島々谷川(長野県南安曇郡安曇村)北沢第6号砂防ダム建設中止の要望書

2002年11月14日
国土交通省松本砂防工事事務所長 長井義樹 様

 私達はこれまで島々谷川北沢第6号砂防ダム建設中止を求めて3回(99年1月28日、99年6月10日、00年2月7日)の意見書、要望書の提出をしてきましたが私達の要望が十分に取り入れられたとは言えません。ここに再度提出することに至った事は、私達が島々谷川北沢の環境を保護したいとの多大な情熱とその気持ちの現れです。現在日本においては砂防ダムなどの人工構造物の無い渓流を見いだすことは殆ど不可能です。こうした中で、北沢のような谷を保全する意味は今後ますます増大していく一方です。また社会的には環境保護に対する要求は大きな潮流になっており、河川法の改正や環境政策大綱ではアセスメントの理念を実践するなど環境保護の考え方が反映されております。こうしたことからも北沢第6号砂防ダム建設を中止すべきです。
 これまで提出した要望、意見書内容の中で工事の一時休止、環境調査、土砂流出測量調査などが実施されたことに関しては評価をしたいと思います。今後は公の場所においてこれらの調査結果を元に、代替え案を含めた6号砂防ダム建設中止のための議論をしていくことが必要です。本年6月13日の長井義樹所長との顔合わせでは、各調査の公開と話し合いの場を設けるなどの合意ができました。また、前々任の佐藤一幸所長、前任の西山幸治所長在任時の話し合いの中で「工事の一方的な進め方はしない」との合意がとれていました。しかしながら、今回発注された6号砂防ダム模型作りと今後予定されている模型実験は私達が提案してきた話し合い路線から外れているばかりでなく、砂防ダム建設への一方的動きと見ることができます。私達は今回の発注行為に疑念を抱かざるを得ません。従って今回の模型作り発注に対して強く抗議をすると同時に今回の要望書を提出します。

1.北沢の美しい景観と渓流生態系を現状に近い状態で維持すること。

2.既存の0号、1号、2号、4号、5号砂防ダムの定期的な浚渫、もしくはオープン型(スリット式)への改修をすること。(特に1号砂防ダムのスリット型への改修は優先度が高い。それは99年の大雨と土砂流出が物語るように、地形的弱点も含めダムによって河床が上がった分、土石流が道路に溢れやすくなり、道を通って下の人家に押し寄せる危険性が増していました。従ってスリット型に改修することで河床を下げる必要があります。)

3.既存の3号砂防ダムの浚渫をすること。(99年大雨時も小嵩沢からの土砂流出が多かった。なおアーチ式ダムなのでオープン化への改修は難しい。従って浚渫するしか方法はありません。)

4.工事用道路建設、トンネル建設などの工事によって出た土砂を、本来川の持ている土砂調節機能のあるスペースに放置することは、調節機能低下と土砂流出のポテンシャルを高めることになります。従って旧営林署小屋(99年土石流で破損)近くの河床への排土の盛り土、二股トンネル入り口手前河床への排砂の盛り土、ワサビ沢トンネル工事排土の河床への盛り土など、これらの例は砂防理論からみても本末転倒ですのでこれらを撤去して下さい。    

5.4号砂防ダムの主な満砂原因は5号砂防ダムのための工事によるものであり、5号砂防ダムの満砂原因は6号砂防ダムのための工事(道路、トンネル建設)によってもたらされていた現状は看過でききません。(工事そのものが目的化されていると言われても仕方がありません。)

6.環境調査、土砂流出調査の結果を早急に公表し、住民との話し合いの場を設定して下さい。

 過去の砂防行政には渓流環境を重視する考え方はありませんでしたが、最近は河川法の改正や環境を重視する政策大綱の理念が打ち出される事にも見られるように、砂防法の見方も環境を重視すると言う傾向が出され大きく変わりつつあります。この様な状況の中で私達は防災と環境の調和を求めて、防災面、財政面、環境面を考慮した対策を科学的根拠に基づいて建設的に話し合う精神を持って進めていくことを心から望んでいます。

蒜沢川を語る会  代表 鎌鹿隆美  (北海道函館市)
日本勤労者山岳連盟  副委員長 後藤功一  (東京都)
水と緑の会  会長 竹内繁治  (松本市)
自然観察の会 ひこばえ 代表 村上さよ子  (松本市)
安曇野環境ふぉーらむ・八面大王 小柴善一郎 (穂高町)
あずみの道草あかとんぼの会   代表 及川稜乙 (大町市)
女鳥羽川の自然を考える会  代表 伊藤敏郎  (松本市)
松本地区労組会議  議長 宮下正夫  (松本市)
緑の松本地区会議  議長 小原春美  (松本市)
水環境を守る長野県民の会  代表 永田恒治  (松本市)  
烏川渓谷の自然を考える会  代表 藤澤雄一郎  (穂高町)
黒部川ウオッチング・富山ネットワーク  代表 金谷敏行
砂防タ゛ムいらない?渓流保護ネットワーク  代表 田口康夫

市民タイムス  2002/11/15
信濃毎日新聞 2002/11/15
朝日新聞    2002/11/15