九州視察 簡単報告 その4 渓流魚編

渓流保護ネットワーク・砂防ダムを考える 田口康夫

 川辺川に行くのは3回目だったが、釣り好きの私が川(砂防)を見に行くのだから竿を振らないわけがないといつも思っていたのだが、今までは時間的な問題でそれができなかった。今回は、川辺川の在来ヤマメの顔を見たいこともあり、案内者からよさそうなポイントを聞いて一つの沢に入ってみた。イワナの南限は四国までということになっているため九州の渓流にはイワナはいないはず。しかし、現在では放流が進みヤマメと混在しているようだ。外来種の持ち込みはやめるべきだと思うが、川辺川では議論されていないとのこと。
 また長野県の渓流に比べ水温が高いので、放流区間ではかなり上流までヤマメとタカハヤが混在している。期待を込めて入ったのだが、一昨年からの豪雨続きで谷が荒れており、在来ヤマメの顔を拝めなかった。ただ谷が荒れたため新たに治山工事が入っており、工事用の道路が上流に伸びこれを使って養殖ヤマメが放流されていた。


写真90 汗の谷滝


写真93 谷止工上流の荒れた谷

写真90、93:川辺川汗ノ谷の雰囲気、かなり荒れているため復活するにしても4、5年はかかりそうだ。新しい治山ダムまでは沢山のヤマメが放流されていた。


写真58 松岡養魚場在来種

写真58:在来のヤマメを養殖しており、特徴はパーマーク(サイドの小判型紋)が丸いとのことだった。


写真97

写真97:放流ヤマメのパーマークは小判型で長い。川辺川の多くに放流されているとのことだった。以前から九州以外の他県からも卵が持ち込まれているようだ。在来ヤマメの養殖がもっと普及していかないと、砂防工事などの道路が上流へ伸びそのたびに放流が行われていく、釣り人が動かない限り在来種の維持は難しくなる。


写真61 出水市のタカハヤ


写真64


写真66 出水市の在来系ヤマメ

写真61、64、66:出水市の1000mくらいの山から流れ出る渓流にタカハヤと在来ヤマメが混生している。タカハヤもこちらの渓流にはいない。私の大きな毛鉤にもぽんぽん飛びついてくる。    
 ヤマメのパーマークが丸いところから、この川にはまだ在来種が生息しているようだ。海に近いため砂防ダムなどが無かったころに遡上し住み着いたらしい。もしかしたらここが南限かもしれない?意外とあまり知られていない川に在来種が生息しているかもしれない。

 ちなみに九州ヤマメの南限は、鹿児島県では川内川、宮崎県では広渡川とされている。霧島山系の川でも見られるようだが、過去に放流されたものが生息しているとのことである。しかし放流が頻繁に行われてしまったため、在来種の生息を確認するのは難しいようだ。道路の無い源流や釣り対象にならない短い河川を調べることが面白いかもしれない。


写真68 カワムツ

写真68:里山に下ったあたりからカワムツが生息し始める。長野県の渓流では見られない種である。


写真17 高千穂峡


写真21 高千穂峡


写真29 高千穂峡ボートから

写真17、21、29:宮崎県高千穂狭は五ヶ瀬川の上流で、阿蘇の溶岩が固まった後に浸食され、切り立った景観が素晴らしい。五ヶ瀬川は延岡市に流れ出るが、河口付近でも水量があり水もきれいであった。しかし、高千穂狭の上流にダムがあるため、放流時は写真のような濁りと臭いが出ておりあまり気分はよくない、せっかくの景観が惜しまれる濁りであった。


写真32 水前寺公園

写真32:熊本水前寺公園だが、ここにいるササゴイが魚を捕まえるのに疑似餌を使うということを聞いていたのでよってみた。残念ながら見られなかったが、鳥がこのようなことを覚え、またそれが真似され伝わっていくことに感心する。鳥にも文化というか知恵というか、たいしたものを持っているものだと関心する。

  福岡、熊本、鹿児島、宮崎と車で移動していたのだが、お盆のかき入れ時に渋滞らしい渋滞には全くあわず、キャンプ地もガラガラ空き、民宿なども混むという感じがしていなかった。その中で高千穂は別格だったが、それでも信州の込み具合から見ればかなりの差がある。あちらでは観光で食べていくことの難しさをつくづく感じた。
 今回、夏の暑い時期に大丈夫かなと思っていたが、標高の高いところをキャンプ地として使えば、案外快適な寝泊りを送れることが分かった。次回は砂防とヤマメの南限を探る旅に再度行きたいものである。
 最後は阿蘇を経由して熊本に戻ったが、阿蘇の周辺の川も水がきれいでじっくり竿を振ってみたい気がした。九州の川も雨が多い分、深く険しい渓谷が刻まれており、まだまだ守るべき美しい場所は多い。砂防問題の普及はまだまだ必要だ。今回の旅で砂防大国日本に挑戦するエネルギーをもらったような気がする。

                                  ・・・・終わり・・・・