脱ダム国際シンポジウム

−<ダムにたよらない総合治水を考える>−

・・・・「脱ダム宣言」を発した田中康夫長野県知事、私たちはダムに変わる「21世紀の新しい総合治水」をめざして長野県松本市に於いて「脱ダム国際シンポジウム」を開催します。開催要項は次の通りです。・・・・

■日 時  12月12日(木)午後6時〜9時30分
■場 所  松本市・勤労者福祉センター大ホール 
■参加費 500円

−シンポジスト−

「ヨーロッパで進むダムによらない治水」  アレクサンダー・ジンク(オーストリア・河川専門家)・・60分

「近自然工法による治水と自然再生」    福留脩文(西日本科学技術研究所・所長)・・・・・・・・45分

「これからの公共事業」             天野礼子(アウトドアライタ)        ・・・・・・・・・50分


「ヨーロッパで進むダムによらない治水」
  アレクサンダー・ジンク(オーストリア・河川専門家)・・60分
  Karl Alexander Zinke  ドイツ人、元WWFドイツ、オーストリア所属、中央・東ヨーロッパ環境管理コンサルタント

1.千年に一度の大洪水
 2002年8月にヨーロッパで発生した大洪水はドイツ、オーストリア、チェコなど広範囲に死傷者を出した。
被災者は数10万人にも及ぶ、1000年か2000年に一度の大災害となった。エルベ川とダニューブ川(ドナウ川)が
あふれ、ドイツ、オーストリア、チェコスロバキアなど各地で大被害があった。チェコではGDPの3%にも被害額は及び、
回復には2〜3年かかる。被害が大きくなった原因は洪水が起きるところに家や施設を作ったこと、アスファルト道路
など透水性のない道路を作ったことなど。各国は軍事費を削って救済に当たった。

2.洪水・災害の原因
<自然的要因>
 極端な気象状況。原因は気候変動(地球温暖化)と思われる。
<人的要因>
 危険地域での複合的建設活動(道路、建物)
 全ての河川流域でなされた遊水池削減
 水路化された川底により、流れが加速され、下流域で洪水のピーク時の水位が上昇
 地表面を(アスファルトやコンクリートなどで)覆うことにより、雨水の浸透率が低下
 洪水防御計画の不十分(誤った貯水池管理)
 警報、監視、情報システムが不十分(ソフト面の対策不足)

3.被害への対応

・国民に募金を募り、募金額の倍を政府が補助するようにした。
・国民は、洪水を防げない無駄な治水施設を作ったことで政府を非難した。
・政府は被害を受けた5つの村を移転させ、その83%を負担した事例もある。
・また危険地帯に家や施設を作ることを許可した政府に対して裁判を起こされた。
・保険は79000件が対象となった。政府は裁判になれば負けると考え保障を急いでいる。

4.対策と政治的な結論
<政策転換>
 2002年9月15日に開催された「河川会議」で、政府は来るべき洪水を防ぐための5つのプログラムに同意した。
(1)全ての河川拡張計画は2003年の初旬までに見直し、より自然な氾濫原を建設する。
(2)洪水の影響を受ける地域では新らしいいかなる商業、住居目的の開発もしてはらなない。
(3)自治体の洪水防御システムの構築
(4)政府が環境に及ぼす影響を結論づけるまで、全ての河川交通向上を目指す河川開発プログラムの停止の呼びかけ。
(5)川が自然にふくらむように、いくつかの堤防と洪水防御柵の除去、下流にかかる圧力の撤去。

・河川に氾濫する余地を与えず、河川の周囲で(道路や建物などの)建設作業を行った結果がこの被害をもたらした。
・「洪水を防ぐための全ての建築物が下流域の洪水の危険をさらに増やした。よって、非居住地に氾濫原を取り戻すために国家が努力しなければならない。」


■「近自然工法による治水と自然再生」    福留脩文(西日本科学技術研究所・所長)・・・・・・・・45分


■「撤去へと進む治水と自然再生」       天野礼子(アウトドアライタ)        ・・・・・・・・・50分

■「薄側の現状と方向性」             小林勇雄


◇パネルディスカッション◇

 「世界の潮流を受けた”長野モデル”のあるべき姿」

−パネリストー

司会:田口哲夫

■五十嵐敬喜(法政大学教授)
■福留脩文
■天野孔子

<特別ゲスト>  長野県知事

 田中康夫

@五十嵐敬喜
 基本高水などに対して代替案がうまく出てこない。住民が川を生き生きとさせる
にはどうしたらいいのか、その勉強が足りない。また住民が自治体を動かす意識
が大切である。

小泉首相は国民を信用しないが、田中知事は県民を信用している。そこが違いで
ある。

@天野
これまではダムが前提であった。これからはお金をかけないことが重要である。

@田中知事
 ハードランデイングだけではダメ、ソフトテイクオフが必要だ。小泉首相と自分の
違いは市民に触れるか触れないかである。政、官、業、学、報の5つがこれまでの
政治を悪くしてきた。国交省は薄川に対してダムを造らない治水計画を認めた。
国自身がダムに寄らない治水を認めたのである。

@天野
アメリカのウイスコンシン州では古いダムに対してダムを撤去するなら補助金を
出し、残すなら管理主体者が自前で維持管理をすることを決めた。維持管理の
ほうが3倍もかかり、水道料金も上がるため、新しい市長は撤去を決めた。そして
川に川本来の風景が戻った。

@田中知事
熊本の荒瀬ダムが7年後の撤去されることが12月10日に潮谷知事によって発
表された。このことを国交省はあらかじめ知っており、ガス抜きかも知れない。
なぜならすぐ蒸留に建設を予定している川辺川ダムを推進しているのにおかし
い。またマスコミもそのことを取り上げない。

@天野

長野でまず日本で初めての具体的な廃ダム、「ダムを壊し」をしてほしい。

@五十嵐
ほかの知事は改革派といいながら道路は作れといっている。彼らは恐怖心がある
のではないだろうか。住民も気をつけなければいけない。逆転される可能性もあ
る。まるでリトマス試験紙である。市民側も公共事業カットをひるまないことで
ある。補助金を国は現在30兆円使っているので、それを自治体に任せるべきで
ある。また市民が提案する「市民事業」が大事である。例えば風車とかゴミの処
理についてはどうだろうか。ジンク氏が言ったヨーロッパ型の訴訟や移転などは
日本ではシステムを変えなければ難しい。日本は議会が死んでいる。

@田中知事
51対49の多数決を民主主義というなら、それはポピュリズムである。私は林
務部の予算を1,5倍にしたがそれでもその7割は森林整備ではなくて治山とい
う公共事業に使われている。しかしこうしたことに対して、住民の意見を反映し
手知事が施策を積み上げていけば、それは民主主義になる。

@天野
公共事業再生法案を利用して市民側が手を上げることが大事である。

@田中知事
環境学者のうち、造園学者は開発業者であり、保全学者は原理主義者である。構
造改革と公共事業再生法案を結びつけて行動していくのもこれからの方向のひと
つだと思う。

主催 脱ダム国際シンポジウム実行委員会


   更新日 2003/01/03
最終更新日 2005/09/17