大竜冠 (Cottontop Cactus)
Cottontop Cactus(学名:Echinocactus polycephalus)と呼ばれる品種である。日本では大竜冠と呼ばれていてサボテン愛好家にはマニアも多い。刺の強い品種であるが日本の栽培品では本来の刺を発生させるのは困難といわれている。原産地球を採取して輸入されるケースもあるが日本では気候が合わないのかほとんど成長しないことが多く、難物の一種とされる。肉質は非常に硬く、厚底の登山靴で上に乗ってもつぶれないくらい頑丈である。成長すると、20〜30頭のclump (クランプ;集団)を形成する。花は頭頂部に咲き、その果実は棉毛で覆われるため、Cottontop Cactus と呼ばれる。
ここに載せた写真は大半が、Death Valley National Park で撮影したものである。デスバレーで大竜冠が分布しているのは中心部を離れた周辺の山岳地帯である。岩山の斜面に生えているものも多い。平らな場所はいくらでもあるのになぜ岩の斜面を好んで生息するのかは定かではないが、灼熱の砂漠地帯では岩の斜面のほうが快適かもしれない。岩に生えている個体の方が刺の色が鮮やかで健康なものが多いように思われる。
○自生環境
大竜冠の分布域はユタ州・ネバダ州南西部、カリフォルニア州東部、アリゾナ州の一部である。標高数百mくらいまでの、石や岩の多い不毛地帯に生える。土や砂がほとんどないと思われるような岩の割れ目やガレ場の斜面を好んで生えるようである。岩の中は意外と水分が存在するのかミネラルなどの微量要素が貢献しているのかはわからないが健康状態は概して良好である。ちなみにデスバレーの岩の主成分はLimestone(石灰岩)、Dolomite(白雲岩)である。
降水量に関しては、デスバレーを例にとって見ると年間数十ミリ程度である。8月の最高気温は50℃を超え、1月の最低気温が零下になるという極端な環境である(注:測定設備のあるFurnace Creek でのデータである。大竜冠が分布する山間部はそれより標高が数百m高いので気温は数度低くなる)。昼夜の温度差も大きい。気温と降水量に関してかなり過酷な条件といえる。
岩の上に生息する大竜冠。健康状態は良好だ。
地面に生えている個体よりも刺の色も美しく見える。
大竜冠がごろごろしている山。
石が多く、立山あたりのガレ場のような場所だ。
○個体変異について
大竜冠の個体差は刺のタイプ(色、形状)、本体の大きさ、クランプの大きさにおいてみられる。刺は下へ向けて湾曲して色はピンク色(新刺は鮮やかな赤で、後にピンクに変わる)というのが一般的であるが、直刺や白刺の個体も見られる。文献によると、クランプは高さ60cm、直径120cm位まで成長し、各個体は高さ15−30cm、直径10−15cmとされる。実際に現地で観察してみると、各個体とクランプの大きさ・形状について2つのタイプがあるように思われる。ひとつは、30個くらいのマウンド状のクランプを形成するタイプであり、各個体のサイズは前述のとおりである。このタイプは各個体がクランプ形成の初期段階においては球形を維持しているが、次第に長くなり、最終的には中心部から放射状に伸びた状態になる。もうひとつは各個体が前者より大型で直径25cm高さ50cmくらいになり、数頭の株立ちになるクランプを形成する。このタイプは各個体がいわゆるバレルカクタスの形状を有し、成長すると背が高くなる。2つのタイプの中間的なものもある。この差は遺伝的な要因によるものなのか、環境依存(土の栄養状態や気象条件)かは不明である。大竜冠の変種に関しては英語の資料を探しても、Echinocactus polycephalus var. xeranthemoides(和名は竜女冠)くらいしか見当たらない。
クランプの完成品見本といってもよいくらい均整のとれたクランプ。
外観からはわかりにくいが各個体は細長く中心部から放射状に伸びている。
各個体が大型になるタイプ。
ひとつだけ見ると別種のように見えるが頭頂部にはシンボルのCottontop をつけている。
大竜冠のはずだが別の血が入っているような気がしないでもない。
かつては独立していたはずの2つのクランプが融合して一つになっている。
左側の株は白刺。竜女冠のようにも見えるが、文献によると竜女冠の自生地はもっと東のネバダ州、ユタ州、アリゾナ州の一部とのことである(この写真はデスバレーで撮影)。
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