1st Stage
GT-R vs インプレッサのバトルから一週間後、、、、、、、
ヒュヒュヒュヒュヒュ、、、、、
峠に複数の響き渡るスキール音。。。。。
「あのバトルでここの知名度もかなり上がったみたいだな。。。。」
ドドドドドド、、、、、、、
複数のエンジンのアイドリング音に混じって、ヘッドライトに照らし出された複数の
人影の話し声が聞こえてくる。
「あぁ、そうだな、、、、まぁ、お陰でここもやたら車とギャラリーが増えたし、、、、
はっきり言って以前に比べると走りづらいよ。。。。。」
答えながら、その人影は少し肩を竦める。
「それだけ、あの一戦にはインパクトがあった!、って事かな?」
「考えるまでも無いよ。。。なんてたってエリア負け無しのGT-Rを止めたんだからな。。。
又、次の新しい挑戦者が現われるまでに時間はかからないと思うぜ。。。。」
「GT-Rに勝つインプレッサに勝負を挑む奴なんて・・・・・」
っと言いかけて言葉が止まる。
ヒャヒャヒャヒャ。。。。。。ブォォォォォォォォォ!!!
遠くに聞こえるスキール音。。。。
「どうした?」
「いや、あの光源、やけに速くないか?」
「え?」
言われて振り返った視線の先には、茂みの先に見え隠れする一つの光源。。。。
「あのスピード、、、この前のインプレッサか!?」
「・・・・・・・」
ギャギャギャギャギャ、、、、ブォォォォォォォ!!
音は確実に近づいてくる。。。。そして、
「くるぞ!!」
ヒュュュュン!!、ブォォォォォォォォォォォォッ!!!
タービンの吸気音と共に凄まじいスピードで駆け下ってくる一台。。。。
「・・・・・違う!?インプレッサじゃない!!」
パッ!!
次の瞬間、その車は2人の目の前で、僅かなブレーキングのみで荷重を前に移動さ
せると、滑走するような滑らかさでリアを振り出す。。。
ヒュヒュヒュヒュヒュ。。。。。。。
「!?」
そのままカウンター当て、絶妙のアクセルコントロールで鮮やかドリフトを制御し、
そのままコーナーを立ち上がる!!
ヒュゥゥゥゥゥン!!ブォォォォォォォォッ!!!
再び重厚感のあるターボサウンド響かせ、テールランプが闇に尾を引きながら、一瞬で
その車はあっけに取られる男達の前からその姿を消す。。。。。
「・・・・・すっげー!!いきなりだもんな。。。。この前のインプレッサやGT−Rとは違うFR
のブレーキングドリフト。。。しかもあの滑らかな動き。。。。上手すぎぃぃぃぃぃぃ!!!」
しばらく経ち、我に返って1人が歓喜の声が上がる。。。が、、もう1人は、、
「・・・・・今のは、、あの車の後ろに貼られたステッカーは、、、、、」
っと正反対に落ち着き払った声で車が去った方向を見つめながら呟く。
「ん?どうした?。。。」
「いや、、多分インプレッサの次の相手は奴だ。。。。。けど、こんな峠に来るなんて、ここの
名を上げたばかりのインプレッサを早々に潰す気か。。。。」
「潰す気って、幾ら速くても今のは所詮、4ドアFRスポーツだぜ。。。あのインプレッサに勝て
る訳ないよ。。。。車が違い過ぎる。。。。」
「違うんだよ、あいつはその辺の走り屋とは、、、、、
今回のあの白いアルテッツァだけは特別だ。。。。。。」
「特別、って?・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・走り屋って領域を越えた奴って事さ。。。。。。」
果たしてこの言葉が何を意味するのか?
*
更に一週間後。。。。。
ヒュヒュヒュヒュ・・・・・・ブォォォォォォン!!
「今日も来てる・・・・・あのアルテッツァ・・・・」
「それに対してあのインプレッサは最近見ないな。。。。」
「確かに・・・・・あれ以来俺も一度も見てないよ。。。。ひょっとして避けてるのかな?」
「はははは、そうかもしれないな。。あのアルテッツァの走り込みは尋常じゃないし、
誰が見ても『あいつの目にはインプレッサしか写っていない』ってのは分かる。。。
出会えばバトルになるのは目に見えてる。。。。」
「・・・・・けど、俺、個人的にはエリア連勝中のGT-Rを止めた地元最速のインプレッサが
アルテッツァなんか相手に逃げて欲しくないよ。。。。」
「・・・・・・まぁ、確かそうだよな。。。。。」
*
峠を下りきった場所から少しばかりの距離にある駐車場。。。。
駐車場脇にあるお情け程度の街路灯の光がほんの少しだけ駐車場の中を照らしてい
る。そして、その光によってうっすらと浮かび上がる車運搬用のトラックのシルエットと
その前で何かを待つような整備服のつなぎを着た男性の姿。。。。。
ちなみにそのつなぎは油で汚れていれかなり汚い。。。。
ブォォォォォォ!!
「おっ、、帰ってきたか、、、、」
野太いエンジン音が遠くから響いてくると同時に、その男は音の方に視線やりながら
呟く。。。
視線の先にはどんどん近づいてくる光源があり、やがてそれは男がいる駐車場にウイン
カーをつけながら入ってくると、、
ブォォン、ウォン。。。。。キィ・・・・ドドドドドド。。。。。
男の前で停止した。。男の前で停車した車は白いアルテッツァ・・・・・・
カチャッ・・・・・
アルテッツァのドアが開き、ドライバーが降りてくる。。。
暗闇で顔ははっきり見えないが、体格はかなり良い。。。
「感じはどうだ?」
つなぎの男はぶっきらぼうに聞く。。。声からするに結構な年齢に達していそうだ。
「良いですね。跳ね過ぎないし、姿勢制御も問題なしです。流したい時に流せるし、止め
たい時に止められる。。エンジンも回転域を外さず走れるし、水温も安定してますよ」
逆に答える男の声はかなり若い。。言葉遣いも丁寧だ。。
「車は仕上がったと解釈していいんだな。。。」
言いながら、つなぎの男はアルテッツァのシートに座り、水温等をチェックする。
「ええ、後は俺の仕事ですね」
「後は勝つのみ・・・か?」
「ははは、、峠の走り屋なんかに俺が負ける訳ないですよ。。。ドラテクのいろはも知らな
いあんなお遊びの連中なんかに・・・・・」
「・・・・・・確かに・・・な。カート、サーキットと来たお前が見たら峠のテクニックなんて遊び
だろう。。。だから、見せつけてやればいいんだ。。。お前とこの車の速さをな。。。。
そして、上を目指せ、、、、大樹。。。」
「ええ。。。。」
視線を動かさずノートパソコンを車に繋いでデータを取る作業をしながら、どこか思いの
こもったつなぎの男の言葉に、大樹と呼ばれた男は静かに頷いた。。。
・・・・・ドロロロロロロ。。。。。
しばし、黙々した作業の静寂を遠くから、聞こえて来るエンジン音が打ち払う。
「!?・・・この独特のエンジン音、、、、あいつか!?。。。」
「多分な。。。行ってこい大樹!!」
「行ってこい、、、って、今アルテッツァ整備中じゃ、、?」
困惑した表情で言う大樹に、つなぎの男はニッと笑うと、
「それがあるだろ!それが、、、、」
っと、車両運搬用のトラックを指差した。。。
「えぇ!?・・・・・ったく、分かっりましたよ。。タイミング悪すぎだよ。。。」
ぼやきながらトラックに乗り込む大樹。。。
グゥオンオンオンオンオン!!ボォォォォォォ!!
エンジンをかけ駐車場からゆっくり出て行くトラック。
つなぎの男はそんなトラックを見送りながら、
「確かに、峠の連中は我流だが、速い奴は速いって事を忘れるなよ。。大樹。。。」
と諭すように呟いた。。。。
*
ヒュヒュヒュヒュヒュヒュ。。。グゥゥゥァァァァァァァ!!!
派手なスキール音を発しながら強烈な速さで峠を駆け上がる一台の車。。。。
「!?・・・・インプレッサだ!!インプレッサが来たぞ!!」
グゥゥゥァァァァァァァァァ!!パシューン!
前を走っていた走り屋の車達もGT-Rとの一戦以来、後ろにつかれただけで、ハザート
を出して道を譲る。。
ギャギャギャギャギャギャ!!ヒュゥゥゥゥゥ、グゥゥゥゥァァァァァァァ!!!
コーナーの手前で向きを変え4輪全てをドリフトしながら、コーナーに進入してくるその様
は、見た物にその姿を忘れさせないだけの強烈なインパクトがある。
「うわー、きょーれつ!!」
「信じらんねーーっ!良く外へ飛んでいかねーもんだぜ。。。」
インプレッサが走り去った後にはギャラリー達からざわめきが起こる。。。。
正に峠の主・・・・・その姿、威風堂々。。。
*
頂上、駐車場。。。。
ドドドドド、、、
規則正しく地面に引かれた白線を無視して、停められた複数の車達。。。
シルビア、180SX、AE86、スカイライン、インテグラType−Rなどのヘッドライトの光が辺り
を照らし出している。。。。
しかし、その中にメタリックブルーのインプレッサの姿はない。。。。
インプレッサは?、、、、
駐車場の隅、少し離れた闇の中にポツリと赤い光が浮き上がっている。
その赤い光は一定のタイミングで上下している。。ゆっくりと上へ、、、そしてしばらくすると
下へ、、、、どうやらタバコの灯のようだ。。。
目を凝らすと一人の男が車にもたれかかって、タバコの煙を燻らせている。。
周りには誰もいない。。。彼の周りには静寂が漂っている。。。
そして、
グゥオンオンオン、、、、
それを打ち破るトラック独特のエンジン音。。。
いかにもこの深夜の峠にはそのエンジン音は不似合いだ。
車を停めて話していた男達の視線も、その場違いな音をたてるトラックへと向く。
ハザードを付けながら入って来たトラックは車両運搬者。。。だが、不思議な事にその荷台
に車は載っていない。。。
ゴォォォォン、、、、、シュー、、、キキッ。。。。
男達の視線を受けながらそのトラックは何かを探すように、大きくグルリと駐車場を一
周すると、先ほど駐車場の隅でタバコを吸っていた男にヘッドライトを向けた状態で停車
した。
トラックのヘッドライトに照らし出された、男がもたれかかっている車はブルーメタリック
のインプレッサ・・・・・
「・・・・・・」
インプレッサにもたれかかった男は無言のままトラックを見つめている。
「こいつか、、、、、」
ヘッドライトの光に照らし出されたインプレッサに大樹は車内で呟くと車のエンジンをかけた
まま車を降りる。。。
バンッ。。。。。
「あんたがこの峠最速のインプレッサ使いか?。。。。」
降りると同時に大樹は挨拶も無しにいきなり本題を口にする。
―こいつが噂のインプレッサ使い、、なのか?―
ヘッドライトに照らし出された男は、短い髪にやや彫りの深い顔立ち、身長は170半ばくらい、
年は24,5と言ったところか?彼の纏う雰囲気は落ち着き払っていて、いかにも無愛想な侍
系と言った感じだ。。。
「・・・・・・自分の名前も名乗らずいきなりそれか?」
両者の間にしばらくの沈黙が流れた後、男の挑発的な言葉が静寂を打ち破る。
「、、、まぁ、別にお前の名前に興味なんかないけどな。。。。」
その後、男は大樹から視線をずらすと、呟くように言いながら、おろしていたタバコを口へ運ぶ。
「・・・・・あっ、あぁ、すまない。。。俺は伊東 大樹と言う。。。あんたは?」
大樹は視線を男に向けたまま自分のフルネームを口にする。
「・・・・・俺の名は蒼井、、、蒼井 怜だ。。。」
答えながら男は再び視線を大樹に向ける。
「あんたがこの峠最速のインプレッサ使いなのか?」
「・・・・・さてね。。最速かどうかは俺自身には分からないがインプレッサ使いなのは確かだ」
「・・・・この前、黒いGT-Rに勝ったのは、あんたなのか?」
「質問だらけだな。。。。まぁ、いいか・・・・・あぁ、そうだ。。。あの時走ったのは俺だ。。。」
「そうか、、、、なら、あんたに勝負を申し出る!!・・・・っと言ったら?」
「・・・・・・」
怜は無言で真意を探るような目を大樹に向ける。
「場所は1週間後のこの場所、夜11時!!この前GT-Rと走った同じルートで下りの1本勝
負・・・・・」
「・・・・・本気か?」
「冗談で言える事じゃない・・・・」
「・・・・ふっ、、いいぜ、、、、、けど・・・その滑稽な車で勝負する気か?」
言いながら僅かに口元を緩めると怜は大樹の後ろでアイドリングするトラックを指差す。。。
「!?・・・ち、違うに決まってだろ!!、、、俺の車はポテンシャルチューンのアルテッツァだ!」
「・・・・ポテンシャルチューンのアルテッツァ?・・・・」
鸚鵡返しに呟きながら、何かを思い出そうとする怜・・・・・
「!?・・・・そうか、、、、最近出来た噂の新興ショップの車がこの峠でデモンストレーションしよう
って訳か。。。。」
「・・・・負けるのが恐いのか?」
「いや、、、、、、光栄だ。。。その勝負正式に受けた!!」
「決定だな。。。。」
「あぁ、、、、」
返事を確認すると同時に大樹はトラックに乗り込む。
グォォン、、、
「1週間後、、楽しみにしてる!」
トラックの運転席越しに言う大樹に
「さっきの「恐いのか?」って台詞、、覚えておくぜ。。。。」
っと怜は不敵な笑みを浮かべて答える。。。。
「ふっ、、、、、」
大樹もそれに不敵な笑みで答えると、トラックを発進させた。
グォォン、ゴォォォン。。。。。
「新興ショップチューンのアルテッツァか、、、今のあいつもただ者じゃなさそうだな。。。。」
トラックのエンジン音が遠ざかっていく中、怜は闇の中で一人呟いた。
*
5日後。。。。
「来ないですね。。。。」
「あぁ、、、勝負を申し込んでから一向に現われる気配が無いな。。。。」
「別に俺は相手の走りが気になるなんて事はないですけどね。俺は自分の持てる戦闘力と
車の戦闘力を出し切るだけですけど、、、」
「まぁ、大樹そう言うな。。。。その蒼井って奴の走りを見れば、お前の中で奴を攻略するシュ
ミレーションが描きやすくなるかも知れないだろ?」
道路脇の闇の中で、ひそひそ話しているのは2日後にバトルを控えた大樹と、下の駐車場で
大樹のアルテッツァを整備していたつなぎの男だ。。。ただし、つなぎの方は今日は、普通の
長袖シャツに綿パンという服装だ。。
「まぁ、見ないよりは見た方が、そりゃ参考になりますけど、見に来るほどのものなんですか
ね。。。。幾ら速いって言っても、所詮、その辺に走り屋に毛が生えた程度のものなんでしょ
う?。。。今までバトルしてきた奴等だって前評判ばかりで、、、、今回も期待してがっかり
したくないんですよ。。。。」
「・・・・まぁ、確かに峠の連中が言う「あいつは速い!」ってのは、誇張した面はあるけどな。
でも、速い奴はホントに速い。。。。今回のインプレッサはこのエリアで噂になってた連勝中
のGT-Rを止めた奴だからな。。。。今までよりはきっとお前もマジになれるさ。。。。」
「だと、いいんですけどね。。。。。俺は正直、そのGT-Rも今回のインプレッサも疑問に思っ
てるんですよ。。ただ単に車の性能に乗せられてるだけの奴なんじゃないか?って。。。」
「・・・・なら、見せてやればいいさ。。。峠は車じゃないってところをな。。。。」
「・・・・俺は正直、峠じゃなくサーキ・・・・・」
ニカッと笑った男に大樹がどこか煮え切らない表情で何かを言おうとした、その時、
ヴュォォォォォン!!!
「!?」
遠くから聞こえる甲高い全開音がその言葉を遮った。。。
「この音は・・・・VTEC。。。。B18C、、?」
大樹が確信が持てないようないぶかしげな表情で呟く。
(B18C・・・・「インテグラ Type−R」に搭載されているエンジン)
「・・・・いや、違う感じだ。。。。VTECなのは確かだが、聞きなれない音だな。。。。」
ヒャァァァァァァァ、、、、、、、
耳を澄ませる2人にその車のたてるスキール音がどんどん近づいてくる。
「攻め込んでますね。。。この音は、、、、しかも、上から聞こえて来る。。。ダウンヒルか、、、」
ヒュルヒュルヒュルヒュル。。。。ヴゥゥゥゥゥゥゥン!!
―しかも、このスキール音は、、、、、―
二人の視線が自分達の1つ上のコーナーに向けられる。
ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、、、、、
次の瞬間、スキール音ともに2人の視界にヘッドライトの光が飛び込んでくる。
ウォォォォォン!!!
全開音を響かせ、その車は一瞬で2人の前を通り過ぎる。そして、
「!?(ビリビリ、、、)」
パッ・・・・ギャ、ギャギャ、、、、
コーナーの進入でギリギリのブレーキング!!!!っと同時に、ノーズが吸い寄せられる
ようにコーナーのイン側へ向き、次の瞬間、当たるかと思うほど車のサイドがガードレール
に接近する。
ヒャヒャヒャヒャヒャ、、、ヴュォォォォォォン!!!
テールランプの余韻と、スキール音を残しながら、車は2人の視界から消えると、その直後
峠に再び全開音が響き渡る。
「・・・・・・」
その車の強烈なインパクトに完全にあっけに取られる2人。。。。
・・・・・・・・
「・・・・・今ので少しはやる気になったんじゃないのか?」
「!?・・・え、ええ、、、そうですね。。。今の奴は相当なレベルの奴ですね。。。」
しばらくの静寂の後、男の声が大樹を我に返らせる。。。
「あぁ、、、あんな奴がここにいたとはな。。。しかし、あんな奴がいるなら噂くらいは聞こえて
きても良さそうなものだけど、、、、今の奴よりインプレッサは更に上なのか?」
「・・・・・さぁ?」
「だとしたら、お前もかなり本気でやらないとヤバイんじゃないのか?」
「・・・・ですね。。。」
答えながら、大樹は自分の中にあった何かが崩壊していくのを感じていた。
「・・・・もう、こんな時間だ。。。今日は引き上げよう。。。今のを見れただけでも刺激になった
だろう?」
時計を見て、横に停めてある車に歩き出す男。。。。今日はスポーツ系の車ではなく、ただ
の街乗り用のセダンが停めてある。。。。
「そう、、ですね。。。。」
男に従うようにセダンに向かって歩き出した大樹だが、ふと足を止め、先ほどの車が走り
去ったアスファルトに振り返った。
―・・・・あの車が通り過ぎた瞬間感じたあの感じ・・・・・あれは。。。。。―
「・・・・速い奴はホントに速い、、、か。。。。」
あの車が通り過ぎた瞬間感じた電気が走るような感覚を思い出していた大樹の口から
無意識に今の言葉がこぼれる。。。
「!?・・・・・何を言ってんだ、俺は。。。。。」
そんな自分に気付き、そして、そんな自分を誤魔化すように大樹は独り言を更に呟く。
―俺はこんなところでコケる訳にはいかないんだ。。。。―
自分自身に言い聞かせ、気合を入れなおすと、大樹はきびすを返し、車に向かって
歩き始めた。
彼の中で崩壊したもの、それは、、、、、、
*
2日後:バトル当日・PM9:00
「・・・・・2時間前だってのにすっげーギャラリーの数だな。。。。」
「あぁ、、、、なんでも、今回走るアルテッツァのチューナーが店のお客に吹きまくったらし
いからな。。。。」
ブォォォォォ、、、、、ヒューーン。。パシュッ!!
ガードレールの脇で話すギャラリー達の前を1台、また1台と通り過ぎていく。。
峠はまるで昼間、、いやそれを上回る台数の車で賑わっている。。
「確か店のHPでも告知してたんだろ?」
「ん?、、あぁ、でも一応公の目を気にして「やるかもしれませーん」みたいな書き方だった
けどな。。。しかも、隅っこの方に、、、、、ははは」
「そりゃ、K察にでもばれたら走れなくなるからな。。。。で、ショップの車って事は今日走
るのはそのショップ・ポテンシャルのデモカーなのか?」
「いや、、、それがデモカーじゃないらしい。。。。あの店でイジった車に間違いはないんだけ
ど、デモカー程本格的なチューンじゃない車で走るみたい。。。」
「だよな。。。デモカーなんか出てきたら、幾ら相手がインプレッサでも勝負にならないよ。。」
「まぁ、デモカーはこんな峠のバトルに使う車じゃないからね。1週間前までは連勝中のGT-
Rが話題になっていたけど今日走るアルテッツァも自分のエリアじゃ未だ負け無しらしい。
しかも、全部ぶっちぎりで勝ってるって話だ。。。。つまり奴等に言わせればデモカーを使う
ほどでも無いって事なんだろう。。。」
「自分のエリアって。。。ここのエリアの車じゃなかったのか、、、、(^^:)」
「・・・・・お、お前。。。。あの車の事なんも知らなかったんだな。。。。(−−;)」
「・・・・・ま、まぁな。。。言われてみれば、あんまり聞いた事無いよな。白いアルテッツァ
の話・・・・・(^^;)」
「・・・・やれやれ、つまり、あのポテンシャルチューンのアルテッツァは自分のエリアで充分
に名が売れたから、今度はここのエリアに来た、、、ってそういう事さ。。。。で、ちょうどこ
のエリアで噂になってた連勝中のGT-Rを止めたインプレッサは奴等にとって自分達の名
を売るには格好の相手だった。。。。だから、もしインプレッサがGT-Rを止めていなけれ
ば、今日はGT-R対アルテッツァになってた筈だぜ。。。。」
「GT-R対アルテッツァなんて、今日のインプレッサよりピンと来ないな。。。。」
「確かにな。。。けど、今日のアルテッツァはインプレッサにとって下手したらこの前のG
T-Rより厳しい相手かも知れない。。アルテッツァはGT-R(R32)よりパワーはないけど、
ブレーキはもつし、重量も軽いから。。。」
「でも、車じゃインプレッサの方が断然上だろ。。。。」
「まぁ、車もショップのチューンだからかなりの仕上がりなんだろうけど、インプレッサWRX
VerXとアルテッツァじゃ元々のレベルが違い過ぎる。。。それにアルテッツァはお世辞に
も峠に向いてるとは言えない。。。そんな車で今まで勝って来て、この峠、最速のインプレ
ッサに挑戦するんだから、やっぱドライバーが凄んだろう。。。」
「・・・・・勝てると思うか?」
「インプレッサが、か?。。。さぁ、、、俺達が信じられるのはあいつがGT-Rを止めたって
事だけだから。。。。。」
「よそ者に地元の最速ランナーが負けて堪るか。。。ってんだ!!」
「・・・・・・」
*
PM 9:20
ブォォォォォ。。。。。
峠に野太いエンジン音がこだますると同時に、山全体が緊張感に包まれる。
「来たぜ。。。。アルテッツァだ。。。」
「あぁ、遂に来やがった。。。。」
ブォォォォォォン。。。。オォォォォォン。。。。。
一般車が登るような車速で峠をゆっくりと登るアルテッツァ。。。そして、その後ろには1台
の1BOXカー。。。1BOXのボディには自らをアピールするかのように、「Potential」のロゴ
が派手に踊っている。。。。
ギャラリー達のざわめきをよそに悠然と峠を登っていくアルテッツァ。。。。
その下手に自分をアピールしようと飛ばしもしない落ち着き払った態度がかえってギャラ
リー達に不気味な印象を与える。
「今までの走りに来てた時と雰囲気がまるで違うな。。。。」
「あぁ、、、いかにもバトル前って感じだ。。。。」
「・・・・なんか、俺、これからの事考えるだけで背筋がゾクゾクしてきた。。。」
「それ、俺も同じ。。。。。どうなるんだろうな、、今日のバトル。。。。」
*
PM 9:50・頂上駐車場
ドォォォォォォォ・・・・・
複数のエンジンのアイドリング音が闇夜にこだましている。
ギャラリー達の車に埋め尽くされた駐車場。。。その一角、白いアルテッツァとポテン
シャルの1BOXが静かに停まっている。
「まだ来てないみたいですね。。。。」
エンジンをアイドリングさせたアルテッツァの前で大樹が周りを確認する。
「あぁ、、いないみたいだな。。。」
今日は整備用のつなぎを着た男は、周りを見ながら答える。
「時間はまだあるからな・・・・・・その間にこっちは最終調整をやるとしよう」
「ですね。。。走って来たから、エンジンも温まってるし、俺は路面のフィーリングを確認
する意味で軽く1本流してきますよ。。」
「・・・・そうだな。。。。しかし、、、このギャラリーじゃ幾ら流す程度とはいえ、危険だな・・
・・轢いちまうぜ。。。。」
「・・・・・」
つなぎの男の言葉に大樹はどうか答えて良いか困ったような表情を浮かべた。
「いきなりで悪いんだけど、今日走るアルテッツァってアンタ達?」
「!?」
突然の横から声に2人は驚いて視線を声のした方向へ移す。視線の先には、15,6人
くらいのグループがおり、声の主はそのグループの一番先頭の男だ。
「・・・・あぁ、そうだが、、、何か用でも?」
つなぎの男がその先頭の男に答える。グループの先頭の男の風貌は短く切った茶髪、
耳にはピアス、小洒落たラフな服装と、今風なアウトローっと言った感じだ。
「そっか、、、俺はここの峠で走ってるスピードマジックってチームの代表の井嶋 宏明
ってものだけど、、、、今日は俺達がコースの管理をさせてもらう」
「スピードマジック?・・・・・走り屋チームか?」
「あぁ、バトルがある時は地元のチームがコースを管理するのが基本だから・・・・・
問題でも?」
「いや、そうか、、、、自己紹介が遅れたが、俺は今日走るアルテッツァの整備をしてい
るポテンシャルってショップの代表、落合 誠司だ。・・・で、隣のこいつがドライバーの伊
東 大樹。今日は宜しく頼む。。。」
隣に立つ大樹を紹介し、手を差し伸べるつなぎの男こと 落合。(←よ〜やく名前登場(^^;))
「こちらこそ、、、、」
落合の差し出した手に応え、握手を交わす二人。。。
「じゃ、俺達はコースの整理に移るけど、なんか聞きたい事があれば聞くけど・・・・」
「そうだな。。。走り屋チームって事は今日走る蒼井・・・君も君たちのチームの一員な
のか?」
「怜ですか?。。。あいつは、、うちのチームの一員って訳じゃ・・・・・怜はどっちかっ
つーと一匹狼タイプだから、、、、。俺達がバトルをサポートするのはここで何かが起こ
って、そのせいでここで走れなくなるのが嫌だから、、、、まぁ、怜とは地元仲間だから
出来れば勝っても貰いたいとは思うけど・・・・・」
「そうか、、ありがとう・・・・・・」
宏明の話し方はぶっきらぼうだが、走り仲間として一生懸命やろうとしてくれるのがなん
となく分かって、落合は彼に好感が持てた。
「いえ、じゃ、コースが落ち着いたら連絡します」
「あぁ、頼む・・・・・、、、、、マーシャル役を買って出てくれるとはありがたいな・・・・・」
後ろを振り返りグループの仲間に指示を飛ばす宏明の背中を見つめながら呟く落合。
しばらくの後、井嶋のグループは各々に車に乗り込むとコ−スに順々に飛び出していく。
「さて、こっちは車の調子でも見るか!」
隣に立つ大樹にニカッと笑いかける。
「えぇ、、、今日は空気が少し湿っぽいですからね。。調整が必要でしょう、、、」
「あぁ、、今日は天気が気になるな。。。降らなきゃいいが・・・・」
言葉を交わしながら、2人は同時に天を見上げた。
空には月の光を遮るように厚い雲が垂れ込めている。。。。
*
PM 10:00
キュンキュンキュン、、、、、ヴゥォォォォン。。。。。
セルモータの音の後にエンジンの目覚めの雄たけびが響き渡る。。。。
ガラガラガラガラ。。。。
次にシャッターの上がる音が続き、
ウォン、ウォン、、、、、ヴォォォォォン。。。。。。
探るような空ぶかしの後、その車はゆっくりとその場から動き出した。。。。
*
PM 10:10
ドドドドドド・・・・・
カチャ・・・・・
シートベルトを締める金具の音が大樹の気を引き締める。
「今日はひょっとしたら、雨になるかもしれない。。。。その事も考えて流して来いよ。。
後、幾ら地元の連中が整理してるっても、ギャラリーの対向車は来るからな。」
シートベルトを締め、シートに座った大樹に、落合が運転席の開いた窓からアドバイスを
する。それに前を見据えたまま無言で頷く大樹。。。
「よし!んじゃ、今のだけ気を付けて行ってこい!!!」
ドドドド、、ガチッ、、、ブォォォォン・・・・・
落合が窓から離れると同時に、アルテッツァはギャラリー達の視線を一身に受け、低い唸
り声と共にその場からゆっくりと滑り出した。
*
PM 10:15
ヒャヒャヒャヒャ、、、、、ブォォォォォォォォ!!!!!
「おぉ!やってるやってる!!!」
上から聞こえて来る派手なスキール音に助手席の男が歓声を上げる。
「・・・・・・」
運転してる男は無言のままだ。
「あのエンジン音は・・・・多分、今日走るアルテッツァだな。ドライバーは伊東 大樹、カート
出身で、確かカート時代は名もそこそこ売れた奴じゃなかったか?」
「・・・・らしいな。俺は良く知らない。。。」
運転席の男は前を向いたままそっけなく答える。
「それを整備してるショップの代表が落合 誠司。。こいつは元レース屋って話だ」
「ふぅ〜ん・・・・・」
又又そっけない返事・・・・・。
「おい、遙・・・・お前今日どっち見に来たんだ?」
「さぁ、、、ね。。。。。」
今度は誤魔化したような返事・・・・。
「・・・・・やれやれ、元プ!?」
ギャギャギャギャ!!!
助手席の男が言葉を続けようとした時、目先のコーナーから白いアルテッツァが強烈なス
キール音と共に飛び出てくる。
ヒューーン!!ブォォォォォォォォ!!!!
次の瞬間、アルテッツァは腹に響くような低い全開音を響かせ、常識外れなスピードで2人
の乗る車とすれ違う。
「・・・・・・・」
アルテッツァの迫力に思わず言葉を失う助手席の男。それに対し運転席の遙と呼ばれた男
の方は表情一つ変えず、何事も無かったかのようにアルテッツァの飛び出してきたコーナー
に合わせてハンドルを切っている。
・・・・・・
しばし、2人の間を自分達の乗る車のエンジン音だけが支配する。。。
「あのアルテッツァ、流してただけだな・・・・・・」
呟くような遙の言葉が沈黙を打ち破る。
「・・・なんで、そう思う?」
「コーナーから出てくる時、センターラインから殆どフロントが出てなかった、けど、その割
にリアを大きく振っていただろ?」
車を運転しながら淡々とした口調で話す遙。
「さぁ、俺はいきなりで何が何だか・・・・・」
助手席の男は、―なんで、こいつあの一瞬でそんな分かるんだ?―っと言うような顔で遙の
顔を見つめる。
「あれは、滑らせてみて、路面がどんな感じか見てただけだよ・・・・まぁ、エンジンなんかの
調子を見る意味で、そこそこ回してはいたけどな。。。」
「良く分かるもんだな。。。さすがと言えばさすが、当然と言えば当然、なのか・・・・」
「ちょっと走ってた奴ならすぐ分かる事さ。。。それより、今日はホントに凄いギャラリーだ
な。。。。」
「あぁ、こりゃ、頂上の駐車場まで行かなきゃ停められる場所ないんじゃないのか?」
「・・・・・仕方ないか、、、、」
諦め気味の口調で呟くと遙は少しだけアクセルを踏み足した。
*
PM10:25 頂上駐車場
―しかし、良くこんなに集まったものだな。。。。―
大樹のアルテッツァが帰ってくるのを待ちながら、自分が宣伝したとは言え内心、落合は
その集まったギャラリーの数に驚いていた。だが、だからと言って弱気になっている訳で
はない。彼には自分が弱気になる材料など見つからなかった。ただし、唯一気がかりが
あるとすれば、それは天候・・・・・・
―この月明かりさえ通さない雲・・・・湿っぽい風・・・・なんとかバトル終了まで降らなければ
いいんだが・・・・。雨じゃFRと4駆の差は絶大だからな。。。―
ヴュォォォォォ、、、、、ウォンウォン。。。。。
「!?」
そんな事をボォーと考えいる落合の耳にやや甲高いホンダ独特のエンジン音が入ってく
る。何気なくその音の方へ視線を向ける。
―NSX、か・・・・―
スゥーとそのまま空いている駐車スペースに入るNSXを特に理由もなく目で追う。
NSXはそのまま停まると、エンジンを停止させると、ドアが開き、ドライバーが降りてくる。
―!?・・・・・―
が、ドライバーの顔を見た瞬間、落合は頭が殴られたような衝撃を受けた。
―あ、あいつは・・・・朝倉 遙・・・昔、GTカーにも乗った元プロドライバーが何故こんな所に?
―ただの息抜きなのか?・・・・・!?―
驚愕の表情でNSXから降りてきたドライバーを見つめる落合の目に、さらに助手席から降り
てきた男が映る。
―あいつも・・・・・・どこかで、、、、、―
NSXの助手席から降りてきた男の顔にも落合は見覚えがあった。
―・・・・・思い出せない・・・・・―
しかし、正確に詳細までは思い出せなかった。ただ彼には助手席から降りてきた男がレース
もしくは、車のショップの関係者である事だけは、はっきりと分かった。
落合の視線をよそに車から降りた二人は、言葉を交わしながら、駐車場を後にし、今日走る
コースの第一コーナーの方へ向かって歩いていく。
―ただの観戦なのか?、、、、、―
オォォォォォン・・・・・・
2人の後ろ姿を見つめる落合の思考を遮るように、アルテッツァのエンジン音が遠くから響いて
くる。
―まぁ、いい、、、これでこっちも一段と気合が入ると言うものだ、、、
―今日は、アルテッツァの姿と伊東 大樹の名前を忘れられなくしてやる、、、、―
もうすぐ帰って来るであろうアルテッツァの峠に響くエンジン音を聞きながら、落合はどこか不敵
な笑みを浮かべた。
*
PM 10:40
「微調整は終わったぞ。。。。。後は本当にお前の仕事だ。大樹・・・・・」
「ええ、、、」
落合の言葉に大樹は短く答えた。暗闇で大樹の表情を窺い知る事は出来ないが、今の彼の
周りには、近寄りがたい雰囲気がまるでバリアのように漂っている。
「・・・・・・」
そんな大樹の雰囲気を感じ取って、落合も声はかけず頷くのみだった。
ヒュュゥゥゥゥゥゥ・・・・・
全ての準備が終わり、相手を待ち時を待つそんな最中。。。。
ポツ、ポツ、ポツ、、、、
「!?・・・・・」
頬に当たる水滴、、、それは確実に路面に染みを作る。
「・・・・・降ってきたか。。。。しかも、こんなタイミングで・・・・・」
落合がスタート前に降り出した雨を見て苦々しく呟く。
「大樹、もう走ってる時間はないが、すこしイジるぞ!!」
「えぇ、、頼みます」
落合の苛立たしげな言葉とは対照的に大樹はまるで雨を予想していたような冷静さで答える。
そんな大樹の目には、勝負に挑む覚悟の色・・・・・
ザァァァァァァ・・・・・・
―雨か、、、、FRには厳しくなるな・・・・―
やがて激しく降り出した雨に落合はおもむろに天を見上げ、心の中で呟いた。
*
同時刻 1コーナー付近
「降ってきたな・・・・」
「あぁ」
「って、俺は傘持ってないぞ」
「俺は持ってるぞ・・・・」
「は、遙、、お前って奴は、、、、」
話しながら男は手を額に持っていき首をうな垂れ、「訳わかんねー」のポーズをする。
「しかし、雨でインプレッサが俄然有利になったな。。。」
気を取りなおして男は本題に話を戻す。
「あぁ、この状況ならフルタイム4WDのインプレッサが圧倒的に有利だな。アクセルワークに対する
挙動のシビアさがFRの方がかなり厳しいし、FRは雨の中で、ホイールスピンさせずにトラクションを
かけながら車を上手く加速させるのはかなりのスキルと集中力がいる」
遙は呟くように言いながら、傘を広げる。
「車も上、天候も味方してる。。。今日は意外にあっさり決まるのかもな。。。」
「・・・・・どうかな?、、、確かにインプレッサが有利なのは変わらないが、あのアルテッツァは走り込
んで細かくセッティングを変えてるショップのプロの手が入った車だからな。それに対し、インプレッ
サは幾ら速いといってもまだローカルな速さだし、車もそこまでは手を入れてないだろう」
男二人で相合傘をしながら、コーナーに向かって歩き続ける2人。。。
「でも、インプレッサの全開アタックは一回見てるだろ?それを加味して遙はどう思う?」
「さぁね。。。まぁ、前回の走りを見る限りではインプレッサは雨でもそれなりの速さだろうな。あの
滑らせて曲がるスタイルはグリップを感じる感覚が確かなら雨でもそれなりに通用する」
「アルテッツァは未知数か。。。。。」
「アルテッツァはタイヤのホイールスピンを鋭敏に感じとってスムーズにアクセルを操作できるかが
勝負だろう。。。」
「・・・・・カート出身の、、伊東ならスムーズに踏んでいけるんじゃないか?」
「。。。そうだな、、、カートのピーキさに慣れているなら、市販車ベースのFRの少しくらいの挙動
の乱れは問題としないだろうが、、、、、、」
「が?」
「そんな立ち上がりで一瞬でも挙動を乱すような腕じゃインプレッサには勝てないさ、、、アルテッ
ツァは極限まで加速時のロスを減らさなければ勝負にならない。。。雨でもスムーズに加速でき
るスキルがあってアルテッツァは始めて勝負が出来るラインに立てる・・・・」
「・・・・・厳しいな。。しかし、確かに走りの世界はそんなものかもしれない。うちだって、雨で相手
が四駆だからってビビるようなドライバーなら乗せやしないからな」
「ふっ、、、それに相手が4駆だからって、自分のチューンした車が負ける気がするか?」
「・・・・確かにな。。。」
「だが、、、」
「?」
「この天候が勝負を分けるファクターの一つである事は確かだ、、、、」
ギュゥゥゥゥオ、バシューン!!!!!
遙の言葉をまるで待っておいたかのようなタイミングで、峠全体にタービンの吸気音、エンジン
音の雄たけびが響き渡る。
―来たか!・・・・・・―
雨の中、その路面を状態を物ともしない豪胆な直線全開加速!!!
かと思えば、余裕を持った、ヒール・アンド・トゥーのシフトダウン、直後の探るような繊細なアク
セルコントロール、、、そして、再び全開加速。。。。
峠に響くエンジン音で遙にはその車の操り主の意図が手に取るように分かった。
音が近づくにつれ、シフトダウンのテンポが速く、短くなり、又、その直後のアクセルのコントロー
ルもより大胆に、そして、精密になって行く。
―・・・・走りがどんどん鋭さを増して行く・・・・―
音から、遙の頭の中には今、その車がどんな動きをしているのかが浮かんでいた。
ザァァァァァァ、、、、、、ギュゥゥゥゥオオオオ、、、、
雨音を切り裂く、エンジンの荒々しい咆哮!!!!
そして、エンジン音が間近に迫り、次の瞬間、、、
ヒュゥゥゥゥ、、、ギュゥゥゥオオオオオオオオオオ!!!!!!
タイヤから豪快に水飛沫を上げ、リアを流しながら、インプレッサがコーナーから脱出してくる。
ウォン!
ボディが風を切り、細かい飛沫を撒き散らしながら、インプレッサと遙達がすれ違う。
「・・・・・・・」
頬に細かい水滴が当たる冷たい感触、、、、
―インプレッサ使い・・・・蒼井 怜・・・・今、お前はここにいるギャラリー全員のカリスマ・・・・
―サーキットじゃなく公道で鍛えぬかれた速さの可能性を俺に見せてみろ・・・・―
遙は走り去ったインプレッサの方を振り返る事無く、ただ、心の中で一人呟いた。。。
遙の心の言葉が意味するものは・・・・・・
*
PM 10:57
ブゥゥゥゥン、、、ウォン、、、ドドドドドド・・・・・・・
「・・・・ようやく来たな・・・・・」
自分の少し先に停止したブルーメタリックのインプレッサを見て、落合はどこか感慨深げに
呟いた。。。
―大樹が見たとは言え、こうやって生で見るとやはり気合が入るな・・・・―
「怜っ!」
インプレッサが停車すると同時に、井嶋が車に駆け寄る。
チャキ・・・・バンッ!(←車から降りる音)
「なんだ、ヒロ?」
怜やスピードマジックの面々は井嶋の事を宏明の頭をとって「ヒロ」と呼ぶ。
「・・・・お前、、、いきなり「なんだ?」はないだろ・・・・・みんなブッチしたかと思ってハラハラして
待ってたんだぜ・・・・まぁ、その態度が妙に俺達を安心させてくれるから不思議だけどな」
「?」
「コースは予想外の雨はあったが、バッチリだぜ・・・・すぐに走れる。お前の相手のアルテッツァ
も、もう走り込みもして準備万端のようだし、お前次第でいつでも行けるぜ!」
「・・・・・分かった。。。。」
怜は井嶋の言葉にやや表情を凄みのあるものに変えると、アルテッツァの方へ向けた。
「・・・・・・蒼井 怜 君だね?今日一緒に走らせてもらうアルテッツァのチューンを手がけていている
ポテンシャルの代表の落合 誠司だ。今日は宜しく頼む」
傘をさし、大樹と一緒に歩み寄ってきた、落合が手を差し伸べる。
「・・・・こちらこそ」
軽い会釈と共に落ち合いと握手を交わす怜・・・・。
「そして、もう知ってると思うが・・・・」
「がっかりさせるなよ、、、、蒼井 怜・・・・」
落合が大樹を紹介しようとした瞬間、その言葉を遮って、大樹の強烈な言葉が怜に浴びせられる。
「・・・・・出来ればドライでやりたかったな、、、、お前とは・・・」
大樹の相手を威圧するような鋭い眼光を真っ直ぐに受け止め、怜は熱く激しく昂ぶる気持ちを覆い
隠すような静かな口調で答えた。
「カート時代は雨のレースでも勝ってきた、、、今日もそれは変わらない・・・・」
「・・・・口で幾ら言っても仕方あるまい、、、、始めようぜ・・・・」
「あぁ・・・・・」
みじろき一つせず、お互いを見据えたまま、しばらく時が止まったかのように対峙する二人・・・・
―全くこいつらは・・・・・―
そんな二人を見ながら落合は頭を抱えつつ、どこかそこまで熱くなれる2人に嬉しさも感じていた。
しばらく対峙していた二人だったが、まるで申し合わせたように互いに背を向けると、これから全
てを共にする自分の愛機へときびすを返し、歩き出した。
「お、おいっ!怜・・・・一本も流さなくていいのか?」
井嶋が慌てた口調でたずねる。
「必要ない・・・・来る時、路面の感じは掴んできた。。。それにここは俺の地元だからな」
「・・・・・・」
怜の言葉にもはや井嶋は何も言えなかった。
ただ、心の中で―勝てよ・・・・―と祈るのが精一杯だった。。。。
一方・・・・・・
「大樹、、、雨でほんの少しセッティングを柔らか目に変えたが、その分、神経質にならず
に踏んでいける筈だ、、、」
コクピットに座り、シートベルトを締め、落合の言葉に無言で頷く大樹・・・
その目はもはやイッてしまっている・・・・・
「大樹、、、、いつもと同じだ。勝てよ・・・・・」
ドアから離れ際の落合の言葉に大樹は一瞬だけ視線を、落合へ向けた。
そして、決戦の時来たる!!!!!
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