ナースツリーは、その周りに生える植生よりも大型になり、周りの植生を、風、太陽光線、動物などから保護するシェルターの役割をします。ソノラ砂漠では、Palo
VerdeやIronwood が弁慶柱のナースツリーの役割をすることが知られています。弁慶柱の自生地を歩いてみると、若い弁慶柱の多くはこれらの木や草、岩の陰に生えています。そのような環境は発芽と発芽後の生育に都合がよいからです。弁慶柱が成長して大型になり、ひとり立ちできる大きさになるとナースツリーは枯れてしまい、弁慶柱だけが残ることが多いようです。弁慶柱の成長により、水や栄養分がナースツリーと競合し、ナースツリーの寿命を短くしていると思われます。
複数種の生物が相互関係を持ちながら同じ場所に生活する現象を示す「共生」という専門用語があります。共生者間の利害関係に注目して、相利共生、片利共生(片害共生)、寄生の三つに分類できるとされています。しかし、利害関係は可変的であったり明確でなかったりする場合もあるようです。ナースツリーと弁慶柱の関係が「共生」に該当するかどうかは微妙ですが、少なくともナースツリーには享受するメリットはなさそうですので、相利共生ではなく片利共生であると思われます。
写真1,2:ナースツリーの陰に生える弁慶柱
写真3:やや過密状態の若い弁慶柱。このまま全部が大きくなるわけではない。
写真4:枝分かれが生じ始めた推定樹齢75年の弁慶柱。ナースツリーは枯れている。
共生とは関係ありませんが、サボテンの発芽は毎年一定ではなく条件が満たされた年にまとまって発芽するといわれています。現地では同じくらいのサイズの個体がまとまって生えているのをよく見かけます。ただし、この状態が長く続くことはなく、徐々に間引きされるようです。興味深いのは、特に巨大な弁慶柱の多くは孤立しているケースが多いことです。ある時期には個体密度が高くても年月の経過とともに、水や栄養分等のリソースが競合しないように淘汰された結果だと推測されます。
写真5,6:高さ10m以上の弁慶柱。他の個体との距離は大きく、孤立している。
(2013.03.30)
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