防災とボランティアの日シンポジウム

 主催は、国交省松本砂防事務所、大町市、北アルプス広域連合、松本広域連合であり、毎年ほぼ内容主旨は決まっている。それは災害現状報告と災害対策してのハード、ソフトの強化などの必要性を説くものである。何の知識も無い人から見ると一見そうだなと思わせるやり方で砂防や治山、ダム建設を増やさなくてはならない現状を強調している。ここ2年くらいは小中学生のパフォーマンスを取り入れ、一般人への説得力を高めようとしているのが目立つ。

 特に県、市、協会(業界)が一体となって国の方に予算請求する意気込みが強く出ていた。

 基調講演は、気象庁長野気象台長の話で、これは気象現象を統計的に解析して説明するもので恣意性はない。
 対し、活動報告の長野県砂防ボランティア協会、NPO法人新潟砂防ボランティア協会、松本砂防スペシャルエンジニアの話。パネルディスカッションの参加者、腰原副知事、牛越大町市長、大日向元八坂村長、植野松本砂防所長(彼は首長たちからの意見に対し守勢であった)などの話の内容は度を越えていた。

 よって、話の内容に質問、意見をすることとなった。今回の質問は、腰原副知事や大町市長がたびたび話した「砂防ダムが造られたところは土石流が起こっていなかった」という事を持ってダムの必要性を説いていたことに対する批判をした。その要旨はつぎの通りである。

1、新しく砂防ダムが建設される場合は、それに先立ち土石流が出たところが優先的に実施されるのであり、1回土石流が出たということはその沢の流域の不安定部分が落ちてしまい、しばらくは土石流が出にくい状態となることを意味する。従ってダムをつくった事をもって土石流が出なかったのではない。
2、鹿児島県出水市の土石流災害のように、新しい14m級のダムができたばかりのところで土石流が出て10数名が亡くなった。この時下流住民は、ダムがあるから安全だという意識が強く働き避難体制をとれなかった事実を示した。
3、砂防ダムは土砂コントロール機能を持っているが、ダムの持つ土砂調節機能を上回る土砂に対しては防災上機能しない。また、どのくらいの土砂が流出するのかを判断することができない今日の科学(工学)の現状において、ダム建設イコール安全だという発言を行政トップがすることはおかしい。
4、100年かかって砂防を整備してきているが整備率は20%くらい。これを上げることは至難のこと、これらのことを考慮すれば土砂災害防止法の意味する事が大事であり、特に危険地帯からの撤退にもっとお金が回るようにすべきだ。

 などの少々長い時間を使った質問意見を副知事と所長に出した。

 全体の感想としては、県、市町村、業界は本気で砂防の復活を目指していることを強く感じた。
このままでいくと、本来必要(医療、福祉、年金、教育、温暖化、食料などなど)なところにお金が回らなくなる世の中になってしまう。

田口