東京電力株式会社社長 南 直哉 様
東京電力株式会社、松本電力所長 中島 文良 様
東京電力株式会社は、長野県梓川支流水殿沢中流部に平成四年三月に取水工を完成させ取水をしております。(最大取水量5.0立方メートル/秒 年平均取水量1.24立方メートル/秒) なおこれと同時に維持流量として毎秒0.066立方メートルの水が放流されております。
この取水工ができる以前は、豊かな水量とそれに伴った水性昆虫、イワナ、岩に付着するコケ類、水際の植物、そして渓流景観など、どれをとっても取水工よりも上流と比べ見劣りしない美しさと渓流特有な豊かな生態系が維持されておりました。
しかしながら取水と維持流量の放水が始まるや否や、豊かな水量が流れていた時代に渓自身に造られた河床景観は維持されているものの、イワナ、水生昆虫、コケ類、植物などと総合的渓流景観は先細りするばかりです。
また取水工(沈殿槽)内に溜まった上流の排砂は下流の水生昆虫、イワナなどの生物の生息に致命的ダメージを与えております。
そして現材の維持放流の流れは、ダム湖手前数百メートルで伏流してしまい、ダム湖につながっていません。このことは秋の産卵期にダム湖から産卵遡上してくる魚類の習性に対して全く考慮されていない維持流量であることを示しています。
またこのダム湖は揚水式ダムのため、水位の上下変化が激しく、流れ込みの伏流の湧き出る部分は絶えず冠水、または水無し状態となり、仮に産卵された卵は干上がる運命になります。そしてダム湖への流れ込み部は微粒有機物やソルトなどが堆積し易く産卵環境を阻害しております。
このような状況下でイワナ類の産卵条件を考えれば、まずは渓の流れを湖につなげることが一番大事ではないかと考えます。
従って現材の維持流量を見直し、ダム湖から大型のイワナ類が遡上できえる、また総合的な渓流生態系が復活できる流れを生み出すための維持流量の確保を要求いたします。
そして水殿沢は中信地域で唯一、取水工以外の人工障害の無い貴重な大型沢であることを重視し、将来的には取水工の撤去も念頭に置いた対策を考えていただければ幸いです。
2000年12月26日
水と緑の会会長 竹内 繁治
ひこばえ会長 村上 さよ子
砂防ダムいらない?渓流保護ネットワーク 田口 康夫