ロードスター・パーティーレース NR-Aリポート


●NR-Aパーティーレース。気軽に誰でも始められるレースがスタートして、今年で2年目。
 いよいよ本格的にタイムアップしたいのだが、どうすればいいのか?

●なぜ今年NR-Aに乗ることになったのか・・・
 「ドライビング講座」という座学でクルマのコントロールについてトコトン突き詰め、安全にサーキット走行を楽しんでいただく
ための講義をディーテクニックでは行っておりますが、サーキット走行会から気軽にステップアップ出来るナンバー付きレース
としてNR-Aに非常に興味を持たれる方が、増えてきました。
実際に筑波2000 NR-Aの参加者に「最終コーナーは4速のまま行けますか?、3速に落とすならどのあたりですか?」
「タイヤの空気圧は思いきり高い方が良いと聞いたのですが、本当ですか?山はあった方が良いのですか、少ない方が良い
のですか?」と言った質問を受けても正確に答えることが出来ませんでした。
ワンメイクレースは市販ラジアルタイヤを使用し、パワーも低く非常に微妙なところでバランスを取るクルマなので、ドライビン
グ、セッティングともに通常の常識が通用しない場合が、あります。
そんな中、ドライビング講座も受講していた弾丸次郎選手がNR-Aを購入、クラブマンクラスに1年間参戦することになりまし
た。それではこのNR-Aを徹底研究して、より正確な情報をなるようなデータ取りをしようと私、出来 利弘もマスターズクラス
に参戦。
以下はそのテストでのトライ&エラーを弾丸次郎選手がリポートします。


弾丸次郎のNR-A 参戦記>
 昨年11月のパーティレース最終戦への初参加から約1年。
ディーテクニックと弾丸次郎による二人三脚のダブルエントリーチームは数多くのドタバタを乗り越えてきました。
良いこともあれば、悪いこともあった、怒濤の1年です。その内幕をここに紹介しましょう。


<参戦前夜>
 私め、弾丸次郎がNR-A車両を注文したのは、まだ残暑も厳しい8月のこと。春に始まったばかりのパーティレースの華や
かさとクリーンさにすっかりマイって、頭金10万円ちょっと、あとぜ?んぶローン(総額250万円!)という暴挙に出てしまったの
です。 ところが、清水の舞台から飛び下りるつもりで注文したものの、クルマがさっぱり納車されない! 9月下旬の3戦目
に間に合うかも、と思っていたのは大間違い。届いたのは10月になってから。どうやらNR-Aは、ほぼ注文生産のため、通常
グレードのロードスターよりも納車に時間がかかるというのです。おかげで、最終戦までに残された時間はわずか1か月。
その1か月の間に、ナラシはしなければならないし、練習もしなければなりません。ロールバーなどの装備も付けなければな
らない。もう、とにかく時間がありません。それでも、なんとか3000kmのナラシ走行と、わずか2回の練習走行を経て、本番
を迎えることができました。
 ちなみに新車時のアライメントは、ハンドルの操作に対してクルマの動きが非常に敏感なため、サーキットには不向きと
判断。そこでNBモデルのベストであろうアライメント数値を、だいたいの勘で設定しました。


<2002 最終戦1時間耐久参戦 11.3>
 レース当日の役割分担は、タイムアタック役に出来さん、作戦は弾丸次郎、ピットワークはお友達としました。
当日のクラス分けは主催者が行ったため、私たちのチームはクラブマンクラスに。それでもライバルチームを見れば、マスコミ
チームをはじめ、なかなかに手強そうな面々がズラリ。2002年開幕戦から参戦しているベテランさんチームもたくさんいます。
これはなかなか厳しそう。
そうして迎えた予選では、なんと出来さんが2位のポジションを獲得。1分14秒8というタイムで、ポールのチームからはコンマ
3秒落ち。こちらは今回から、あちらは開幕戦から参戦しているクルマと考えれば、大満足の結果です。アライメントもだいた
いの予想で設定したものの、けっこう当たっていたようです。
 そして本選スタート、耐久レースですから、とにかくペースを守るのが第一。スピンは厳禁です。出来さんは1分15秒台、僕
は1分16秒から15秒台中盤というペース。ところがいつのまにか予選4位だったチームが、グイグイと近寄ってきて、あっとい
うまに抜いてゆくではありませんか! はっ速い(ベストタイムで1秒近くもあちらが速かった)。これでは追いつけるわけもな
く、ズルズルと差が大きくなるばかり。それでも僕たちのチームも後続をジリジリと引き離すことに成功し2位のポジションを
キープ。ピットワークも完璧にこなし、なんとそのまま2位でゴールすることができました!
ベストタイムでは、うちも3位4位チームもほぼ同じでしたが、とにかくミスなく走りきることができたのが勝因だったのでしょう。
 初戦で表彰台! こんな最高の結果ってなかなかありません。嬉しいです!


<2003年開幕戦 5.5>
 02年最終戦の成績があまりに良すぎました。そのせいで、すっかり余裕を持ち過ぎてしまったのです。最終戦から、開幕戦
までの約半年の間に、サーキットに行ったのはわずか2?3回。タイヤは去年のままだし、アライメントだってそのまま。ダブル
エントリーする出来さんは1年以上放置していた中古タイヤで参戦することに。ちなみに出来さんは、NR-A車両で練習走行し
たのはわずかに1回だけ。さらに僕は、よりによってレース直前に風邪を引く失態。レース当日には熱は下がるものの、やは
り体調完璧とは言えない。う?ん、いくらなんでも余裕かませすぎなのでは……。
 そんな心配がそのまま出てしまったのがレース本番でした。まずはクラブマンに出た僕は予選8位。
タイムも思ったより伸びず、納得ゆかない順位です。それでも決勝で2台抜いて、1台に抜かれて7位フィニッシュ。前の1台が
賞点外だったため繰り上がりで6位となりました。
 ところがところが、ここで大問題が発生。なんとレース終了後の車検で、車両重量が規定に3kg足りないことが判明。屈辱の
失格となってしまったのです。無念。ああ、やっぱり練習で筑波にもっと来て、車両重量を実際に計っておけば良かった……。
ぶっつけ本番での重量合わせはやはり危険ということでしょう。
 車両重量が足りない! ということで、マスタークラスに出場する出来さんは、余裕を持って規定よりも10kg以上重くなるガソ
リンを積むことに。それでも気合いの走りで、本選中には、前回02年最終戦でのベストタイムを縮める1分14秒1を記録。
それでもゴールできたのは9番目。速いクルマは13秒台を出していることを考えると、やはりマスターズはレベルが高いことを
実感しました。 
 弾丸・失格、出来・9位という厳しい結果に、反省しきり。これはもっと準備をしなくてはいけない!


<第2戦参戦 7.27>
 とにかく開幕戦は準備不足でした。うちらのNR-Aの走行距離はようやく7000km。他の参戦者に聞けば、みな「走行1万km
を超えるまで、エンジンは吹けない。サーキットをガンガン走って走行距離を伸ばさなきゃ、エンジンが速くならないんだよ」と
言います。やっぱりうちのクルマはストレートが遅いと思っていたのは、ちゃんと理由があったのです。聞けば1か月に4?5回
も練習している猛者もいるとか。合同練習会で1回、他に1?2回のペースではぜんぜん足りないということでしょう。
 練習が足りない。それは重々承知ながらも仕事が忙しく、なんだかんだと今回もサーキットに行けたのはわずかに3回。
アライメントとタイヤは開幕戦そのままの状態です。大丈夫なのでしょうか!?
 クルマの状態はそのままでも、人間の調子は今回は完璧でした! 1週間前から起床時間を早くして朝型にシフト。
おかげで予選は、まずまずの1分15秒4。順位は4位だけど、前の2台とのタイム差はわずかにコンマ1秒。
 これは行けるかも!? と、期待に胸を膨らませた決勝でした、が……。スタートで1台をパスするも、後ろから来た予選5位の
クルマに抜かれ4位のまま1周目をフィニッシュ。それから延々と12周、抜けずに、そのままゴール。ああ、焦って、ジタバタし
たためチャンスを作ることができなかった(涙)。実力不足を痛感することになりました。
 それでマスタークラスの出来さんはというと、こちらもクルマはそのままなので予選タイムも14秒台、決勝のベストタイムの14
秒台。予選10位、決勝10位という結果。ちなみに予選ではタイヤ空気圧のセッティングに失敗。ズルズルのタイヤで走ること
に。これもテスト不足が原因です。
 これではイカン! と二人とも大反省する結果となってしまったのです。


<夏場の走り込み>
 開幕戦に続き2戦目のふがいない結果。その理由はハッキリしています。とにかく走り込んでないからエンジンはいつまで
たっても吹けるようにならないし、タイヤはちっとも減らないまま固くなるばかりです。
 NR-Aレースで使われるタイヤRE01は、ブリヂストンの自慢の「トレッド・オン・トレッド」という機能を持っています。
これはタイヤ表面のトレッドが摩耗すると、その奥からよりハイグリップなゴムが出てくるというもの。つまりは新品状態よりも、
使い込んでからのほうがタイムが出るというタイヤなのです。しかも、ゴム自体は新しいほど柔らかい。そこで、第3戦に向け
出来さんも僕もタイヤを新調することにしました。僕の場合はホイールも、より軽いCE28にチェンジ。それまで使っていた
TE37と比べると1本当たり約1kgも軽くなります。バネ下が軽くなり、コーナリング性能向上にも効くはずです。
 そうした上で、夏場に徹底した走り込みを行うことにしました。走り込みの狙いは、
1・走行距離を伸ばし(エンジンをより吹けるように)、2・タイヤを消耗させ(グリップ力の向上)、
3・NR-A車両のドライビングに慣れ、4・よりベストなアライメントを探す、というものです。
 走ったのは筑波2000、筑波1000、エビスサーキット、那須モータースポーツランドと場所を選ばず。とにかくスケジュールが
合えば、どこまでも行くというスタンスのおかげで僕も出来さんも今年の夏の間だけで各6回以上の走り込みを行うことに成功
しました。これまで出来さんはほとんど練習していなかったので、今回の走り込みはかなり有効だったようです。
 タイヤは普通に前後ローテーションするだけでなく、右に履いていたものをあえて左に履いたりもしました。
また空気圧低めでコースインし、こじるようにタイヤをイジメたり、逆にパンパンにはって走ってみたりして、なるべく均一に減る
ように&ショルダーを無くすように消耗させたのです。
 アライメントもスペシャルなものを設定しました。右と左の数値をあえて異なるようにしたのです。
右コーナーはアンダー気味、左はオーバー気味という具合です。そして、左リアのキャンバーは無理やりホイールを引っ張り
ながら固定するという無茶なこともしてみました(無理やりなので、すぐに元に戻ってしまうのが欠点)。
 さらにエンジンに関してはプラグをいろいろ試してみました。ブリスクというチェコ製のプラグを試したり、国産のものでも9番
という熱価の高いものも試してみました。また走行距離が1万kmを超えたことも手伝ってか、ストレートスピードも前より速くな
ったような気がします。
 今回は練習を数多くこなしたので、思い付くことを、片っ端から試してみることができました。
おかげで練習ではまずまずのタイムを上げることができ、第3戦に向けてよい準備ができたと言えるでしょう。


<第3戦参戦 9.27>
 これまでと違って、きっちりと準備を整えての参戦です。
 空気圧のセッティングは夏場の走り込みでデータが充実しています。予選約6周の間で2?5周目くらいまでの間でベストな
走りができる値を見つけてあります。かなり高めですが短い間だけなら有効という値です。
 そして予選。僕は自己ベストとなる1分14秒5! 予選2位を獲得できました。そして出来さんは、なんと1分12秒9。
13秒を切れたのはわずか1周でしたが、これまでの出来さんの自己ベストでもあります。本番の日のここ一発の予選という
集中力の高まりが生み出したスーパーラップです。最終コーナーでは4速ホールド、しかも進入はノーブレーキというものだっ
たとか。夏場の走り込みが最高の形で生かされたのです。二人とも前回よりも約1秒ずつのタイムアップを果たした格好
です。 
そして運命の決勝です。2位からスタートした僕は、前回の失敗の教訓を生かし、焦らずに相手を見るようにしました。
そして、じっくり待って運良く相手のタイヤがタレてきた第2ヘアピンでインに並びかけることに成功したのです。そして、
そのままバックストレートから最終コーナー、メインストレートから第1コーナーまでサイド・バイ・サイドをこらえ、第1コーナーの
立上がりでようやく抜くことができたのです。そして、また運の良いことにタイミング良く周回遅れが出て、僕と2位以下との間
に入ってくれました。これで無理せずに、初優勝を飾ることができました! これは嬉しかった。夏場の努力が報われたわけ
です。 出来さんの決勝は、スタートで決まってしまいました。ポールポジションからスタートした出来さんでしたが、1コーナー
までの間にあっさりと2位のクルマに抜かれてしまったのです。ポールポジションを取ったものの、それはギリギリ一発のタイ
ム。ライバルたちは、昨年からずっとコンスタントに走り込みと研究を重ねているのです。ひと夏だけ走り込んだうちらのチー
ムよりも、セッティングの熟成度は高いはず。それでも出来さんは、引き離されないよう必死にくらいつき、なんとか2位の
ままゴール!ポールからのスタートで2位に落ちたという結果ですが、それでも内容を考えれば大健闘ではないでしょうか。