(for WATANABE MUSIC)/JIRO ONOYAMA(for SMS RECORDS)/Director:HIROSHI KAWAZURA(for WATANABE MUSIC)
 Recording & Mixing Engineer:TATSUYA SAKAMOTO /AE:TAKASHI   ITO 
 Recorded & Mixed at SEDIC STUDIO・STUDIO TAKE ONE/Date from JULY toSEPT.,1984 

 EBass:TOSHIHIRO NARA/E.Guitar:今剛・北島健二/Keyboards:西本明・富樫春生/Computer Programmer:松武秀樹/Sax:HIROYASU YAGUCHI/Vocal & Chorus:吉川晃司/ Special Thanks:大沢誉志幸・NOBODY

  1.「No No サーキュレーション」words by 安藤秀樹/song by 大沢誉志幸 編曲:大村雅朗
    
※のっけから「やられたっ!」と言えるとてもつもなくかっこいい曲。今聴いてもデジタルのドラム音が安く聞こえないことが、当時のプロの仕事/力を感じます。
  2「.LA VIE EN ROSE」words by 売野 雅勇(まさお)/song by 大沢誉志幸 編曲:大村雅朗
  3.「ポラロイドの夏」words by 麻生圭子/song by 原田真二 編曲:大村雅朗
  4.「サイレントムーンにつつまれて」words by 安藤秀樹/song by 伊藤銀次 編曲:大村雅朗
    
※何度聴いても飽きない本当に名曲。キーボード中心のアレンジも秀逸でこれが名曲にしている。聞いてない人にはマストな曲です。
  5.「サヨナラは八月のララバイ」words by 売野 雅勇(まさお)/song by NOBODY 編曲:大村雅朗
     
※シングル曲。最初のガラスが割れるサンプリング音が今聴くと、逆にとても新鮮。メロディのノリに沿ったギターのリフが効果的。
  6.「グッド ラック チャーム」words by 安藤秀樹/song by 伊藤銀次 編曲:大村雅朗
  7.「Border Line」words by by 安藤秀樹/song by NOBODY 編曲:大村雅朗
  8.「BIG SLEEP」words bby 麻生圭子/song by 原田真二 編曲:大村雅朗
  9.「She's gone-彼女が消えた夜」words by 安藤秀樹/song by 大沢誉志幸 編曲:大村雅朗
 10.「太陽もひとりぼっち」  words by 麻生圭子/song by 原田真二 編曲:大村雅朗

訳せば「バラ色の人生」。シャンソンにも同じ曲がもあるが(別曲)、同名のシングルタイトルを冠したアルバム。最高に「かっこいい」サウンドが聴けます。名盤です。全曲大村さんのアレンジです。(以下某サイトに私が書いたレビューです)

正に名盤。このアルバムの本当の価値を誰も正当に評価していないと思います。何故なら吉川の自作曲じゃないし、吉川は当時、渡辺プロの「アイドル」だったから。だから、きっと評論家がこれを認めるにはプライド許さないのだろうなと思う。安っぽいプライドなのだ。アルバムのクオリティは日本のJ-POP史上屈指の内容。とにかくトータルに素晴らしいサウンド。きっと吉川晃司を全然知らない人ような先入観がない人だけが、この盤の素晴らしさに素直に感動できるんだと思う。余分な「知識」は要らない。

吉川の個性的なボーカル、作品のクオリティ、プロデューサー木崎氏、スタジオ・ミュージシャン、特にギターの今剛、北島健二等のプロフェッショナルなワーク。
そしてアレンジャーの大村雅朗(まさあき)氏である。ギターや先鋭的なシンセサウンドをフィーチャーした音創り。彼がいなければこのアルバムは成立していないのは誰の目にも明らか。大村氏の早すぎた死を悼みつつ、J-POPの宝物を是非聴いてみて下さい。04年の今聴いても未だ「先鋭的」です。プロの仕事です。特にお勧めは4曲目の「サイレントムーンにつつまれて」。胸が抉られるようにただただ切ない・・・。

松田聖子 アルバム「Pinapple」 1982/5/21      TOPへ戻る 
Pineapple  Producer&Director:若松宗雄/Engineer:鈴木智雄/AE:斉田あとむ ;Recording Date March-April,1982 at CBS/SONY信濃町Studio

 Drums:滝本季延・菊地丈夫・渡嘉敷祐一・島村英二・林立夫/E.Bass:高水健司・伊藤広規・岡沢茂・岡沢章・美久月千晴/E.Guitar:松原正樹・青山徹・椎名和夫/F.Guitar:笛吹利明・安田裕美・吉川忠英/F.Mandolin:吉川忠英/Keyboards:山田秀俊・西本明・大谷和夫・倉田信雄・松任谷正隆・新川博/Accordion:風間文彦/Harmonica:八木伸朗/Percussions:ペッカー・浜口茂外也・斉藤ノブ/Flute:衛藤幸雄/Horn:沖田グループ/Harp:山川恵子/Chorus:山田秀俊・バズ・広松美和子・尾形道子・須藤薫/Strings:多(おおの)グループ・加藤グループ・トマトグループ

 1「 P・R・E・S・E・N・T 」 作詞:松本 隆 作曲:来生たかお 編曲:大村雅朗 / 2 「 パイナップル・アイランド 」 作詞:松本 隆 作曲:原田真二 編曲:大村雅朗
 3 「 ひまわりの丘 」 作詞:松本 隆 作曲:来生たかお 編曲:船山基紀   /4 「 LOVE SONG 」作詞:松本 隆 作曲:財津和夫 編曲:瀬尾一三
 5 「 渚のバルコニー 」作詞:松本 隆 作曲:呉田軽穂 編曲:松任谷正隆  / 6 「 ピンクのスクーター 」 作詞:松本 隆 作曲:原田真二 編曲:大村雅朗
 7 「 レモネードの夏 」 作詞:松本 隆 作曲:呉田軽穂 編曲:新川 博  / 8 「 赤いスイートピー 」 作詞:松本 隆 作曲:呉田軽穂 編曲:松任谷正隆
 9 「 水色の朝 」  作詞:松本 隆 作曲:財津和夫 編曲:大村雅朗  / 10 「 SUNSET BEACH 」作詞:松本 隆 作曲:来生たかお 編曲:大村雅朗
(04/8に、サイトMR&Oさんへ書かせて頂いたレビューのロングバージョンです。まずはアルバム全般について)
軽いフランジャーが掛かったシンバル音?が聞こえてくる度、何年経ってもワクワク(ゾクゾク)してきます。もう「パブロフの犬」状態です(笑)。おそらく体に沁みついてしまったのでしょう。そして、この少し長めのオープニングの焦らしが、これから始まる「ちょっと爽やかな風が吹く、暑い夏の一日」を期待させてくれます・・・。

これは本当に名盤です。個々の楽曲の素晴らしさももちろんですが、私は「コンセプト・アルバム」という観点から見ても、完成度が非常に高い名盤だと思っています。
「コンセプト・アルバム」というとついロック系を連想してしまいがちですが、「アイドル」という特定の視点上とは言え、思春期の微妙な心の揺れを、「松田聖子」という一人の女性の夏の日々を通じて見事に描いています。こういう世界はロック系では有り得ないし、完成度の高さにおいても堂々と「Rockの名盤」と対峙できるアルバムだと言えます。これは詞の松本隆さんの力と、全編作詞と言うことがとても大きい・・・。

サウンド的には、まだ本格的なデジタル時代の直前と言う事もあり、今の音に比べればかなりアコースティック、いやパイナップルなので「オーガニック」(それもかなり贅沢な)的と言えるでしょうか(笑)。デジタル度もとても限られていて、生のドラムが今聞くととても新鮮です。これが「オーガニック」度を高めているのかも?今のリズム前面時代に比べて、心地よい(生の)ドラムのバランスにとても和みます〜。ボーカルも活きてます。
聖子さんのボーカル的には、それまでの「若さ一杯張り上げ」系から「息をそっと抜くことによる切なさ感の表現」に本格的に入った頃でしょうか?松本さん的には、それまでユーミンの独壇場であった「生活感の薄さ/リゾート感」みたいな質感を、聖子さんを通じて自分のものにしていった作品でもあると思います。

このアルバムは、「聖子プロジェクト」としても、内容の充実度と密度において最初の「ブレイク・スルー」だったように思っています。このアルバムで初めて、後の名作の方法論が確信できたのかな?と感じます。また歌謡曲とニューミュージックの垣根が曖昧になり、その後の多くのアイドルのアルバム制作方法論に影響していったアルバムとも思います。

アルバムの紹介を見て思い出しましたが、このアルバムはジャケットからして違っていましたね。当時 (CBS)SONYしか出せなかった独特の色がありました。何でも印刷で特定の色を「抜く」らしいですが、このジャケットもとても品のいい、他にはないYellowでした。(ただCDでは再現できていないのでとても残念です・・・)歌詞カードも "POP感"一色でしたね。大好きでした。

私はこのアルバムから、「水しぶき」「グラスに付いた水滴」「雨上がりの虹」「風にそよぐ新緑」「水辺を渡る風」「凛としたひまわり」みたいな言葉を連想します。とても瑞々しい。
年齢が幾つになっても、「青春」を追体験できる大切なアルバムです。毎年初夏に必ず何度か聴くアルバムです。

最後に、
冷えたレモネード、薄いスライスを噛めば切なさが走る》「レモネードの夏」
この詞があのメロディによって、あのボーカルに乗った瞬間の心象風景は正に「奇跡」だと確信しました(^^)。

(大村さん担当の楽曲について)
このアルバムでは全10曲中、半数の5曲を担当。ただ1曲目と最後の曲を担当していることからも、全体のサウンド・コンセプトの中心を担っていると思います。
船山さん(大村さんと同じ歳)、と瀬尾さん(大ベテラン)が比較的大人し目の曲であり、また松任谷さんが持ち味の「おっとりゴージャス系」(私の印象(笑)であるのに大して、大村さんはキレのある、どこか緊張感の漂うサウンドになっているような印象です。これにより全体の流れが締まった印象を受けます。ちなみに新川さんの曲「レモネードの夏」は、この曲に関してはどちらかというと大村さんと同じ様な印象ですが、とにかく名曲。その一言。新川さんは松任谷さんの流れでの起用でしょうが、大村さんだったらどう料理されたしょうか・・・?

大沢誉志幸 シングル「そして僕は途方に暮れる」1984/9/.21       TOPへ戻る 
「そして僕は途方に暮れる」   作詞:銀色夏生 作曲:大沢誉志幸 編曲:大村雅朗
なんと言っても、アレンジである。淡々と繰り返されるキーボードのフレーズと固めのスネア(ドラム)で決まりある。

もちろん素材の楽曲が良いのは言うまでもないが、ただこの曲は、構成的には昔からとても多い「半音進行パターン」ベースの曲である。荒っぽく言ってしまうと「ありがち」なタイプ。パターン化に陥りやすい危険を持っている。「ありがち」の表裏の関係であるが、このタイプの曲は料理次第で、バラードにもフォークにも歌謡曲にも如何様にもなる。だからこそ、楽曲のカラーを決める意味で、「アレンジ」の要素が重要である。

この曲のアレンジ=極めてセンスの良い、特徴的なリズム=で「パターン化」を回避し、記憶に残る名曲に仕上げている。ダメを押すように、個性的なボーカルもパターン化から救っている。この曲に、いつまでも残る曲としての"エバーグリーンの息吹"を吹き込んだのは正にアレンジの力だと思う。

NY・パワーステイション録音。大村さんにとってこの時の経験は大きい意味を持つことになったと思う。確か、現地のスタッフにとても気に入られ、NYに来ることまで勧められたと、何かのインタビューで読んだかすかな記憶があります。氏も迷った時期もあるのでは・・?最近も映画のサントラに使用されたようですが、今後とも愛され続ける名曲だと思います。

※しばらく前に、TV(TV東京:関東圏/30分番組)でこの曲の誕生秘話を、大沢氏とディレクター氏?が出演されていろいろ語っていました。私も大村氏の事もあり、大いなる関心を持って見ていました。例のキーボード・フレーズの件も、もちろん話題になりました。でも、この曲に関して、「大村」という言葉は両者からは何故か「一言も」出てきませんでした・・・。何故なんでしょうか???この曲にとってアレンジは、楽曲と同じレベルでとても大切ポイントだと思うのですがねぇ・・・。

南佳孝 シングル「スタンダード・ナンバー」1984/4       TOPへ戻る 
「冒険王」(アルバム)
注)アルバムのジャケットです
 作詞:松本隆 作曲:南佳孝 編曲:大村雅朗
 Producer:松本隆・南佳孝/Excutive Producer:石井俊雄/Director:浜野啓介・原公一/AD:今泉雅史/Recording Engineer:大城健/Remix Engineer:吉田保/AE:三好慎一・大田安彦(S.C.I)・津久間孝成・川部修久 (Recording Date:Feb.2.11-May16,1984 at CBS/SONY信濃町Studio)
(ミュージシャンは「スタンダード・ナンバー」のみ表記)
Drums:島村英二/E.Bass:伊藤広規/E.Guitar:松原正樹/Keyboard:富樫春生/Computer Programmer:松武秀樹・鈴木浩之/Horns:ジェイク・H.コンセプション・村松健・数原普・小林正政・新井英治/ジョー・ストリングス/Chorus:山田秀俊

南さんの曲は洒落たイメージのものが多いが、曲の構成を分解してみると、意外にもテンション・コードや分数コードが少ない(誤解を恐れずに言わせてもらえば)構成的には、いわゆる歌謡曲・演歌・フォーク系とほぼ同じである。(注:もちろん、曲の良し悪しとか、レベルの上下とかを言っているわけではありません。あくまで、音楽的な分析です。誤解なきよう・・・。)

上の「そして僕は途方に暮れる」以上に、南さんの曲の多くはアレンジ一つで如何様にもなってしまうタイプだと思う。だから「編曲」は南さんの楽曲全般について、とても大事な要素であると思う。

大村さんも、この曲をありがちな「歌謡曲」にしたくなかったのだろう。イントロからちょっとJazzぽい、印象の強いテンション・コードのピアノを配置している。そしてすぐに、これも全体の印象を決定的にしている強い(デジタル)スネアが入り、全体をこれで通している(フィルインでは生のスネアも入っている)。これで尖った印象を決めて、あとはオブリガードで緊張感を維持している。間奏のブラスは南さんの持つJazzyな雰囲気から採用されたのだろうか、曲調に合った、切れの良い演奏を聞かせてくれてます。

聴きやすいメロディに、NewWave的なスピード感と緊張感、ほのかなJazzテイストをまぶした名曲ですね。
山口百恵 シングル「謝肉祭」1980/3/21       TOPへ戻る 
「謝肉祭」  作詞:阿木燿子作曲:宇崎竜童 編曲:大村雅朗
「指揮棒」が似合う曲だと思う。きちんとした譜面が予め準備された曲に間違いない。演奏家によるアドリブ部分は少ないと思う。

70年半ば-80年代初めまでの編曲は、事前に綿密に譜面を書き演奏家に渡す従来のタイプのものに加えて、「ティン・パン・アレイ」等に代表される、ミュージシャンによる現場セッション形式ものが混在し、いわば過渡期はなかったろうか?この曲は間違いなく前者のタイプであろうが、こういう曲にこそ編曲家の真の実力が如実に表れると思う。こんな編曲が出来るところに、大村氏の奥深さとルーツ(YAMAHA)を感じる。

80年代半ば以降の、バンド・スタイルの曲や打ち込みベースの曲しか知らない人には、この、オーケストラ然とした丁寧な楽曲構成には、少なからずの驚きがあるであろう。何せ生楽器のオンパレードである。それに演奏が各コーラス毎に微妙に変化するのである。同じパターンの繰り返しと言った安易なものではない。豪華な曲だとも思う。楽器の数が多い分経費的にも大変だったと推測される(?)。きっと往時の大スター、山口百恵さんだったからこそ実現できできたのかもしれない。

少なくとも現代のオリコン・チャートに見られる音楽事情では、こんな楽曲は生まれないであろう。それはマーケットや制作費や楽曲以前の問題。つまり今の音楽のメインストリームの”アーティスト”や"プロデューサー"と呼ばれる人たちに、まず音楽的にここまでの力がある人はごく僅かだと思うから・・・。例えば、単に鍵盤を押すだけのシンセ/サンプリング・ストリングスではなく、弦の譜面を本当に書ける人は少ない。この差は「素人」と「プロ」の差である。言ってみれば、「音は出せるけれど、「音楽」は出せない」人が多い、という感じであろうか・・・?この違いは大きいと思う。この曲を聞かされると、きちんとしたプロの編曲が恋しくなるばかり。それが、必ずしも私の懐古主義的センチメンタリズムだけではないと思いたい。


郷ひろみ 12インチシングル「Cool/ロング・バージョン)」1985/10/2       TOPへ戻る 
「Cool」  作詞:大江千里 作曲:大江千里 編曲:大村雅朗
バッキング(アレンジ)とメロディが対等の関係にある曲だと思う。

それはメロディだけ歌ってみるとすぐわかる。曲が「隙間」だらけになってしまうから。メロディとバッキング/アレンジは「掛け合い」的な関係にもある。二つがお互いを補完して、一つの曲として成立しています。

最初にバッキング・パターンが出来て、その後でメロディをはめ込んでいったのかな?なんて勝手な推測をしております。

同じリズム・パターンを淡々と繰り返す手法は「そして僕は途方に暮れる」等とも同じですが、この曲の温度は正に"Cool"そのもの。熱くない分、繰り返し聞いても飽きのこない魅力があります。郷氏の歌い方には好き嫌いが分かれるかもしれませんが、この曲はあまり張り上げていない分、多くの人に受け入れやすいタイプになっています。シンセの音色も大村氏の好む色が満載?ご存じない方に、是非一度聴いて頂きたい曲です。今聞いても"Cool!"
豊島たづみシングル「とまどいトワイライト」1979/        TOPへ戻る 
Sorry No Jacket  作詞:阿木燿子作曲:宇崎竜童 編曲:大村雅朗
出だしの南米ぽい民族系ドラムやケーナ(?)の音色に、チェンバロやハープ、A・ギター等の多彩な楽器が絡む、生楽器オーケストレーションです。70年代末の作品であり、上の「謝肉祭」と同様、きちんと譜面が用意されたと思われる「編曲家」らしい作品になっています。繰り返しになりますが、この辺に氏のしっかりとした音楽的基礎を感じます。

イントロのケーナ(?)の音色は、この曲の内容である哀愁感や寂寥感を象徴する大事な楽器になっていると思います。フォルクローレをモチーフとした楽曲は、当時はざっと思い起こすだけでも、S&G、松任谷由由実、長谷川きよし+加藤登紀子など結構多かったですが、全体的にフォルクローレのカラーのままのものが殆どで、このように部分的に使用した例は少ないと思います。結構難しいカラーの組み合わせだと思いますが、この楽曲はとても上手く仕上げていると思います。

TVドラマの主題歌でした。とても素晴らしい楽曲ですが、このシングルのカップリング曲(当時は「B面」)の「寝た子を起こす子守唄」も隠れた名曲です。小川範子さん他結構何組かにカバーされています。音楽ファンでしたら要チェックの楽曲ですヨ。

辛島美登里 シングル「くちづけは永遠に終わらない」1996.1.31        TOPへ戻る 
恋愛事情
注)アルバムのジャケットです↑
くちづけは永遠に終わらない
作詞:松井五郎  作曲:辛島美登里 編曲:大村雅朗

Producer:辛島美登里/Excutive Producer,General Producer:略/Recording Engineer:鈴木智雄/梅津達男/他
(ミュージシャンは大村雅朗セッションのみ表記)
Drums:島村英二/E.Bass:美久月千晴/E.Guitar:松原正樹/Keyboard:大村雅朗/SynthesizerOperator:浦田恵司・迫田 到・石川鉄男・Seiichi Takubo・大村雅朗/A.Guitar:吉川忠英・Masayoshi Furukawa/Strings:加藤JOEグループ/Harp:朝川朋之

この方の大きな特徴はその「声質」。とても繊細でウェット。この声の好き嫌いがそのままこの方の音楽の好き嫌いに直結している人も多いのではないかと思っています。こういう声質の場合、しっとりとしたバラードは「直球」すぎて重くなりすぎるんじゃないかなぁ・・・?私としては、この方の場合Upbeatのリズム(この曲の場合は、サンバですが)の方が「歌を伝える」という意味では効果的ではないかと思います。そして曲に関して、この選択は正しかったと思いました。

そうサンバ系の編曲ですね。それもおもいっきり。加えて特徴的なのが、最初のメロディに入ってから後ろに流れてくるシンセのオブリ。入り方の意外性、その曲へのはまり方。これは大村さんのアレンジの特長ですね。これだけでも好きになりました。この曲を思い浮かべるのはまずこの箇所です。全体のサンバの楽器も良い雰囲気です。

繊細でWetな声が派手目のリズムに乗った時、良い具合に中和されてリスナーに伝わってくるものだと感じる曲です。

※唯一残念なのは、シンバルの音。いかにもというサンプリングぽさが私は苦手。何か一気に醒めてしまう気がするんです・・・。これは大村さんに限らず、打ち込み系音楽全般に言えます。本当はこれだけでも生に差替えて欲しかったデス。あとストリングスも絶対生で聴きたかったなぁ・・・更に曲が良くなったと思います。

薬師丸ひろ子 アルバム・タイトル曲「PRIMAVERA」91.03.13        TOPへ戻る 
PRIMAVERA
作詞:紅葉降(MOMIJI OROSHI)  作曲:大村雅朗  編曲:大村雅朗

 Keyboard:大村雅朗/E.Guitar:松原正樹/SynthesizerOperator:迫田 到・石川鉄男/Strings:加藤JOEグループ/Harp:山川恵子

なんて美しい曲でしょう。氏の書いた曲の中で一番好きなものを・・・と聞かれたらの候補リストの中に入っております(もっとも一番の曲は決めようがありませんが・・・(^^;)

ピアノとストリングス、ハープ等で構成された、クラシカルでリリカルで芳醇なバラード曲。ヴァイオリンのソロも含めて、生の楽器の美しさも味わえます。ドラムレス、ベースレスであることがこの曲の特徴でもあります。

久しぶりに聴いたボーカルも、初期の頃の何となく「誰かに歌わされている」と言った訥々とした感じではなく、自らの意思を感じさせる情感を込めたボーカルに変化していました。

この方は、本当は、まずボーカルを録りその後にオーケストラを歌に合わせて再度はめ込むのが一番良いんじゃないかとずっと思っていました。それは彼女は独特のリズム感がある(ない(^^; )ので、POP MUSICの手法=同じビートのリズムで流されて歌う歌い方は似合わないとずっと思っているからです。この曲は、もちろん実際は違うとは思いますが、そんな方法だったのかなぁと思わせるほどボーカルと演奏が寄り添うように歩んでいます。

タイトルは歌詞の内容から来るのでしょう「春」の意味ですが、この曲は、凍えるような冬の夜空、満天の星座を仰ぎながら聴きたいような透明で美しい楽曲です。

くま井ゆう子 アルバム「まばたき」1992.12.02「ガール」1994.02.21      TOPへ戻る 
まばたき 「まばたき」1992.12.02  Sony Records
帯のコピー:「まばたきする間に、季節がかわった。19才。輝く才能のシンガー・ソング・ライターくま井ゆう子ファースト・アルバム。」


All Songs Written by くま井ゆう子
Produced and Arrangements by 大村雅朗/Co-produced by Masashi Wada/Directed by Motohiko Kohno/Recorded and Mixed by 梅津達男

Keyboard:大村雅朗・西本明/Bass:美久月千春・高水健司/E.Guitar:松原正樹・佐橋佳幸/A.Guitar:吉川忠英・笛吹(うすい) 利明/Harp:八木信夫/Manipulators:石川鉄男・迫田到・Takayuki Negishi・土岐幸男・木元靖夫/Chorus:木戸泰弘・比山貴詠史・広谷順子・安倍恭弘・村田和人/Strings:篠崎Group

ガール
「ガール」1994.02.21 Sony Records
帯のコピー:「一人で泣くのは簡単だけど、一人で笑うのはむずかしい。」


All Songs Written by くま井ゆう子
Produced and Arrangements by 大村雅朗/Co-produced by Masashi Wada/Directed by Motohiko Kohno/Mixed by 梅津達男/Recorded by 鈴木智雄:Junichi Yamazaki:Tatsuya Kawakami:Yoshiaki Matsuoka

Keyboard:大村雅朗・西本明・平野弦/Bass:美久月千春/Drums:青山純・江口信夫/E.Guitar:松原正樹・鈴木茂・松下誠/A.Guitar:古川昌義・藤井丈司/Steel Guitar:今剛/Manipulators:石川鉄男・橋本茂昭・浦田恵司・松竹秀樹・藤井丈司/Strings:JoeStrings/Chorus:杉真理


愛おしいアルバムである。感慨深い作品である。90sに於いて、大村さんが新人アーティストを全面プロデュースした作品である。

2枚とも大村さんが「プロデューサー」としてクレジットされている。この場合の「プロデュース」とはどの範囲を指しているのだろうか?私の推測であるが、くま井さんはSONYのオーデション経由で18歳でプロデビューした人であるし、また往事の氏の実績から考えれば、単に楽曲のレベルの話ではなく、「アーティスト」としての方向を一から示す作業ではなかったろうか?多分、アートワークや予算管理以外での音楽に関連すること全てに関わったように思う。

音楽的には、スタジオ・ミュージシャンのクレジットや構成から推測できるように、基本的に(シンセを含む)生の楽器で制作されている(「まばたき」のドラムは打ち込み)。補足的にサンプリング系の音等が入っている感じである。

サウンドは、特に「ガール」の方は安定した大村サウンドといったところかな・・・。ちょっとシビアに言えば、「ガール」の方は80sの焼き直しの感もなきにしもあらず??ただ「まばたき」は逆に70sの香りも感じる素直でオーソドックスなPOPSでもあり、氏が得意とした80sのデジタル・ビート曲とは違った氏の別の側面も味わえる。どちらも大きなサプライズはないが、その分純粋に「歌」を聴かせるアレンジとなっている。これは、くま井さんのアーティストとしてのキャラクターに沿った選択だろう。もちろん私はどちらも好きなアルバムである。

SONY、もしくは大村さんは、くま井さんをNEW MUSIC系GIRL POPアーティストとして育てたかったのかも・・・?それは「ガール」においては(声質も関係しているのかもしれないが)渡辺美里さんぽい影がちょっと見え隠れしている。(2〜4枚目では徐々に、80sのユーミン、REIMY、熊谷幸子、槇原敬之、須藤薫、今井麻起子さん等のテイストも感じられてくる)。特に「ガール」に於いて杉真理さんが参加されている事が、この人の本来の音楽カラーや方向性を示唆していると言えるかも。なぜなら(氏の作品ではないが)この後の「100%恋愛」ではよりPOPフレーバーが強くなっている。つまり、くま井さんはどちらかと言うと「女性版(初期の)槇原敬之」さんのような"若きPOPS職人"的佇まいを感じる人だと思う。私的には、この延長上で、 80sの須藤薫さんや今井麻起子さんの松任谷正隆さんのサウンド、若しくは松本伊代さんの名アルバム「天使のバカ」などの船山基紀さんのサウンドもはまった気がしている・・・。何れにしても、くま井さんが現在表だった活動をされていないことがとても残念です。惜しいと思う。きっと時代やタイミングが悪かったのかもしれない。「時の運」はPOP MUSICの、悲しくも、でもとても重要な要素であると感じる。

話は逸れるが、この当時のSONYはまだ良心的な音楽会社だったと思う。そして昔のSONYなら、この人がブレイクするまでもっとじっくり育てていたと思う。90s中〜後期よりSONYはひたすら「利益」を追求企業になり、この辺の才能あるアーティストや中堅どころをどんどんリストラし、今のような「第二のAVEX」のようなしょーもない会社に成り下がってしまったと感じる。第一じゃないところも情けない。「利益あって(音楽の)新資産なし」の体質になりつつあると感じる。これは余談だったが、こんな人がもっともっと出てきて欲しい、昨今のちょっと"さむい"音楽状況である(^^;。

アニメ映画サントラ「ペンギンズ・メモリー幸福物語」より松田聖子「Musical Life」1985/6/21      TOPへ戻る
「幸福物語」
作詞:松本隆 作曲:大村雅朗  編曲:大村雅朗 歌:松田聖子


♪ まるで、ミュージカぁルぅ〜 ♪と歌われる、そう、まさにそんなファミリー向けミュージカル・ソングのような趣の楽曲です。一連のヒット曲のアレンジャーorコンポーザーとしての大村さんしかご存知ない方にとっては、とても"異色"で驚きの楽曲だと思います。もちろん、聖子さんのファンでこの曲をご存じない方にも是非聴いて頂きたい曲です。

これは「ペンギンズ・メモリー〜幸福物語」のサントラに収録された曲ですので、作風も普通の曲とは随分違います。ハト時計の時報の鳴き声やオーブンの「チンッ」音、更に空を飛ぶ音や「カタコト」音、鳥の鳴き声などの歌詞に沿った効果音、それと幼い合唱団のちょっと頼りなげな?でも一所懸命なコーラス。どれもとても楽しいです。聴くたびほのぼのとして、それこそとても幸せな気分させてくれます。
それと後半、八分音符のハイハット(シンバル)音が蒸気機関車のシュッシュッという音オーバーラップします。こんなお遊び感覚の細かいアイディアや仕掛けがあって、本当に楽しくなります。

一連のヒット曲の作品しかご存じない氏のファンの方、これは必聴曲ですよ〜。

※ちなみにこの曲は、残念ながらこのサントラ盤及び、あ・の「SEIKO SUITE」にしか収録されておりません・・・(誠にもったいない話です)。

奥井亜紀 アルバム「You're the only melody」より「春水面(はるみなも)」1996/11/30    TOPへ戻る
You're the only melody 作詞:奥井亜紀 作曲:大村雅朗  編曲:大村雅朗

Synth Op.石川鉄男 / Key 大村雅朗 / EG.松原正樹 / AG.吉川忠英 / F.Bass 高水健司


最後のフレーズ聴いたとき不覚にも涙が出ました・・・。切ない曲です。名曲です。詞と曲が見事に溶け合っています。この曲にとって、他の詞も、他のメロディも今となってはあり得ないように思えます・・・。

発表された時期を考えるとかなり最後の頃の(作曲)作品です。しみじみとした、でもどこか寂寥感を感じさせる曲調に氏の体調を重ねるのは私の考え過ぎでしょうか・・・?何れにしても、氏の作品の中でも、特に名曲と言って過言ではありません。奥井さんの詞がまた素晴らしいです。最後の一行がまるで映画の一シーンのように鮮やかに心に迫ります。今からでも、是非多くの方に聴いて頂きたい曲です。

※もしどなかがこの曲をカバーするのであれば、それは松田聖子さん以外にいないでしょう。そんな事をふと感じました・・・。


渡辺美里 シングル「My Revolution」1986/01/12     TOPへ戻る  
MY REVOLUTION 作詞:川村真澄 作曲:小室哲哉 編曲:大村雅朗 (EPIC SONY)
この曲は、「小室さんの作家としての出世作」とか「渡辺美里さんを世に知らしめた代表曲」等と語られることが多いですね。それは事実ですが、でも私の場合はちょっと違います。それはこの曲はまずバックトラックありきなんです。

この曲を思い出す時は、曲本体よりもまずイントロの4小節(x2)とか2コーラスに入る直前のドラムの巧みなフィルとかばかりなんです・・・。つまり曲本体やボーカルよりも、バックトラックが聴きたくなってしまうのです(^^;。この曲に限らず、このような事は大村雅朗さんのアレンジ作品には良くあります。その辺が"大村マジック"なのかもしれません・・・。そんな、バックトラックが特に印象的な楽曲です。

イントロの4小節(x2)のシンプルなパターン、つまりバス・ドラム4つ打ち、コードを奏でるキーボード&それとレイヤーになっているかすかに薄いシンセボイスのコーラス、そして印象的なシンセ・グロッケンのシーケンス・パターン。たったこれだけでもうゾクゾクさせられます。何故だか自分でも良くわかりません。不思議です。でも何度聴いても決して飽きることがありません。良い音楽は決して「音数」とか「楽器数」では無いことを端的に教えてくれる曲だと思います。特に大村雅朗さんの楽曲はこういうシンプルでも印象的な傾向が多く見られると思います。そしてこの曲は、私にとってはこのアレンジ無しでは聴くことができません。

※大村さん自身によるストリングス中心の別バージョンもありますが、やはりこれが一番かと思います。

この曲はレコード大賞で金賞を獲得した作品でもあります。私は選定過程の不鮮明さから「レコード大賞」を特別評価する者ではありませんが、それでもこ曲が金賞と言うことは、賞の選定に於いて誰もが外すことのできない程の楽曲であった、つまりそれだけ質が高い作品であったことの証左であると思います。

いつまでも色褪せることがない、ジャパニーズ・スタンダードの一曲です。



沢田研二(JULIE & EXOTICS)シングル 「晴れのちBLUE BOY」  1983/05/10     TOPへ戻る  
晴れのちBLUE BOY
作詞:銀色夏生/作曲:大沢誉志幸/編曲:大村雅朗


 (補足)EXOTICS:Guitars:柴山和彦/安田尚哉  Bass:吉田健   Drums:上原豊   Keyboard:西平彰


振り返ってみて初めて「奇蹟」としか思えないような"時代(とき)の巡り合わせ"を感じる曲がある。それがまさにこの曲。もし『歌謡曲の殿堂』というものがあれば、この楽曲は、後世に残るであろうその特異性と突き抜け方において、間違いなく真っ先に殿堂入りすべき曲である。

この曲の構成因子は、作詞=銀色夏生/作曲=大沢誉志幸/そして編曲=大村雅朗等作家達。その卓越したインスピレーションのMixture。ミュージシャンEXOTICS(*)。そしてプロジェクトのメインであるフロントに立つ歌手、JULIEこと沢田研二。更には、所属プロダクション及びプロジェクトの冒険心・野心等々。

でも忘れてならないのは、これらを一つに導くような"不思議な緊張感のある時代の空気"。それらが全て揃わなければ、更にそれらも、あたかも惑星整列時のように同じ時空軸で一直線にならなければ、こんなにマス(大衆)の支持を最初から排除したような特異な曲がシングルとして表に出ることはなかったと断言できる。

サウンドには当時のイギリスの某グループの影響を感じる事はある。全編に突き抜けた"摩訶不思議感"が漂う。それは、歌詞
♪ 言いたいことはヤシの実の中 ♪ に代表される銀色の独特な感性のためか。Gayを連想させる"BLUE BOY"なんていう言葉の選択も、やはり当時のJULIEならではでしょう・・・。でもそれにも増して、リズムセクションだけで押して行くような、音の中に独自のエゴイズム感さえ漂うサウンドは、当時としても斬新そのものであった。この曲はやはり大村雅朗氏でなければ絶対成立し得ないものである。独壇場だ。

稀代の問題作、或いは実験作・・・、蓋(けだ)し名曲。

繰り返しになるが、この曲の制作陣も素晴らしいが、これを発表できた当時の沢田研二というスターのポジションの高さ、更にそれを容認した(せざるを得なかった?)所属プロダクションのプロジェクトの勢い、何が一つ欠けてもリリースされるチャンスはなかったであろう。正に奇跡だ。ただ逆に言えば、あの沢田研二さんも "JULIEプロジェクト"の一員であってこそ初めてここまで輝けたのであろう(これも振り返ってみて気付いたことであるが・・・)

(*)EXOTICSというバンドの起用は、当時、音楽マーケット上重要なメディアであったTVにおいて、その露出時にこの楽曲の再現性を考慮した必要上のものだったのかもしれません。なんせ普通の、臨時のオケではちょっと再現不可能でしょうから・・