学生時代の頃から、会話中に「徐々に〜」という単語が出た時、僕は奇妙なポーズをとる。 己を抱きしめるような姿勢で指先を伸ばし、首を捻り、背中を反らす。 そう、それは荒木飛呂彦氏の漫画キャラが時折とるような姿勢。、とりわけ「ジョジョの奇妙な冒険」のキャラクター達が代表的な使い手であるところからその姿勢を名づけて・・・『ジョジョポーズ』! まあ、早い話が「徐々」と「ジョジョ」をひっかけた駄洒落である。 遅く言っても同じか。 会社に入り、ある日同僚、先輩らとの雑談中に「徐々に〜」という単語が出たので、僕は当然の如くジョジョポーズをとる。 一瞬訪れる沈黙。 「・・・・な、何?」 同僚の視線が痛い。 先輩の視線が寒い。 みんな、知らないのか!? 印刷→同人誌の連想から、ならオタクな社員もいるかと思ったのだがなぜか社内にもオタクな人はほとんどおらず、あまつさえエプロンの似合うドジな受付娘すらもいない始末。 当然、僕の課にもオタな人間はいないのだが、年齢も近い人ならジョジョポーズは知っているだろうと思っていたがそうでもないようだ。(「ジョジョの奇妙な冒険」という作品自体は知っているのだが) 宮城県民、ましてや仙台在中の人はおしなべて荒木飛呂彦氏の、ジョジョのファンであろうと思っていたのだが、それは間違いだったようである。それは、さながら関東以南の人間が東北の人間はすべてスキーが出来ると思っているかのように。 でも、これからも僕は「徐々に〜」という単語が聞こえたら奇妙なポーズをとり続けるだろう。そう、なぜならばギャグというものは一度で受けなくても、二度三度と繰り返し、「お約束」として定着させることで新たなスタイルが確立されるものなのだから。 そう、心に決めた。随分と前の話ではあるが。 先日、休憩時間の雑談中に「徐々に〜」という単語が聞こえた。 僕はいつものように首を不自然に反らし、腰を捻り、幾本かピンと延ばした指先を奇妙に開き、胸の前で腕を交差させ虚空を見つめる。 一瞬訪れる沈黙。 そのとき、新人の彼が言った。 「何やってんですか。それじゃあジョジョじゃなくて花京院じゃないッスか」 ・・・・・・・・・。 世の中、どうやらまだまだ捨てた物ではないようだ。 2004.06 |