孤高の人



 孤高の人、砂漠に生えるサボテンを見ているとそんな言葉が浮かんできます。砂漠では夏の気温は50℃を超えることは珍しくなく、冬には時にマイナス10℃になります。雨は少なく場所によっては何年も降水を見ない場所もあります。温室ではなかなかそのイメージは湧きませんが相当過酷な環境である砂漠地帯で高温と乾燥に耐えながら平然と(でもないか)たたずむ姿に畏敬の念を抱く次第です。

 そんな彼らを見ると思わず言葉をかけたくなります。「他に快適な場所があるのに何を好き好んでこんなところにいるのだ。何年もじっとして何を考えているのだ、あんたはえらい!」。



写真1: 孤高の人?



写真2: あんたはえらい



写真3: あんたもえらい


 雨が少ないのも砂漠の特徴です。私はまだ行ったことはありませんが南米のアタカマ砂漠ではほとんど雨が降らないといいます。そんな場所でもサボテンは生息しています。手元にあるギネスブック GUINESS WORLD RECORD 2001 にはもっとも乾燥した場所としてアタカマ砂漠に関する以下の記述があります。”The Atacama Desert in northern Chile experiences virtually no rain. Occasional squalls will strike small areas of the desert several times a century.” (チリ北部のアタカマ砂漠では雨はほとんど降らないが砂漠のごく一部を百年に数回一時的なスコールが来ることがある)。この文とともに黒王丸らしい写真が掲載されています。百年に数回程度の雨を頼りに発芽し成長するのでしょうか。なんと忍耐強い連中だろうと思います。別の本によると雨が降らない年が続くと何年もの間ほとんど成長せずじっとしているようです。ただしアタカマ砂漠でも海岸線に近いエリアは午前中は毎日海からの湿った空気により霧が発生するとのことです。サボテンの表面に地衣類が生えている写真もあり午前中の湿度は比較的高くなるのではないかと想像します。雨が降らなくても空気中あるいは地面の湿気を吸収して生きているのではないかとも想像します。とはいえ雨が降らないと本格的な成長はしないでしょうし発芽もしないでしょう。数年に一度か場合によっては数十年に一度の雨が降った時に発芽すると思われます。




写真4: GUINESS WORLD RECORD 2001
The Atacama Desert in northern Chile experiences virtually no rain. Occasional squalls will strike small areas of the desert several times a century.” (チリ北部のアタカマ砂漠では雨はほとんど降らない。砂漠のごく一部を百年に数回一時的なスコールが来ることがある); との説明がある。



写真5: 
アタカマには行ったことがないので自宅の黒士冠。数年前に購入、国産の実生らしい。
ルーツはアタカマなので春と秋に1,2回軽く腰水する程度(2,3秒さっとつける)。
あとは時々ほこりを飛ばすように強めに霧吹きする。サボテンもたまにはシャワーを浴びたいだろうと思うから。少し成長しているようだがこれでも水のやりすぎなのか残念ながら野生株の迫力は出ない。


 砂漠は過酷とはいえ、私自身は砂漠を歩きまわることは結構好きです(最近では諸事情により機会が減りましたが)。多くの登山家が山を目指すのと同様の感覚でしょう。さすがにそこで暮らしたいとまでは思いませんが誰もいない砂漠の真ん中でぼ〜としていると妙な解放感を感じるのも事実です。自分の前世はサボテンだったのかも、と考えたりします。飄々とした風貌のサボテンを見ていると彼らを見習って俗世間の煩わしいことや煩悩に左右されずにマイペース、マイペース・・・そんな気になります。


(2015年6月20日)

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