寺井 篤樹
『長野県大町市』。鹿島槍ヶ岳や爺ケ岳の後立山連峰を一望にする素晴らしい山岳に恵まれたまちである。山に降る水は鹿島谷・龍川谷・高瀬谷によって集められ、高瀬川となって大町市内を流れ下っていく。しかも大町市には、仁科三湖と呼ばれる青木
湖・中綱湖・木崎湖があり、後立山連峰を写す鏡といわれてきた。古くより「山紫水明」という言葉があるように、大町市もまさに「山紫水明」の地であった。
しかし、有効な落差を生み出す高い山と豊富な水は、水力発電の格好の条件である。この地の電源開発は大正末期に始まった。昭和8年には昭和電工大町工場がつくられ、電気の缶詰といわれるアルミニウムの精練を始める。国家総動員法のもと、戦争遂行のための電源開発が増強されていった。そして戦後も、経済の拡大を唯一の目標に掲げた社会では、川の水という公共の自然物さえもただ経済拡大の資源でしかなかった。大きすぎた発電用水利権の設定が、大町市の水環境を壊滅的な状況に追いやってきたのである。敗戦後半世紀。この状況は変わらない。
私たちは、限りある水資源のこの時代にふさわしい配分を求め続けてきた。しかし、国土交通省は、水利権や漁業権を持っていない一般市民には、川らしい川や、湖らしい湖の回復を求めて意見をいう資格さえないという。
私たちのテーマは『川や湖は誰のもの?』である。どうも、川に水がないからという訴訟は初めてらしい。私たちは、川に水がないから、その損害をお金に置き換えて求めようというのではない。川や湖に限らず、これらの自然物が国民共有の財産として認められ、環境権や自然享有権といった権利が当たり前に存在する、そういう社会に暮らしたいと考えている。そしてそのために、市民が声を上げる土とを始めたところである。市民の手の届かないところで『水利権』が跳梁駿底し、川や湖を独り占めしていないだろうか。あなたも足元をもう一度眺めてほしい。水利権は全国に共通しているのだから。
「川と湖の訴訟」原告団
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※本資料は、第3回渓流保護シンポジウムの資料集をOCRソフト(読んde!!ココ)で認識したものです。<BR>
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