昨年のことになってしまいましたが富士フィルムは、「ネオパンSS」など一部黒白感材の生産を終了しました。また、黒白写真処理薬品の全品種については値上げを実施しています。デジタル全盛時代になり、採算の合わない製品でしょうから縮小・値上げはやむを得ないと思います。私自身は白黒フィルムを使用しなくなってから久しいので特に不都合はありませんがあらためて時代の流れを感じます。

 私が写真を始めたのは学生の時で、少々無理して手に入れたOM1を使っていました。大学では応用光学研究室に所属していましたので研究室には暗室があり、その暗室をときどき趣味の写真現像に使用させてもらっていました。私用目的の使用禁止ということはなかったと思います。私以外にも私用で使う学生はいたと記憶しています。ネオパンSSで撮影し、コレクトール、ゲッコール等の薬品を自分で持ち込んで現像・焼き付けをしていました。その後しばらくして白黒フィルムは使わなくなったので気にとめていなかったのですが、生産終了の発表を見て、あらためてこのフィルムの製品寿命の長さと写真技術の世代交代を感じた次第です。

 少し前、会合で写真技術の勉強会の話をしていた時、あるメンバーが「白黒現像の方法について勉強会をしてはどうか、、」という提案をしました。いろいろな案が出ていたのでそのときはそれ以上突っ込んだ話はせず、今時珍しいテーマを提案するなぁ、くらいにしか思いませんでした。未確認ですがこの人はおそらくデジタル処理の話をしていたのだと思います。つまりデジタルカメラで撮影した画像を白黒にデジタル処理する方法のことを意味していたと推測されます。今や単に「現像」といえば「RAW現像」を意味することが多く、「覆い焼き」「焼き込み」といっても、穴のあいた紙やスプーンのような道具(?)を思い浮かべる人は少なく、「Photoshop」のツールを意味することがほとんどでしょう。ここ数年の間に写真を始めた人はフィルムカメラを経験することなく最初からデジタルカメラという人も多いと思います。写真を扱ううえでフィルムカメラのことを知っておくに越したことはありませんが、時代の流れなのでそれはそれでよいと思います。

 一方ではフィルムのよさを認識し、フィルムカメラにこだわっている人、あるいはデジタルカメラと併用する人は少数派ではありますが今後も存在するでしょう。フィルムメーカーはそのことを認識していますからフィルムの生産・販売を完全に止めることはないと思います。私自身は今ではフィルムを使うことはほとんどなくなりましたが少し前まではデジタルカメラと両方使っていました。商品としての採算性は悪いと想像しますが、無理して生産を継続しているメーカーには敬意を表します。

 カメラは今やパソコンや携帯電話と同様に電子部品を満載したデジタル機器となりました。エレクトロニクスの進歩とともに進化し続けるでしょう。写真を文化として考えた場合、デジタル化はいろいろな問題をもたらしています。難しい問題なのでその話は別に機会にしたいと思いますが、技術面の問題ではなくレタッチを行う際のモラルの問題などです。しかし、デジタル化の流れは時代の流れであり止めることはできません。フィルムカメラでは不可能だったがデジタルカメラにより撮影可能になった被写体もあります。問題を認識しつつ使いこなすことが重要だと思います。
 (2013年1月15日)








写真1,2:
島根半島にて。1978年頃撮影。
(OLYMPUS OM-1, ネオパンSS)





写真3:
天の川。ユタ州アーチズ国立公園にて。2012年撮影。
デジタルカメラでなくては撮影困難な写真の典型。
(Canon EOS 5D Mk II, ISO:3200)


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写真技術の世代交代   〜白黒フィルム