烏川の支流一ノ沢にある浅川砂防ダムは高さ35m、長さ97mの大きな砂防ダムです。流域にはクマ、テン、イワナなどの生息も見られるということですが、現在19基ほどの砂防ダムが造られているそうです。
写真1 浅川砂防ダム
高い林道の位置から堰堤の上流をながめると、眼下には川底の石まで見通せる澄んだ流れが見えました。
写真2 浅川砂防ダムの堰堤の上流部
川をはさんで、右岸は広葉樹の緑におおわれ、左岸は林道を切り開いたためか、がれ場のようなところが多いのですが、広い河床には土砂の堆砂した所は全く見られません。また、堰堤がよく見える場所に移動してみると、急に川幅の狭まったあたりに造られたダムの堰堤の内側は丸見え、ダム竣工から13〜14年の歳月がたっているにもかかわらず、土砂の堆積はほとんどありません。
田口さんのお話によると、「この砂防ダムも、ここに必要というよりは、予想される土砂流出量の流域平均での数字の割り出しや、造り易い地形の場所である、という理由で造ったと思われる。」ということでした。「土砂がいっぱいにになる頃は、ダム本体のコンクリートの寿命がくる時と一緒かも知れない」とのことでした。
写真3 浅川砂防ダム下流での森林の伐採
続いて、中房川の20基目の砂防ダムを見ました。道端に盛り上げられた土を乗り越えて川に近づくと、既存の古いダムのすぐ上流に高さ28.5mのダムの壁が谷を塞いでいます。
写真4 中房川砂防ダム
私たちの歩いた右岸は、盛土して道を造り、ヒノキなどを植え、岩を伝って落ちる滝の回りをコンクリートで囲い、ダムの案内の看板まで立っている、という凝りようでした。
写真5 滝の回りをコンクリートで囲う 写真6 中房砂防ダムの看板(ダムの左側は魚道)
さらに、「魚道」と言われる構造物は、人は登れるけれど、お魚さんはどうやって登るんだろう? と首をひねってしまいました。人が自然の中に人工物を造りさえすれば、自然環境の保全だと単純に考えている人がきっといる、と思いました。この魚道は7500万円を費やしたそうです。
写真7 土砂で埋まらなくても魚が登れそうにない魚道
左岸に目をやると、堰堤の真上に切り立った岩場が残っており、ここも中房渓谷の美しいV字谷に、しかも上下あわせて20基目という信じられない場所に造られているということが、よく分かりました。
写真8 魚道から見た左岸(かつては美しい渓谷でした)
人々にはあまり知られていない場所の、自然破壊と巨額の無駄遣い、私たち市民が、もっと賢く厳しい目を持たなくてはなりません。