四コマ・ストーリー『コンピュータは奇妙な同居人』

NO.022「料理の手引き」

「料理の仕方を手取り足取り教えます」というソフトを見つけた。

 なになに、「できれば、キッチンにディスプレイを置いて、画面を見ながら実際に料理するのが最適です」か。

 そこまでやる必要もないかと思ったけど、まあ面白そうだから実際にやってみよう。

 キッチンの前のちょうどいい場所にディスプレイを設置する。ちょうどうまい位置に設置出来て、料理しながらいつでも見られるようになった。

 ソフトを起動すると、まず画面に最初の指示が出てきた。なになに、「画面に実際に料理している映像が映し出されますので、画面と同じに作業してください」か。

 え〜と、まず揃えた材料を出す。豚バラ200グラム、キャベツ、ピーマン、長ネギと。画面の指示に従って材料を並べる。画面の中でも、料理人が同じように材料を出してきて前に並べている。

 次に下ごしらえ。豚バラは五センチくらいに、キャベツとピーマンは乱切りと。また画面を見て、指示されたとおりに切っていく。画面の中の料理人も同じ指示に従い、同じように材料を切っていく。

 そこで、ふと気付いた。このソフトの映像、時間まで完璧に実際の作業と合わせてあるんだ。僕が材料を切るタイミングとぴったり一致して、画面の料理人も同じ作業をしている。なるほど、実際にこれを見て料理する人が、画面の動きをそのまま真似ればいいようになってるんだな。

 フライパンを油を入れて火にかける。材料を入れて炒めて。

 画面の中とぴったり同じタイミングなんだから、画面に合わせればいいよな。

 豆板醤、鶏がらスープの素、塩胡椒を入れて混ぜる。

 画面とぴったりのタイミングで出来上がり、皿に移す。

 さっそく味見。

 う……、失敗したか。こりゃ食べられないぞ!

 「辛いっ!」思わず悲鳴を上げたとき、画面の料理人も同時に悲鳴を上げた。

 そして料理人が初めてこっちを向いて、その顔が見えた。

 僕の顔だった。