バレル・カクタス(鯱頭、金赤竜)


バレルカクタス:(フェロカクタス:金赤竜、鯱頭、他)
 バレルカクタスとは、その名が示すように外観が樽(Barrel)に似ているサボテンのタイプを表す。または、その体に多くの水をたくわえていると思われていることに起因するとの説もある。一般には、フェロカクタス属(Ferocactus)およびエキノカクタス属(Echinocactus)の一部の大型種を示す。北米中西部の砂漠地帯に分布し、高さは1mを越える。フェロカクタス属でよく知られるところでは、金赤竜、鯱頭などの基本種とその亜種が知られる。エキノカクタス属(Echinocactus)の金鯱はゴールデン・バレルと呼ばれる。バレルカクタスの多くはある大きさまでは球状に育ち、直径が50cm前後になると上に成長するようになり、樽に良く似た形になる。高さではハシラサボテンに及ばないが異質の存在感がある。金赤竜で2mを越えるものを見たことがあるが結構な迫力である(写真)。エキノカクタス属の金鯱や巌は直径が1m前後にまでなるらしい。 これらのサボテンは全て強大な刺で武装している。ある種類では中央の刺が釣り針のようにカーブしており、”Fishhook Barrel Cactus” と呼ばれる。原住民は刺を縫い針、爪楊枝、刺青などに使用したとのことである。果肉は食用にされることがあり、”Candy Barrel Cactus” の名前もある。
 バレルカクタスは日本でもよく栽培されていて丈夫な種類が多いが、日本では本来の姿に育てることは困難である。刺の発達には昼夜の温度差が必要であるといわれている。日本では湿度が高いせいか刺が色あせてしまい、長さ太さも半分くらいにしかならないようである。 バレルカクタスの多くは成長するにつれ、頭を傾けたような姿になる。頭の重さで傾くと誤解されることがあるがらしいが、実は他の多くの植物と同様に太陽の方向を向いて成長するからである。しかしその理由は一般の植物とは異なり、日焼けを防ぐためとされている。太陽の方向に傾くことにより、植物体が太陽光線を受ける面積を少なくするということらしい。概ね南に傾いた姿になるので別名「コンパス・カクタス」とも呼ばれる。 砂漠を旅する人が非常時に水分をとるため、果肉を食べたという話を聞いたことがあるが、それほど水分を含んでいるようには見えないので真偽のほどは定かではない。原住民は花をゆでて食用にしたそうである。また、頭を切り落として鍋として使用したとの記述もある。果肉を取り除いたあと、食物と一緒に焼けた石を入れたとのことで、サボテンマニアが聞いたら胸を痛めるような話である。


○金赤竜 (学名:Ferocactus wislizenii, 一般名:Arizona barrel)
 高さは最大8フィート(240cm)に達するが一般には3−5フィート(90−150cm)程度である。最初は球状に育つが直径30cmくらいを超えると上に伸びる。若い個体は成熟株よりも刺が長く太い。理由はよくわからないが、若い時の方が外敵に狙われやすいので強大な刺で身を守る必要があるのだろうか。若い個体の方がバランスもよく見栄えがする。この傾向は他の一部の強刺類にも見られる。中刺は特に長く強大であり先端はフックする。その周りに放射状に延びる白色の刺を有する。花は8月から秋にかけて断続的に開花する。寒さに強く砂漠地帯の周辺の山間部にまで分布する。分布域はアリゾナ州南部、ニューメキシコ州南西部、テキサス州西部である。日本ではあまり人気は高くないようであるが野生株を見るとなかなか魅力的である。



高さ2m強の金赤竜。横にあるのはスケール代わりに置いたデイパック。
(Saguaro National Park, Arizona)



上に伸びるにつれ、南西方向に傾く。
自身の重みで倒れてしまうこともあるらしく、不器用な話である。



若い金赤竜。強大な刺で武装している。



成熟株の刺は若い個体に比較してややおとなしい感じ。


○鯱頭(学名:Ferocactus cylindraceus、一般名:California barrel cactus)
 高さは最大10フィート(300cm)に達するといわれるが通常は5−6フィートどまりである。アリゾナ州産はバレル状を呈するがカリフォルニア州産はより細い円柱状を呈するとされる。中刺と側刺の差は明確ではないが側刺はよりブラシ状になる。刺色は変化に富み、黄色から鮮やかな赤、あるいは白や灰色も見られる。開花期は春から初夏である。黄色系が多く、まれにオレンジや赤も見られる。このサボテンは岩の多い斜面を好んで生える。アリゾナ南部においては金赤竜と分布域が重なるが、金赤竜はより雨の少ない環境を好むので混在することはないようである。



比較的若い鯱頭の個体。刺の色が美しい。
(Joshua Tree National Park, California)



コンパスカクタスのニックネームが良く分かる写真。
皆太陽のほうを向いている。
(Anza Borrego Desert State Park, CA)



鯱頭近影。花は黄色系が多い。
(Joshua Tree National Park, CA)



人間の身長ほどもある鯱頭。下部は木質化している。
鯱頭は通常は単幹であるといわれるがこの個体は基部から子を出しているように見える。
(Anza Borrego Desert State Park, CA)


○偉壮玉 (Ferocactus cylindraceus, var. rosti)
鯱頭の変種でカリフォルニア南部からメキシコに分布する。
通常は単幹とされるが写真の株は群生している。(Anza Borrego Desert State Park, CA)







○江守 (学名:Ferocactus emoly)
 このサボテンは金赤竜によく似ている。
刺の数は金赤竜よりも少ないが太く頑丈で、側刺はブラシ状にはならない。
アリゾナ州南部に分布し、Organpipe Cactus National Monument でよく見られる。







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