飛行機に関する苦い経験


 ここ2,3年不順な天候が多く交通機関の心配をするケースが多くなりました。特にこの2週間は2つの台風が日本を縦断したので通勤の足にも影響がありました。JRは一部の列車の運休を早々に決め飛行機は軒並み欠航となりました。安全第一ですからやむを得ないと思います。天気が悪くても電車はそれほど危険を感じませんが荒天のときに飛行機に乗るのは気分がよいものではありません。少し昔の話になりますが飛行機に関する苦い経験を紹介します。


(1)強風の中での着陸
 10年以上前のことですが飛行機の着陸で怖い思いをしたことがあります。ロサンゼルスからソルトレイクシティへの午前中の国内便でした。1月のフライトで晴れていたのですが風が強く「天気晴朗なれど風強し」?という状況でした。ソルトレイクシティは冬のオリンピックが開催された場所ですが周囲に山があり山風が吹くことが珍しくありません。周囲の山には雪が積もっており青空に雪が吹きあがるような状況でした。飛行機は大きいほど風の影響を受けにくいのですがこの時の飛行機はDC-10 クラスだったと記憶しています。通路を挟んで両側に2列で乗客は100人くらいだったと思います。
 強風にあおられながらアプローチし滑走路すれすれのところをしばらく飛行したかと思うと再び上昇を始めました。それほど危険は感じませんでしたが機長はリトライを選択したようでした。旋回後2回目のアプローチも似たような状況でしたが滑走路すれすれの飛行時間が少し長く感じられました。高度が高いところでは少々揺れても危険は感じないのですが地面が近いと緊張します。ほとんど着地寸前まで降りたので着いたかなと思ったのですが再び上昇を始めました。周囲から落胆のため息が漏れ一部の乗客は気分が悪くなったのか何人かがもどしていました。
 機内アナウンスによるとロサンゼルスへ引き返すことを検討しているようでした。後から聞いた話ですが着陸を2回断念すると事故防止の観点から3回目は基本的には認められないということでした。その後状況がよくなったので再び着陸を試みるとのアナウンスがありました。着陸できなかったらホテルとレンタカーをキャンセルしないといけないがという考えが頭をよぎりました。3回目も似たような状況でしたが着陸に成功したときには機内から一斉に拍手がわきあがりました。空港から外に出ると青空と強風が身にしみました。


(2)高気温で出発遅延
 危険な体験ではありませんがこれもかなり前、日本からサンノゼに出張したときの話です。サンノゼ空港から成田への国際便でしたが8月の暑い日でした。搭乗手続きを済ませ着席して離陸を待っているときです。重量オーバーでこのままでは離陸できないのでボランティアはいないかとのアナウンスが流れました。同乗していたアメリカ人の話では飛行機には重量計がありパイロットは正確な重量を把握しているとのことでした。この日のように気温が高いと空気密度が下がり十分な揚力が得られないので離陸時の滑走距離が長くなります。それでも滑走路が十分長ければ問題ないのですがサンノゼ空港はやや小規模で滑走路が短いという事情がありました。離陸時の滑走距離を短くするためには飛行機の重量を減らす必要があります。重量を減らすには搭載している燃料を減らすか積み荷(乗客)を減らす必要があります。燃料を減らすと日本まで飛べないので必然的に乗客を減らすということでした。詳細は忘れましたがもちろんタダのボランティアではなく当日のホテルと翌日のフライトといくらかのキャッシュバックが提示されたと思います。飛行機は大型のジャンボジェット機です。確か20名くらいのボランティアを募っていました。私はどうしても帰りたいので待っていましたがボランティアはすぐには集まらないらしく何回かアナウンスが流れました。
 ボランティアが集まり荷物を積みなおして離陸するとのアナウンスが流れたのは3時間後でした。ボランティアが集まらなかったらどうなったでしょうか。運が良かったのか悪かったのかよくわからない出来事でした。


(3)オーバーブッキング
 これも日本からサンノゼに出張した時の話。帰りの便でチェックインを済ませ搭乗ゲート近くの待合所にいたときです。「オーバーブッキングなので座席が足りない。ボランティアxx名を募る(正確な人数は忘れましたが5名くらいだったと思う)」とのアナウンスが流れました。なぜこんなことが起こるかと言うと、航空機では実際の座席数よりも多くの予約を受け付けることがあります。直前に何らかの事情でキャンセルする乗客を見越して座席の稼働率を上げるためですが航空会社により方針は異なります。予想に反してキャンセルが少ない場合はオーバーブッキングとなります。単なるシステム上のエラーの場合もあるかもしれません。エコノミークラスの乗客が対象でしたが当日のホテルと翌日のフライト(ビジネスクラスへのアップグレードつき)、および詳細は忘れましたがいくらかのキャッシュバックまたはボーナスマイレージが提示されました。金曜日のフライトで翌日土曜日成田着予定でしたが私はその時体調がすぐれず、エコノミークラスに10時間以上座るのは苦痛だと思っていたのと、到着が日曜日になっても構わないと考えたので手を挙げました。
 ボランティアが集まり飛行機は無事出発しました。私は他のボランティアと一緒に会社が用意した車に乗せられて空港近くのホテルにチャックインしました。その際夕食のクーポン券も渡されました。進行は手際がよく航空会社はあらかじめ想定された事態を処理しているようでした。このような特典を提供したとしても飛行機の予約を実際の座席数に制限して多くの便を空席がある状態で運航するよりは収益が改善されるようです。
 翌日のフライトは久しぶりのビジネスクラスで快適に旅することができました。「景気が良かったころはビジネスクラスが普通だったな」と思いながら。



(2014年10月19日)


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