ライトアップはほどほどに


 少し前になりますがLED関連のベンチャー企業が富士山をLED照明でライトアップするプロジェクトを企画しました。このような企画は前例がなく初の取り組みであるという触れ込みでしたが自然保護関連の人、アマチュア天文家や登山家などから強い反対意見が多数出されました。「自然の中でそのような大規模なライトアップをしたら生態系に与える影響は計り知れない。会社はそのことを検討したのか?」「そこに住む動植物への影響は大きく自然破壊となるのが分かっていないし光害の認識がない」など至極もっともな反対意見が大多数でした。私自身は技術者なので技術的に困難なことに挑戦するという姿勢は評価すべきですが、このケースは企業の宣伝目的の意図の方が強く感じられたことと自然環境保護の観点から99%反対です。オリンピックに向けての宣伝も動機の一つだったようです。その後、企業側が反対意見を考慮して計画を撤回したとのことです。

 日本の空は既に十分明るく世界で最も光害の大きい地域のひとつとされています。星を観測する人にとっては厄介な問題です。東京のような都市部で建造物が密集している地域ではもはやどうしようもないとあきらめるしかありませんが、最近ではそのような場所ではなく地方の山の中で特に明るくする必要がない場所でも桜や紅葉をライトアップするケースがあります。あるテレビ番組では桜や紅葉などの季節にそれらをライトアップしてさらに演奏、撮影機材をセッティングした場所でミュージシャンが演奏する光景を放映しています。時には山の中だったりします。それはそれで美しい光景かもしれませんが個人的にはやめてほしいと思います。冒頭に述べたように山の中でのライトアップは自然破壊でありそこに暮らす動植物への悪影響が考えられます。一晩くらいならいいだろうという商業主義は遠慮してほしいと思います。


以下は富士山の夜空の写真。ライトアップの件とは直接関係ありません。


写真1:御坂峠からの眺望。河口湖町の夜景が美しいが空はかなり明るい。
EOS 5D Mk2, 16-35mm F2.8 (f2.8, 35mm), 15 sec. ISO 800, 2013.9.28



写真2:朝霧高原から見た富士山。この場所から見る空は比較的暗い
EOS 5D Mk2, 50mm F1.4 (f2.8), 10 sec. ISO 1600, 2013.12.6



写真3:本栖湖から東方向の眺め。
日没後早い時間帯でもあるが富士吉田市の明かりにより空はかなり明るい。
EOS 5D Mk2, 16-35mm F2.8 (f2.8, 16mm), 15 sec. ISO 1600, 2013.1.12


 2020年の夏季オリンピックに向けて関東地方では今後多くの建造物、施設が整備されていくと思われます。経済的に活性化することは良いことですが一方で自然破壊が進行することは間違いないでしょう。夜空が今より明るくなってしまうことも想像に難くありません。商業主義を100%否定することはできないとしても過度の照明やエネルギーの無駄遣いは控える方向に政府は行政指導してほしいと思いますし、我々一般人が意見を述べてそれを自粛する方向へ持っていくことは今後心がけたいと思う次第です。

(2015年11月22日)


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