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| チャンピオン・カーニバル・ワンナイト・スペシャル 全日本プロレス 川田利明(全日本)VS武藤敬司(新日本:BATT) セミファイナルが終ると、南側アリーナの観客が一斉に花道に集まった。全日本の大会で初めて設営された花道、今まさにここを通る男のために用意されたと言っても過言ではない。入場テーマが流れる前から武藤コールが巻き起こる。敵地、全日本武道館のリングに、ついに武藤敬司が上がる時がきた。テーマ曲が転調し武藤が姿を見せると、場内大歓声。とくに派手なアピールもなく、リングに歩を進める。 武藤敬司リングイン。当然、そこがオレのコーナーとばかりに赤コーナーに腰をおろす。この試合、武藤は青コーナーである。しかし、試合前、「川田は小結」と馬鹿にしていた武藤。横綱と小結との取り組みなら、横綱が東方と決まっている。さりげないが憎々しいアピールだ。 川田利明入場。武道館特有の床から天井に一直線に突き上げる鋭い歓声が迎える。武藤コールを凌ぐ大川田コール。ファンとは本当にありがたい存在である。この歓声が満身創痍の川田に力を与える。この歓声が壊れかけた右肘を繋ぎとめる。一直線にリングに向かう川田。コスチュームはガウンではなく、自らの写真入りTシャツだ。そうじゃないだろう。 青コーナーに回った武藤、赤コーナーでわずかに天を仰ぐ川田。闘魂三銃士VS四天王、ついに決戦の時、真の対抗戦のゴングが鳴った。低い姿勢で距離を置きながら手を伸ばす両者。指が触れた瞬間、武藤がこれを嫌う。二度三度、武藤は組まない。いや、組んでやらないのだ。この間合いを嫌った川田は屈伸運動。しかし、その表情には、いつものふてぶてしさはない。どこか不安げですらある。ようやく組み合った両者は、グランドの攻防で感触を確かめ合う。立ちあがりグランドにいくのは武藤のパターンである。川田が武藤のペースに引き込まれていることがわかる。 グランドで優位に立った武藤は、ここから執拗にヘッドロックをかける。川田の表情からは、技に対する苦痛よりも、この攻撃に対する嫌悪感のようなものが見て取れた。それを証明するかのように、まったくもって無理な体勢から強引にバックドロップを放つ。受身を取れず、左側頭部から顔面にかけて、したたかに打ちつけられた武藤。川田のラッシュが始まった。顔面を狙ったジャンピングニードロップ、顔面蹴り、かかと落し、とにかく蹴りまくる。武藤のお株を奪い花道を走ると顔面蹴り。武藤を追い詰める。サッカーボールキックで挑発。川田ペースだ。 しかし、一発の低空ドロップキックが流れを変えた。膝を打ちぬかれた川田が立ちあがろうとした瞬間、武藤のナイフが冷徹に光る。川田の痛めている右肘をえぐるようなドロップキック。さらに、ミサイルキック。右肘をおさえ苦悶の表情を浮かべながら、まるで木の葉のように舞う川田。対して武藤は、いつしか攻撃のポイントを再び膝に戻していた。このあたりの組みたては武藤ならではのものだ。ドラゴンスクリュー、低空ドロップキック、そして、足4の字固め。客席に投げキッス、声を上げて締め上げる。武藤敬司、もっともセクシーなシーンである。前歯のない口を開き必死の形相で耐える川田。もっとも色気を感じさせる場面だ。 なんとか4の字から逃れた川田。顔面蹴りで武藤の攻勢を止めると、勝負を賭けたストレッチプラムへ。今日の肘の状態では、ラリアット、パワーボムには頼れない。この技に総てを託し、武藤の身体をねじり切る。しかし、武藤はギブアップしない。川田が4の字を耐え切ったのだ。ならば、武藤もここでタップはできない。今度は川田が根負け。 足攻めの後は、右肘がターゲット。武藤の腕ひしぎ逆十字が川田を襲う。最近はこの技を使うことが少なくなったが、武藤の腕ひしぎは彼の冷酷さの象徴である。今度こそ川田危うし。しかし耐える。全日本のリングで、聖地武道館のリングで、ギブアップだけは絶対できない。再び腕ひしぎを狙う武藤に、川田が逆に腕ひしぎを返す。さらに痛む右腕でラリアットを連発。あとはパワーボムさえ打てれば。しかし、打てない。ならば、顔面に膝を。渾身の力でジャンプした川田がマットに着地する瞬間、武藤が消えた。マットに膝を打ちつけた川田を武藤のドラゴンスクリューが襲う。 膝をおさえコーナーで転がりまわる川田。そこに闇を切り裂くシャイニングウイザードが閃いた。武藤敬司の新必殺技、鋭角的な膝蹴りが川田の顔面を捉える。瞬間、意識を失ったかのように崩れ落ちた川田。武藤が覆い被さる。川田、本能でカウント2で返す。しかし、足元は覚束ない。そこに非情のシャイニングウィザード2連発。ついにスリーカウントが入った。 24分20秒、シャイニングウィザードから片エビ固めで武藤敬司の勝ち。横綱と小結の対決は横綱に軍配が上がった。決して多くはない技の組み合わせで観客を沸かせる。武藤敬司の真骨頂ともいえる試合だった。しかし、川田はただの小結ではなかった。今の川田は元大関の小結である。番付が下がってもプライドまでは下がらない。プライドがある限り、何度でも立ちあがる。立ちあがるたびに倒される。それでもなお立ちあがる。素晴らしい試合だった。久々にプロレス観戦で声を嗄らした。 (01/4/14 日本武道館) |