砂防ダムを考える全国集会in七飯・函館 集会宣言


脱ダムから改ダム、廃ダムヘ

―ふるさとの山と森、川と海を取り戻すために―



 私たちは、砂防ダムが川だけでなく森や海におよぼす影響をさまざまな角度から考え、論議するために全国から集まりました。論議を通じて私たちは以下のことを共通の認識としました。

 砂防ダムは土砂災害から人命や私財、公共施設を守ることを理由に現在も全国の多くの渓流や谷筋でつくられ続けています。しかし、砂防ダムがあっても人命にかかわる事故や災害はなくなっていません。砂防ダムで災害を防ぐことはできません。

 その一方で、砂防ダムの多くが人目につかない山奥につくられていることもあってマイナス面が隠されてきました。

 土砂の正常な流れを止めてしまうため河床が低下し、河岸を崩壊させ山腹の崩壊までひき起こして泥土を流しています。さらに海と行き来する魚の通行を妨げ、産卵床を奪い、生態系を破壊してしまいます。

 海にも大きな影響を与えてきました。川から砂が流れてこなくなって河口の砂浜は痩せて浸食され、森の栄養分も流れてこないために磯焼けを起こし、逆に流れこんだ泥土は魚介類に大きな被害を与えています。

 他方で水源の森や山も多くの問題を抱えています。落葉広葉樹の森は伐採で笹原が広がり、針葉樹の森は手入れもされないまま放置され荒廃しています。さらに高山植物の盗掘が山の崩落を促進させています。こうした森と山の荒廃が砂防ダムをつくる理由の1つにされてきました。

 砂防ダムをこれ以上つくることは環境破壊をさらに深刻にするだけです。さらに今までつくられてきた砂防ダム群は川に親しむこともさまたげています。今後老朽化が進み崩壊の危険度も高まることから、まちづくりのうえでも社会的なマイナス遺産になることは明らかです。

 いままでダムをつくってきた行政・事業者は、こうした環境破壊の現実を直視して、今後すべての砂防ダムの事後評価を行い、スリット化などの改良を進めるとともに、古いダムは補修をするのではなく積極的に撤去していく方向に1日も早く転換することで、私たちとともに歩むことを期待します。

 私たちはこの集会で論議し学んだ経験を生かしてさらに多くの仲間たちに呼びかけて、失われた「ふるさとの森」「ふるさとの山」「ふるさとの川」「ふるさとの海」を取り戻し、少しでも再生して次の世代に引きついでいくために、行動することを宣言します。

 2002年10月13日

砂防ダムを考える全国集会in七飯・函館参加者一同