雲竜渓谷での氷瀑撮影


 2月初旬、山仲間4人で栃木県の雲竜渓谷に行ってきた。雲竜渓谷は雑誌「山と渓谷」で紹介されてから人気急上昇で最近では1〜2月は氷柱目当ての観光客が増えている。今回の我々の主目的は氷瀑と星空の撮影なのでテント泊で一泊二日の日程である。



写真1:星空撮影が目的だったが。。

 1日目は東武日光駅に10時集合。駅から瀧尾神社までタクシーに乗る。林道のゲート前まで行ってくれると楽なのだがチェーンを付けないと上がれないので神社で勘弁してくれとのことだった。神社から歩き始める。ゲートまでは雪に覆われた車道の上を歩く。30分ほどでゲート前に到着。ここで全員アイゼンをつけ林道を上り始める。もう昼近くなので今から上る人はほとんどいない。すでに渓谷から戻ってきた人に出会い始める。我々は現地泊りの予定なのでゆっくりの行程だ。 

 1時間ほど歩くと渓谷の手前の展望台に到着。ときどき青空が見えるが曇りがちだ。GPVの予報では晴れるのは夜中になってからなので今日はずっとこんな感じだろう。さらに1時間ほど歩くと右側へ下る沢ルートと左側へ上る林道ルートに分かれる。我々は沢ルートに進む。沢を渡ることになるが歩く距離はこちらが近いとのこと。この頃から雲が厚くなり雪が舞い始める。沢筋のルートは狭い沢を石飛の要領で飛び越えたりかなりきついアップダウンがあったりでややトリッキーだ。沢を飛び越える際に同行者の一人がバランスを崩して片足を沢に突っ込んでしまった。この時期では放置すると凍傷の危険がある。すぐに別のソックスに履き替える。靴は中までぬれているのでビニール(レジ袋)を足にかぶせて濡れた靴に突っ込む応急処置で再び歩き始める。宿泊予定地の堰堤そばのテント場に到着したのは午後3時ごろ。すでに先着組のテントが2つ張ってある。人はいないのでどうやら渓谷に出かけているようだ。我々もテントを設営後現地の下見に出かけることにする。

 テント場から氷瀑までは歩いて20〜30分程度。何か所か沢を越えなくてはならない。ピッケルを杖代わりにして慎重に渡る。奥へ入っていくと大きな氷柱や氷壁が目に入り始める。数メートルから大きいのは10m以上ありそうだ。自分は初めて見るのですごいと思ったが過去6回訪れている同行者の話では年々細くなっているとのこと。さらに奥まで進むと雲竜瀑に到着する。ここから先はアイスクライミングのエキスパートのみとのこと。何人かが上っているのが見える。我々は撮影が主目的なので下見をした後テントに戻る。

 各自自炊して早めの夕食をとり、夜半まで撮影は無理そうなので夕方6時前にシュラフに潜り込む。そのうち隣のパーティが帰ってきた。話を聞くと先ほどのアイスクライミングのグループとのこと。

 うとうとしながら時々目を覚まし10時、12時と空をチェックするが曇ったままで何も見えない。そのうちあられ混じりの雪がテントをたたき始めた。これでは撮影は無理かなと思いながら夢うつつでいるとしばらくして仲間の一人が「晴れた!星が見える」と叫ぶ。外を見る山沿いにガスは見えるものの上はきれいに晴れ上がって星が見える。午前2時だ。全員飛び起きて機材の準備をし、急いでアイゼンを装着後さあ出発というところで急に風が強くなった。テントが飛ばされそうな強烈な風だ。むき出しの顔の部分がひりひりする。手は写真撮影用手袋の上に厳冬期登山用手袋をしているがそれでも冷たい。気温は優にマイナス10℃以下だろうが強烈な風で体感温度はさらに低く感じる。「テント大丈夫でしょうか?」「いや、大丈夫じゃない。留守中に飛ばされるかも」「中で待機しましょう。人が入っていれば飛ばされないでしょう(そうか??)」という会話の後再びテントの中へ。

 結局風は収まらず朝まで待機を余儀なくされた。5時過ぎ、少しガスがかかっているが気を取り直して朝の氷柱を撮影しようと出動する準備にかかる。隣のグループも「観光客が来る前に一仕事」とのことで我々より先に出動した。テントはすでに撤収済みだ。行動が早い! われわれはテントの撤収は撮影後にすることにし現地へ急ぐ。現地に着くとすでに氷に登り始めているメンバーがいる。行動が早い! 我々も各自撮影にかかる。昨夜の雪で表面はサラサラ、下はガチガチだ。私はすぐに奥のほうの一番太い氷柱まで行ってカメラを構えているとアイスクライミングのメンバーのうちの二人がやってきた。「これをやるのですか?」「そう」。若い一人が登りはじめ、指導役らしい年配の一人が下でザイルを送りサポートする。撮影しながらしばらく見ていたがアイスアックスを打ち込むたびに氷がバラバラと落ちる。氷の育ちが悪くもろいようだ。しばらく悪戦苦闘していたが危険と判断したのかあきらめて他の氷へ行ってしまった。同行者によると暖冬の影響か年々氷が細くなっているとのこと。来年は星空撮影のリベンジを果たしたいところだが氷の状態が気がかりなことである。



写真2:
一番形がよいと思われる氷柱。今年は育ちが悪いとか。
右奥が雲竜瀑



写真3:
落下した氷柱の残骸。ドラム缶よりはるかに太い。
これに当たったらヘルメットをしていても無意味だろう。



写真4:
この撮影アングルは危険なので自己責任で。
特に昼間の温かいときは危険。


2016年2月14日

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