「21世紀の地球人のモラルを考える」提言
(財)モラロジー研究所・読売新聞社主催
「二十一世紀を環境の世紀に」
古屋善啓(鎌倉市)

 私は、市役所で環境保全を職務として担当しているため、小中学校に招かれ、授業の中で自然やリサイクルなどの環境についての話をすることがたびたびあります。また、学校の近くの川で子ども達とともに、体験学習として水質や水生生物の調査を行うこともあります。このような時、彼らからたくさんの質問がでて、今の多くの子ども達が環境問題について関心を持っていることがわかります。
 ただし、よくよく話を交わしていると、彼らの情報源はテレビや図鑑などであり、身近な環境における実体験に基づく主観的な情報が貧弱なことに気がつきます。
 一方、地球環境問題が社会的な問題として論議されてから久しい日々が過ぎましたが、どうも、この問題に対して、子ども達ばかりでなく、大人も客観的に捉える傾向が強すぎるのではないかと思います。
 今、人類の存亡の危機とまで言われている地球環境問題の解決に向けて、現代人は表面上の言葉だけが先行し、なかなか実質的並びに実効的な行動に移行できていないのが現状ではないでしょうか。知識として環境問題を理解できたということだけで満足している人、そんなことやっても無駄だと決め付けている人、誰かがやるさと他人任せの人などが多いのではないでしょうか。このような考え方ではこの問題に対する解決の道は開けません。
 自らが考え、自らが率先して行動していくという心構えが必要であり、さらに主体的に行動できる人の輪を大きく広げていくことも要求されます。
 これまでの経済の成長並びに利便性の追求という世の中の趨勢の中での常識が通用しない時代に移り変わろうとしている今、モラルについても捉え方が変わることが要求されます。今までのモラルは主に身の回りの事象を対象としていましたが、これからは将来世代の人々のことをも視野に入れた配慮がモラルに加えられなければなりません。そして、これを定着させていかなければなりません。どの生物も先祖から子孫へと生命というバトンを伝承し続けてきました。人類を含め生物にとって、最も基本的な役割のひとつは、自己の生命を子孫につないでいくことであると思います。
 将来世代の人々の生命や生活を守るために良好な環境を保持していくことは、まさに私たち現代人つまり21世紀の地球人の役割ではないでしょうか。
 このためには、モラルの変革を始めとした個々人の意識の変革が必要とされます。続いて環境配慮型のライフスタイルを実践する方向に進むことが望まれます。
 モラルを変革するには、大きなパワーと時間を必要とします。多くの人々の共感を得られなければ、モラルとして定着しません。
 私は、学校、地域そして家庭などさまざまな場を活用した環境学習の充実が必要であると思います。特に体験を通した活動は、人々の心に刻まれることから、今後の展開の方向のひとつとして体験的な学習は重要視されるべきでしょう。
 このような中、学校教育における総合的な学習は注目されるところであり、まずは身近な地元の環境を学ぶことから始まり、幅広い地球環境の保全へと興味を広げ、さらに自ら率先して環境保全行動をとるという展開が期待されます。
 各地域には、地元で多様な活動をされている方が多くいらっしゃり、その地元特有の個性を活かした活動が、今後の教育の流れになると思います。もちろん、行政の職員を始め民間の多くの方も各専門分野を中心に協力体制を取ることが望まれます。
 私が学校などで話をしていると、環境問題への取り組みに対して「行政が取り組むべきだ」「企業の努力が足りない」「大人がもっとしっかりしてほしい」というような意見が多くでます。私たちは早急に客観的な立場から脱却し、環境を守る主役はまさに私たちであることを自覚すべきです。最近、授業の中で、「将来世代への思いやりを持とう」という言葉をまとめとして使うようにしています。是非とも、私たちのためにも将来世代の人々のためにも「良好な地球環境を守るため自らが行動すること」を21世紀の地球人としてのモラルに定着させたいものです。

2001.5.16掲載