ごえんの会主催・砂防ダム視察ツアー報告 2002.09.07/08
保坂展人衆議院議員の後援会である「世田谷ごえんの会」の呼びかけで、 長野県の砂防ダムを視察するスタディツアーが九月七〜八日に行なわれた。
ツアーには、保坂議員を含めた東京からの参加者約二十名に加えて、地 元長野からも山口わか子衆議院議員をはじめ約十名が参加。地元で活動を 続ける市民団体「砂防ダムいらない?渓流ネットワーク」を中心とする自然保護グループと交流しながらのダム群視察となった。
まず七日に訪れたのは、穂高町の中房川に県が建設した中房砂防ダム。 「渓流ネットワーク」の田口康夫代表に案内をされて川に沿って歩いてい くと、突然眼前に高さ二八・五メートルの同砂防ダムがあらわれた。「ま
るで城壁みたい」と驚きの声をあげる参加者をさらに驚嘆させたのが、水面から階段状に続く「魚道」だった。 田口氏によると「魚はまったく上ってこない。ときどきサルが上り下り
に利用しているようです」とのこと。この魚の通らない「魚道」だけで一 億五千万円もの税金が注ぎ込まれているのだ。 「公共事業チェック議員の会」の副会長で、この「魚道」について国会で
質問もした保坂議員も「魚道というのは魚が上がるためのものなのに、こ んな無用の長物に大金をかけている。これで『自然環境との調和』という のはおかしい」と憤る。
翌八日の視察は、ウェストンなど多くの登山家を魅了してきた島々谷。 この美しい渓谷にもすでに大小五基の砂防ダムが建設され、今また山深い 谷に高さ四○メートルを超える巨大な砂防ダムの建設が進められようとし ている。
参加者たちは、初秋の緑なかをその建設予定地に向けて歩を進めていく。 途中、ダム建設のためだけにつくられた道路やトンネル、掘り出した土砂 を捨てた川原を目にして、「改めて砂防ダムの問題点を考えさせられた」
と話す人も。実際に、これらの工事による残土が、下流部に流れるという 事態も起きているという。
真っ暗なトンネル(これもダム建設のためにつくられたものだ)を懐中 電灯の光だけを頼りに歩いていくと、突然切り立った崖と緑彩る絶景が飛 び込んできた。
「こんな美しい山奥の渓谷に巨大なダムができるなんて信じられない」と 口を揃える参加者たち…。
「土砂が流出している形跡はほとんど見られないのに、わざわざここに砂 防ダムをつくる必要があるのか。むしろ土砂が出ているのはダムを建設し 続けてきた下流部のほう。人為的に手を加えることで、かえって自然の流
れや地形による災害防止をさまたげているのではないか」と、田口氏は旧 来の砂防ダム行政に疑問を呈す。 田中康夫県知事もダム事業の見直しのなかで、「砂防ダムも含める」と
明言している。 「防災の名のもとに無駄な公共事業を続けてきたのではないか。砂防ダム の問題は今後も国会でも追及していきたい」と保坂議員は話す。
(報告・世話人/森口秀志)