■「風邪」について2003/9/29

  急に寒くなってみなさま風邪気味だったりされませんか?
 風邪薬については、飲み方気を付けてほしいな〜と思っていますのでその話を。

1、簡単に風邪薬を飲むのは返って風邪を長引かせます、恐い副作用も頭にいれておいてください。特に子供には注意が必要です。

  風邪は9割くらいがウイルスによるものです(ライノウイルスやコロナウイルス)。ウイルスが身体に入ると、身体はこれをやっつけようとします。「咳やくしゃみ」はウイルスを身体の外に追い出そうとおこるものです。「熱」は、ウイルスが熱に弱いので、ウイルスを増えにくい状態に自分の体力を使ってあげているものです。 つまり「風邪の症状」と普通にいわれるものは、風邪のばい菌をやっつける為に身体がおこしているものです。
  さて風邪薬ですが、風邪薬はウイルスをやっつけるものではなく、この「症状」を抑える為のものです。つまり ウイルスをやっつけようとする身体の働きの邪魔をわざわざしているものです。風邪にもっともよく効くのは、「安静と栄養」です。風邪薬を飲む方がいいのは、症状のひどいとき、具体的には「咳がひどくて、それだけで体力を使ってしまうとか、夜眠れないとか」「熱が高くて食べ物を受け付けないとか、眠れないとか」です。 「風邪ひいたかな〜」くらいの時に風邪薬を飲んでしまうと、(休んで安静にしろという身体の信号を無視することにも繋がり)、かえって悪化します。
  風邪薬にも副作用があります。市販の総合かぜ薬にもとんでもなく危ない副作用があります。 スティーブンス・ジョンソン症候群というもので、読売新聞で特集で連載されていたのをお読みになった方はいらっしゃるかしら?この病気をおこす薬の種類はたくさんあるので、特にかぜ薬の副作用というわけではないのですが、気軽に飲む薬の副作用としてはひどすぎます。別名 皮膚粘膜眼症候群といって、そういう場所がただれ、ひどいときには失明・死亡という病気です。原因はアレルギーが関連しているらしいです。厚生労働省医薬品による副作用被害への取り組み
もうひとつ「間質性肺炎」という副作用も重いのであげておきますね。
一般用かぜ薬による間質性肺炎に係る使用上の注意の改訂について

  参考までに私はどうしているかといえば、熱が高くて、飲んだ方が楽だなという時(飲まない方がいいのは知っているんだけれど、飲めば楽なんですもの)は、総合感冒薬ではなくて、鎮痛解熱薬を飲みます。(ウイルスの種類と解熱剤の種類ーアスピリンで子供の場合ライ症候群という脳の障害、死に至る病気があります。更にボルタレン系のものでインフルエンザ脳症の子供の死亡率が高くなるそうです。子供の場合はアセトアミノフェンで。)咳がひどすぎというときは鎮咳薬。総合感冒薬という、今必要のない成分まで入っているものは避けています。「みずぶくれとか、皮膚とか」普段の風邪症状と違うものが混じったら、薬の副作用もちらっと疑います。(じんましんのような症状は薬の副作用ということも考えられますが、風邪の症状でもあります)

2、ウイルスによる風邪と似ているけれども、抗生剤が効いて、そういう治療をしなければ合併症が恐いものがあります。

  風邪は9割くらいはウイルスですが、細菌もあります。細菌は抗生剤でやっつけられます。この場合はとっとと抗生剤飲んでやっつけた方がいいです。しかし抗生剤には耐性菌という問題があります。抗生剤をいい加減に飲むと、その抗生剤が効かないタイプに変化した細菌が増えます。抗生剤を飲みはじめたら貰った薬は飲みきりでお願いします。症状がなくなっても飲んでおくのは、耐性菌をださない為です。
  喉が赤くなって高熱が出てというタイプは細菌の可能性が多くあり、「溶血連鎖球菌(溶連菌)」というものがあります。この菌の中もいろいろあるのですが、あるタイプは心臓と腎臓にいくと、リウマチ熱や急性糸球体腎炎をおこし、リウマチ熱では、心臓の弁の変形がおこることがあります。その合併症予防の為に家族全員で一週間以上の抗生剤内服が必要になったりします。「喉が赤くなって高熱」には、他にもあってアデノウイルスによるもの等があります。アデノウイルスは普通に風邪といわれる病気の主な原因ウイルスです。こっちなら「安静と栄養」です。アデノウイルスは夏場には「プール熱」をおこすものとして有名です。

  しつこい咳の場合、マイコプラズマ肺炎というのもあります。細菌とウイルスの中間のような病気をひきおこす微生物です。こちらも効く抗生剤があります。

3、特に治療を急ぐのは、髄膜炎です。

  身体の中で一番大事な場所は「脳と脊髄」です。外からは、脳は頭蓋骨の中に、脊髄は背骨の中で守られています。中からも脳ー脊髄バリアというのがあって、簡単にばい菌が入れないしくみになっています。ここにばい菌などが入って起こるのが「髄膜炎」です。ウイルスの場合は比較的軽くすみますが、細菌の場合は重症になって、後遺症が残ったり、死亡に至ることがあります。早く治療をはじめることが大変重要です。症状は頭痛・発熱・嘔吐。(普通の風邪と区別つきにくいですよね)「項部硬直」というのは耳慣れないとは思いますが、一応の目安にしておいてね。頭から背骨への重要な場所の情報が首にあらわれていて、首が曲がらなくなります。曲げると痛みがあります。普通首は柔らかく曲がって顎が胸のあたりへつきますが、それができなくなります。子供が首をつっぱって、ぐったりしていたら急いで病院へいってね。 でも子供の場合はっきりしないこともあり、また急に悪くなることもあるので、注意が必要です。

4、インフルエンザについて

  風邪より重い感じの症状がでるインフルエンザですが、こちらはインフルエンザウイルスをやっつける抗ウイルス薬が出ています。身体の中のウイルスが増えすぎる前に使わないとだめなので発症後48時間を過ぎると効果が期待できません。インフルエンザは死亡率は低いのですが、患者さんの数が多いので、死亡数はたいへん多い病気です。予防する方が大事ですのでワクチンを接種しましょう。特に今年はSARSの問題があります。SARSとインフルエンザの症状は似ていますので、SARSと誤解されない為にもインフルエンザワクチンをしておく必要があります。今冬のSARSおよびインフルエンザについて(感染症情報センター)

5、ここまで読んで、「いや〜病院のまわしものみたいな内容だ」(笑)
  私の親は私が何回か説明したにもかかわらず、「風邪ひいたみたい」と言って薬をほしがります、、、、、う〜ん「風邪ひいたら風邪薬でしょ」という昔気質がぬけないらしいです。飲んでおけば安心という、その安心感に重きをおこうと思ってあげています(笑)

バック