寄稿第四回「東京スカパラダイスオーケストラ、ライヴレポート」 written by gawa

 夏のある日、あたしはコンビニで小冊子の表紙をでかでかと飾る「リバーダンス」
という文字を発見し、心踊った。リバーダンスとは、アイリッシュダンスを取り入れ
たミュージカルみたいなもの、とあたしは勝手に理解しているが、実は見たことがな
いので知らない。ここらでいっちょ、見ておかない手はないと思い、小冊子を手にコ
ンビニを出た。

 あたしはさっそく、友人Nを誘ったところ、友人は「ふうん」とパンフレットの
ページをめくり「ねぇ、これ行かない?」と、指差していたのは東京スカパラダイス
オーケストラ! これまた知ってるようでよく知らない、ここらでいっちょ見ておか
ない手はない、と思い、リバーダンスのチケット確保もしないまま、とりあえずスカ
パラのライブに行くことに決めたのだった。

 というわけで、あっという間にやって来たライブ当日。友人に借りたミニアルバム
を、出かける前にざっと1回聴いただけ、というスカパラ入門者のあたしにとって、
会場の熱狂ぶりはオドロキだった。「ライブ中はジャンプして踊るんだよ」と聞いて
はいたものの、ホール内は人が行き来するのも難しいほどの超満員で、果たしてこれ
でどうやって踊るというのか?などと、実に初歩的な疑問を感じてしまった。

 ナゾはすぐに解けた。というか、ナゾに感じたこと自体、無意味とも言える。皆、
ぶつかり合いながら、好きなように踊りまくっていた。集団宗教でトランス状態に
陥っている人の群れってのは、こういう感じなんだろう。などと冷静に見ていられた
のはほんの一瞬だった。スカのウラ打ちのリズムと一定の拍を刻みつづける太いベー
ス、オモテの力強いフレーズは、あたしを相当ハイにしたし、くたくたになるまで叫
び躍らせるに十分の迫力だった。

 演奏はほぼノンストップだったし、MCもすごく短くて、代わりにたたみかけるよ
うなドラムのフィルがかぶさって、すぐ次の曲が始まる。休むような間はなかった。
それは演奏する側も同じだった。ドラムの叩きっぱなしがつらいのは、見て充分にわ
かるけれど、管楽器の吹きっぱなしというのも、実はものすごく疲れる。たぶん歌う
よりつらい、なんて書くと、熱烈歌うたいに怒られそうだけど、まぁ熱烈に歌うのと
同じくらい大変だろうに、終了のアナウンスがホールに流れても一向に帰ろうとしな
いファンのために、上半身裸・肩からバスタオルといういでたちで再々アンコール演
奏をしてくれた、熱い男たち、スカパラ。

 若かりし頃、あたしは金管楽器を吹いていた。小学校のマーチングバンドでトラン
ペットを、中学と、高校の途中までトロンボーンを吹いていた経験がある。当時は同
じ楽器を使ってこんな風に表現することを知らなくて、ただ楽譜通りにやることに嫌
気がさして辞めてしまったのだけど、スカパラを見てしまった今、辞めたことが実に
もったいなく思える。あぁ、トロンボーンがあんなにもカッコイイだなんて!!

 ライブ終了間際、ステージからはスティックやらピックやらが投げられた。どうい
うめぐり合わせか、あたしはピックを手に入れてしまった。飛んできたから、思わず
夢中で拾ってしまったのだけど、周りの熱狂的なファンから「じろっ」と見られてし
まった。たぶん彼らは悪気はなくて「いいなぁ」とか思って見たんだろうけども、あ
たしは自分がスカパラ入門者(しかも一夜漬けですらない、半日漬けだ!)でしかな
いことをちょっと負い目に感じてたんで、それで一気に現実に戻ってきた。

 「今日はありがとう!チョー楽しかった!」という、熱烈スカパラファンの友人N
に、拾ったピックをあげた。彼女は半泣きで喜んでいたが、ちっとも疲れてないのか
?!とも思えるテンションの高さ。とはウラハラに、帰りの電車では2人で爆睡し、
危うく車庫に入ってしまうところだった。やれやれ。喜んでる場合じゃない。早いと
こリバーダンスのチケット、取らねば。誰か一緒に行く人、いないのかなぁ?

10月19日
場所 名古屋クラブダイヤモンドホール