島々谷川砂防工事に関する要望書
 
松本砂防工事事務所所長
佐藤一幸 殿
 
 1999年6月下旬の大雨(約30年に一度の雨量)により島々谷川流域からも多くの土砂が流出しました。幸い人身災害には至らなかったものの、道路、一部の施設が被害を受けました。私たちは6月下旬の大雨の後、数回に渡り土砂の流出状況を調査し、それを別紙の通りまとめました。調査の結果を含め、防災と渓流環境保護の両立を考える立場で以下に示す通り要望いたします。なお、これは前回提出した「島々谷北沢六号砂防ダム建設中止の意見書 」を前提としたものです。
 
1.ワサビ沢トンネルの排土を使った盛土部の撤去
 この場所は、もともと幅の広い河床部であり、地形上谷自身の持つ遊砂地(土砂調節効果を持つ場所)としての機能を生かす場所でした。この部分への不安定な盛土の増設は、この部分が水衝部であることも手伝って、今後の大雨で土砂の供給場所となり土砂災害に結びつく可能性が十分にあります。また、上流より流出した土砂の調節スペースをも狭めることになります。
 なお、この盛土は全国的にも名前の知れた島々谷という渓流にはあまりにもふさわしくない景観だと思います。
写真 ワサビ沢トンネルの廃土
 
2.二股トンネル入口下部および旧営林署作業小屋近くの河床の盛土の撤去
 二股トンネル入口下部(右岸)の盛土(約4千)と旧営林署作業小屋近くの盛土(6千〜1万)の撤去を求めます。1.と同様河床の中に盛られた土砂は、今後の大雨で流出しやすく、また、谷の持つ土砂を堆積させる機能(土砂調節効果)を損なうものとなります。
 二股トンネル入口下部の盛土         旧営林署作業小屋付近の盛土
 
3.土砂測量調査結果の公表
 1999年秋の土砂測量調査結果、および、10年前あるいはそれ以前に行われた土砂測量調査結果の公表(私たち、および、安曇村)を求めます。今後科学的なデータに基づいた建設的な議論を進めて行くためにどうしても必要です。
 
4.松本砂防工事事務所の進めている自然環境調査の中間発表
・猛禽類の生息状況と確認の有無
・イワナの産卵場所
・ヤマセミ、カワネズミなど動植物の生息状況と確認の有無
・景観評価など
 
 
5.6号砂防ダム建設に関する話し合いの場を設定
 安曇村村民、渓流・河川に関わる市民団体、自然環境保護団体および私たちに、今までに分かっている様々な情報を公開し、公開の場で自然環境、防災問題を解決していくために、知恵を出し合う場が必要です。
 
6.島々谷にある既存の砂防ダムをスリット式に改修して行く
 改修する場合、様々な問題がでる可能性もありますが、基本的には流出土砂コントロールの効率を上げることができ、今まで砂防ダムが壊してきた渓流環境の復元にもつながります。
 
 これらの要望を、前向きに検討していただき、その結果の連絡をお願い致します。
 
 2000年2月7日 
 
砂防ダムいらない? 渓流保護ネットワーク代表 田口康夫

信濃毎日新聞社